Grand Seikoの独立ブランド化 / グランドセイコー 新世界戦略発動

2017.08.09

高級時計vs.高級車 GS新デザイン論

「子供の頃、年嵩の叔父がグランドセイコーを自慢げに見せてくれたのを覚えている。
今思うと、倹約家で働き者だっただけに、自らを労う褒美として、実用性も兼ね備えるグランドセイコーを手に入れたのだろう。
その日以来、商工会の集まりのような晴れの日はもちろん、たいてい毎日、叔父の腕にグランドセイコーがはめられていた」。
自動車ジャーナリストの川端由美氏は、記憶の中のグランドセイコーをこう回想する。そのグランドセイコーが今、世界に打って出ようとしている。
その本質を、川端氏がデザインの観点から、時計ジャーナリストとは違う視点で切り込む。

ブラックセラミックス コレクション SBGC219
ケースとブレスレットにセラミックスとブライトチタンのハイブリッド構造が与えられたグランドセイコー初のモデル。文字盤にはブランドカラーの「グランドセイコーブルー」を採用する。自動巻きスプリングドライブクロノグラフGMT(Cal.9R96)。50石。パワーリザーブ約72時間。Ti×セラミックス(直径46.4mm)。10気圧防水。世界限定500本。165万円。

 知る人ぞ知るではなく、日本人なら誰もが知る。それがグランドセイコーだ。「最高の普通」「実用腕時計の最高峰」をコンセプトに掲げ、1960年から長らく、セイコーの最上級ブランドに君臨してきた。グランドセイコーがグローバルに打って出るにあたり、1881年から続く服部時計店の歴史、そして1960年から続くグランドセイコーの歴史に加え、2017年から新たなグランドセイコーの歴史を刻み始めた。時計業界に走った衝撃の大きさは、門外漢の私にも容易に想像ができる。しかし、ブランドを俯瞰して見たときに、この変化は好ましく思えた。

 実際、これまで築いてきたグランドセイコーの国内での地位に比べて、海外ではセイコーというブランドが持つ質実剛健さや実用性の高さばかりが注目されており、日本の精密技術の粋を集約した、世界に誇れる〝グランドセイコー〟の価値がいまひとつ伝わっていなかったからだ。グランドセイコーが独立するにあたって、デザインにもさらなる進化が与えられた。その真意を、グランドセイコーのデザインを担当する久保進一郎氏に訊いた。