永遠に語り継がれるタイムピース #13 リシャール・ミル「オートマティック ラファエル・ナダル」

独創の設計理念によって時計界に革新をもたらし続けるリシャール・ミル。中でも象徴的なのが、自動巻きムーブメントの歴史に新たなページを書き加える革新的システム、バタフライローターを搭載し、リシャール・ミルのファミリー、ラファエル・ナダルの名を冠した新たなるシグネチャーモデルである。

リシャール・ミル「オートマティック ラファエル・ナダル」

ラファエル・ナダルの「RM 27-04 トゥールビヨン ラファエル・ナダル」にインスパイアされたカットアウトが施され、造形美が際立つRM 35-03。マイクロブラスト仕上げのグレード5 チタン製インナーベゼルには3・6・9・12 のアラビア数字のインデックスが刻まれ、時刻の読み取りも容易。スケルトン針の先端には蓄光塗料が施され夜間の視認性も十分だ。
並木浩一(時計ジャーナリスト):文
Text by Koichi namiki
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]


王者の名を冠したタイムピースの集大成着用者との一体化を叶えた機械式時計の理想形

 2001年にデビューしたリシャール・ミルにとって、最初のファミリーはF1ドライバーのフェリペ・マッサだった。やがて08年、ふたり目のファミリーに選ばれたのがスペイン出身のテニスプレーヤー、ラファエル・ナダルである。契約の際、ナダル選手は「試合で時計は着けない」と宣言したが、リシャール・ミルは「私と組むなら試合で時計をするのが絶対条件だ」と説得し、新作の開発をスタートさせたという。

 こうして09年に完成したのが「RM 027 トゥールビヨン ラファエル・ナダル」。翌年、ナダル選手はこのモデルを装着して全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンを制覇し、新たな伝説が生まれたのである。

リシャール・ミル「オートマティック ラファエル・ナダル」

2時位置にあるファンクションセレクターのボタン操作により、巻き上げ、ニュートラル、時刻合わせという3つのモードを切り替えられる。

 この快挙から10年以上が経った23年、リシャール・ミルはナダル選手が試合で着用するトゥールビヨンウォッチにインスパイアされた「ベイビー・ナダル」コレクションに新たなモデルを加えた。それが「RM35-03オートマティック ラファエル・ナダル」である。

 このモデルには、バタフライローターと命名された特許取得済みの革新的なメカニズムが搭載されている。ベースとなった「RM35-02オートマティック ラファエル・ナダル」搭載のキャリバーRMAL1にはリシャール・ミルが自社開発した可変慣性モーメントローターが搭載されていた。ただ、このシステムでは、ローターの慣性を変更するために、リシャール・ミルのライセンスを持つ専門の時計職人が行う必要があった。

 しかし、RM35-03に搭載されているキャリバーRMAL2に採用されたバタフライローターは、ユーザー自身がボタン操作を行うだけでローターの慣性を変更でき、ライフスタイルや活動レベルに応じて主ゼンマイの巻き上げ状況をコントロールできるのである。

リシャール・ミル「オートマティック ラファエル・ナダル」

ケースは最大45ミクロンのカーボンファイバーに樹脂を染み込ませ、繊維方向を45°ずらして重ね、高温・高圧で固めた素材を精密に切削することで製作。

 このバタフライローターは、ヘヴィ・メタル製のウエイトセグメントが取り付けられた、ふたつのグレード5チタン製アームで構成されている。通常モードでは、このウエイトセグメントが隣接して重心が外側に移動。これによって香箱の主ゼンマイが効率よく巻き上げられる。しかし7時位置にあるプッシュボタンを押すことでスポーツモードに移行し、ウエイトセグメントが蝶の羽根のように展開して重心が中央に移動。ローターの回転が抑制され、過度の巻き上げを防ぐのである。ユーザーは6時位置のオン/オフ表示インジケーターでローターの作動状態を確認できる。リシャール・ミルでは、この画期的なシステムの開発に、実に3年もの月日を要したという。

 また、ケースの2時位置には、これもリシャール・ミルならではのファンクションセレクターのボタンがあり、これを押すことで、巻き上げ(W)、ニュートラル(N)、時刻合わせ(H)の機能を切り替えられるようになっている。

リシャール・ミル「オートマティック ラファエル・ナダル」

7時位置のボタンを押してスポーツモードにすると巻き上げローターが開いて巻き上げを抑制。スケルトン加工のムーブメントはケース両面からサファイアクリスタルを通して観察可能だ。

 この革新的な自動巻きムーブメントを守るのはリシャール・ミル独自のカーボンTPT による軽量にして強固なケース。最大45ミクロンの厚さを持つカーボンファイバーに樹脂を含浸させ、各層の繊維方向を45度ずつずらして重ね、6気圧の圧力をかけて120℃の高温で熱処理した素材を、同社のケース工場においてコンピュータ制御のCNC工作機械によって切削加工されて生み出される。この特殊な製造工程により、ベゼル表面には多層構造のカーボンファイバーを切削したことで、木目を思わせる独特の模様が現れ、ひとつひとつの時計に豊かな個性を与えるのである。

 リシャール・ミル第1作となった「RM 001 トゥールビヨン」から継承されるアイコニックなトノー型ケース、それを形成する先進素材に革新的な機構。RM35-03でも確認できるように、これらを融合した高度なクリエイションこそが、リシャール・ミルを象徴するスタイルであり、それは常に進化を続けながら、必ずや未来のユーザーと愛好家にサプライズを与えるのである。

リシャール・ミル「オートマティック ラファエル・ナダル」

リシャール・ミル「オートマティック ラファエル・ナダル」
新開発のバタフライローターを装備するCal.RMAL2を搭載。ムーブメントはグレード5チタン製の地板とブリッジによって優れた剛性を保有し、二重香箱システムで長期にわたり安定したトルクを供給。自動巻き(Cal.RMAL2)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。カーボンTPT®ケース(縦49.95 ×横43.15mm、厚さ13.15mm)。50m防水。22万スイスフラン。



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https://www.richardmille.com/ja/collections/rm-35-03-automatic-rafael-nadal



リシャールミルジャパン Tel.03-5511-1555


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