2024年にオメガから発表されたセーリング向け“アナデジ”ウォッチ「シーマスター レガッタ」。ヨットでの航海時に役立つ機能が多数搭載されたこの腕時計を、『ウォッチタイム』アメリカ版に携わる時計ライター・編集者のマーティン・グリーンが実際に触って試した。この腕時計に備わる機能に興味を持たれた方は是非読んでほしい。

アナデジの伝統と最新機能を備える多機能モデル
オメガは、スペイン・バルセロナで2024年に開催されたアメリカズカップ準決勝の開幕に合わせて、「シーマスター レガッタ」を発表した。この時計は予想外の登場であった。実は、オメガはアナログとデジタルを融合させた“アナデジ”ウォッチの長い伝統を持つ。今回のレガッタモデルは、シーマスターコレクションではなく、「スピードマスター プロフェッショナル X-33」に近いデザインコードを採用している。
新作「シーマスター・レガッタ」は、実際に装着してこそ真価を体感できる時計である。まず目を引くのは直径46.75mmという大型サイズであるが、実際の装着感は驚くほどバランスが取れている。
筆者の17.8cmの手首でも、42mmの「シーマスター プロフェッショナル ダイバー 300M」と比べてわずかに大きく見える程度だ。オメガはこの大きなケースサイズをうまく活かし、情報量の多い表示を整理されたレイアウトで配置している。
ベゼルとケースはシーマスターらしい意匠を保ちつつ、グレード5チタン製とすることで重量は適切に抑えられている。
レース向けに特化した機能と構造

クォーツ(Cal.5701)。Tiケース(直径46.75mm、厚さ15.6mm)。50m防水。114万4000円(税込み)。
本機はあくまで“計器”として設計されており、4つのラバーボタンとひとつのリュウズ、そしてダイアル上の多様な表示が最初はやや複雑に見えるかもしれない。しかし操作性は直感的であり、すぐに各機能を自在に使いこなせるようになる。
機能には、北半球・南半球を問わず月齢を正確に示すムーンフェイズ表示、クロノグラフ、航海ログブック、温度計、加速度計、3つのアラーム、そしてレガッタ用のレースカウントダウンが含まれる。
多くの機能には音声通知も備わっており、航行中も情報を的確に得ることができる。ケースは音響共鳴空洞を設ける設計となっており、通知音の音量を増幅する効果を持つ。
セーリングのための仕様と仕上げ
ストラップはラバー製で、オメガらしいのクイックチェンジシステムを採用。チタン製ブレスレットは用意されていないものの、複数のカラーのラバーストラップと素早く交換が可能だ。
ストラップの装着感は高級感があり、ケースとの接続部もオメガらしく精緻に仕上げられている。防水性能は50mで、ダイバーズモデルと比べれば控えめだが、本機はダイビングではなくセーリング用に設計されている。ヨット転覆時の遊泳には十分であり、これ以上の防水性は用途を逸脱するものとなる。
「シーマスター・レガッタ」にはスーパールミノバと優れたバックライト機能も搭載されている。バックライトを起動すると、針が瞬時に脇へ移動し、デジタル表示が容易に読み取れるようになる。
バッテリー寿命は約36カ月と、豊富な機能を考慮すればかなりの長寿命といえる。この点も本機がシーマスターコレクションにおける遊び心ある技術志向モデルとして特異な存在である理由のひとつである。
高い技術性と明確な目的性を備えたモデルであり、ダイバー300Mのような汎用モデルとは一線を画す。その独自性ゆえ、レガッタ参加者に限らず、幅広いコレクター層にも訴求する可能性が高い。
このモデルは、2024年に開催された第37回アメリカズカップに向けて製作されたものであり、オメガは公式タイムキーパーとして大会に関与するとともに、ニュージーランドチームのスポンサーも務めている。
ムーブメントはゼロから新設計されたものであり、将来的には他のモデルにも展開されることが予想される。その際には、チタン製ブレスレットの登場も考えられるだろう。オメガ「シーマスター レガッタ」の価格は114万4000円(税込み)で、限定生産ではない。
