永遠に語り継がれるタイムピース #18 ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」

謎めいた数字は“創業222年目”を意味する。その1977年発表の伝説的なモデルを、現代風に解釈して復刻した。「ジャンボ」を愛称としたファーストモデルと同じケース径、トノー型ケースに一体化したブレスレット、溝付きベゼル。「ヒストリーク・222」にはヴァシュロン・コンスタンタンの“スポーティーシック”の原点が見事に表現されている。

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」

オリジナルと同様のゴールドトーンのダイアルに、直線的なポリッシュ仕上げのバーインデックスとバトン型針を配し、"AUTOMATIC" の文字はヴィンテージのフォントによるもの。針、インデックス上のスーパールミノバコーティングは1977年製の「222」に使用されたトリチウムの色に合わせ、昼はオフホワイト、夜はライムグリーンに光る仕様。
奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
並木浩一(時計ジャーナリスト):文
Edited by Koichi Namiki
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]


メゾンを代表するコレクションの礎現代に甦った真正の“スポーティーシック”

 ヴァシュロン・コンスタンタンの「ヒストリーク」コレクションは、同社の名品を現代的な解釈で甦らせた魅力的なラインナップを誇る。「ヒストリーク・アメリカン 1921」「ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955」はそれぞれ主要な輸出先や形状の特徴に発表年を重ねた、物語性のあるモデル名。「ヒストリーク・222」はその第3作に当たる。

 最初のモデルの登場から45年後の2022年に、現在の222がリスタートした。「2」を3つ含む再登場年が理由ではなく、このモデルを発表した1977年がメゾンの創業222周年だったからだ。記念すべき年に発表された記念モデルが、人気を博し、「ヒストリーク」コレクションとして現代的に再解釈され、再び世に発表されたのである。永続性をメゾンが再確認したに等しいモデルは、熱狂的な歓迎を受けて現在に至る。今年270周年を記念して発表されたステンレススティール製のタイムピースも、さらに人気に拍車をかけるだろう。

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」

ケースバックから覗く新世代の自社製ムーブメントCal.2455/2には、手作業による極めて念入りな仕上げが施されている。ベゼルと同じ切り込みのモチーフを刻んだゴールド製ローター上の「222」ロゴは、オリジナルモデルではソリッドバックに刻印されていたものと同じ書体。

 オリジナルの222はヴァシュロン・コンスタンタン流のスポーティーシックを象徴するものだった。ベースがフラットなモノブロック構造のトノー型ケースに切り込み入りのベゼルを載せ、一体型ブレスレットを組み合わせたデザイン。3.05mmの超薄型ムーブメントをケースの表側から組み込み、ねじ込み式のベゼルによって120mの防水性を備えた、非常に薄い7mm台のケース。高級スポーツウォッチが相次いで登場した1970年代の、掉尾を飾るものだった。

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」

ケース5時位置のブランドを象徴するマルタ十字、切り込みの入ったベゼルは、オリジナルを踏襲したデザイン。

 永い間公表されず、さまざまな憶測もあったデザイナーの名は2007年以降、ヴァシュロン・コンスタンタンが公式にヨルグ・イゼックであると認めている。現代の時計デザインにおける巨星イゼックは、スイスの高級時計界を代表する数多くのメゾンのデザインを手掛けている。自らの名を冠したブランド(現ハイゼック)で活躍したことでも知られる。

 その早熟の天才の傑出作が、222だ。デザインの魅力は今なお、色も香りもまったく褪せず、むしろ人気を博した「オーヴァーシーズ」の先駆を感じさせるもの。その〝完成された無謬のアーカイブ〞を、もう一度磨き上げてみせたのがヒストリーク・222である。

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」

一体型のケースとブレスレット。装着感を高めたブレスレットのデザインは、連結ピンを隠して外観もよりスマートに。

 オリジナルコレクションから、直径37㎜でイエローゴールド製の「222 〝ジャンボ〞」を選び、約半世紀分のアップデートを施した。1万9800振動/時だったムーブメントは、2万8800振動/時、約40時間のパワーリザーブを誇る自社製のキャリバー2455/2に換装された。かつては特徴的なタイポグラフィで「222」のロゴを刻んだソリッドバックは、オープンケースバックに変更。オリジナルの「222」ロゴはこのモデルのために開発されたローター上に刻印され、ベゼルと同じ切り込みのモチーフも施されている。サファイアクリスタル越しに覗くムーブメントには手作業で面取りした輪列のパーツ、コート・ド・ジュネーブで装飾したブリッジ、ペルラージュ模様を施した地板が確認でき、オートオルロジュリーらしいディテールへの追求と、プライドが伝わってくる。

 ダイアルに記された〝AUTOMATIC〞の文字は、ヴィンテージのフォントによる刻印。日付表示の窓は縦横をわずかに小さくした一方、視認性を高めるためにダイアルの外縁から大幅にオフセットさせた。針とポリッシュ仕上げのインデックスに施したスーパールミノバ(昼はオフホワイト、夜はライムグリーン)も、視認性改善に寄与している。

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」

ドイツの鬼才ヨルグ・イゼックがデザインした、1977年発表のオリジナル「222」。ねじ込み式ベゼルによって120mの防水性を備えながらも、ケースの厚さを7mmに抑えるなど、洗練のルックスと実用性を兼ね備えていた。

 外装ではリュウズとブレスレットをバーティカルサテンブラッシュ、ベゼルはサーキュラーサテンで仕上げ、ブレスレットはこれまで見えていたリンクの連結ピンを隠し、腕への装着感も向上させた。以前は2枚ブレードだったディプロワイヤントクラスプは、3枚ブレードのバタフライクラスプ装着に変更されている。

 意匠は不朽不滅の古典、性能と美意識は最新で最善。ヒストリーク・222は、この先何度でも生き返る、永遠の生命の資格を得ているのである。

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・222」
1977年発表の「222」で最大サイズの通称 “ジャンボ” を、同じケース径で復刻。トノー型ケースに一体化したブレスレット、溝付きベゼル等の意匠を踏襲しつつ、性能と仕様はアップデートされた。ジュネーブ・シール認定。今年、SSバージョンも登場。自動巻き(Cal.2455/2)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KYGケース(直径37mm、厚さ7.95mm)。50m防水。1135万2000円(税込み)。



▼詳細情報はこちらから▼
https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/collections/historiques/4200h-222j-b935.html



Contact info:ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755


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