多機能かつ個性的な腕時計が並ぶ! 2025年傑作クォーツモデルを紹介

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2025.12.07

2025年に発表されたクォーツ式腕時計の中で、特に優れた多機能かつハイスペックな5モデルをピックアップして紹介する。近年のクォーツ式腕時計は、各機能がプログラムによって実現された多機能モデルや、トルクを高めたり素材に工夫を凝らしたりすることで機械式腕時計のようなディテールを与えたハイエンドモデルなどがラインナップされ、百花繚乱だ。ピックアップした各モデルは、機能や性能、デザインが個性的で、魅力にあふれており、これらに注目しつつ解説してゆこう。

佐藤しんいち:文
Text by Shin-ichi Sato
[2025年12月7日公開記事]


多機能化しやすいクォーツ式腕時計のメリットを発揮した傑作5モデルを紹介

 クォーツ式腕時計は、機械式腕時計ほど取り扱いに神経質になる必要がない。また、各機能をプログラムによって実現することで多機能化しやすく、操作性を高めやすい点がメリットだ。そこで今回の企画では、2025年に発表されたクォーツ式腕時計のうち、特に優れた多機能かつハイスペックな新作モデルを紹介する。モデル選定にこのような制限を設けても、今回取り上げる腕時計はそれぞれ個性的で、各コレクション、各ブランドのキャラクターを色濃く反映している。それぞれのキャラクターに触れながら紹介してゆこう。

シチズン カンパノラ「星響(ほしのひびき)」Ref.AH4084-51E

カンパノラ星響

シチズン カンパノラ「星響(ほしのひびき)」Ref.AH4084-51E
クォーツ(Cal.6772)。SS+デュラテクトDLCケース(直径43mm、厚さ16.5mm)。日常生活用防水。250本限定。50万6000円(税込み)。(問)シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807。

 魅力的なクォーツ式腕時計を多くラインナップするのが、シチズンのカンパノラだ。カンパノラには、精密な星座盤を備えた「コスモサイン」のほかに、立体的な文字盤をデザインコードとしつつ、クォーツで実現した複雑機構を搭載するモデルや、ムーンフェイズモデル、ラ・ジュー・ペレ社の自動巻きムーブメントを搭載したモデルがラインナップされている。

 そんなカンパノラは、本年にブランド誕生25周年を迎え、その記念の一環として限定シリーズの「星響(ほしのひびき)」をリリースした。その中で注目は、「グランドコンプリケーション」のRef.AH4084-51Eだ。本作の特徴はミニッツリピーター、ムーンフェイズ、永久カレンダー、クロノグラフ、24時間表示のそれぞれをクォーツ式ムーブメントによって実現している点だ。

 本作の文字盤は、6時位置に閏年表示と月表示、9時位置に日と曜日表示によって永久カレンダーを構成しており、3時位置には24時間表示と秒表示が配される。クロノグラフ作動時には、月針と閏年針が積算計の役割を果たしつつ、センターのクロノグラフ秒針で秒を計測する。また、ふたつの音程の電子音の組み合わせによってミニッツリピーターを実現した。その充実度は、“グランドコンプリケーション”の名に恥じないものである。

 記念モデルとなる星響の特徴は、ブランド初の試みとしてケースとブレスレットの両方に表面硬化処理であるデュラテクトDLCを施し、オールブラックの外観が与えられている点である。そして、そこにゴールドカラーのアクセントが加えられたことで、漆黒の宇宙と輝く星々が表現されている。カンパノラの各モデルは、立体的で奥行きのある文字盤構成が魅力で、本作は、ゴールドカラーのアクセントによって、この立体感が際立っている。

オシアナス「マンタ S7000シリーズ」Ref.OCW-S7000CN-1AJF

カシオ オシアナス

オシアナス「マンタ S7000シリーズ」Ref.OCW-S7000CN-1AJF
光発電クォーツ。フル充電時約19カ月稼働(パワーセーブ時)。Tiケース(直径42.8mm、厚さ9.8mm)。10気圧防水。世界限定1600本。30万8000円(税込み)。(問)カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925

 続いて、ブラックによって精悍に仕立てられたカシオ オシアナス「マンタ S7000シリーズ」Ref.OCW-S7000CN-1AJFを取り上げる。オシアナスは、カシオのラインナップの中で上質な仕上げと薄く美しいフォルムを追求したラインであり、その中でマンタはフラッグシップに位置付けられている。フラッグシップにふさわしく機能も充実しており、ビジネス用途からカジュアルまで、さまざまな場面でユーザーをサポートしてくれる。

 ブラックの本作のコンセプトは、静かで穏やかな夜を意味する「CALM NIGHT」である。月明かりが差し込む静かな夜の海や、光と影が織りなす幽玄の世界観を具現化するため、チタン外装をオールブラックに仕立て、サファイアガラスベゼルには江戸切子の伝統技法を取り入れた点がトピックスだ。ベゼルを監修したのは、伝統工芸士であり、堀口切子の三代「秀石」である堀口徹。月の光とそれを映す海の煌めきを、伝統的な切子文様「千筋(せんすじ)」で表現している点が見どころである。このカッティングはベゼルの裏側から施されており、また、シルバー蒸着後に上からブラック、下からシルバーのグラデーション蒸着を施すことで、グラデーションを実現。透明感のあるサファイアガラスを通して描線を柔らかつ繊細に描き出している。

 文字盤のベースにも注目だ。端正なインダイアルとは対照的な、梨地調の質感を持つテクスチャー文字盤は、満月の繊細かつ優美な表情を表現したものである。カシオの誇る金型加工技術によって目付を施した金型を使用することで、微細でありながら立体的な表情を持つ仕上がりを実現している。

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セイコー アストロン「Nexter GPSソーラー デュアルタイム・クロノグラフ」Ref.SBXC175

セイコー アストロン ネクスター

セイコー アストロン「Nexter GPSソーラー デュアルタイム・クロノグラフ」Ref.SBXC175
GPSソーラー(Cal.5X83)。フル充電時約2年稼働(パワーセーブ時)。Tiケース(直径44.1mm、厚さ14.4mm)。10気圧防水。35万2000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012

 セイコーのクォーツ式ハイスペックモデルの代表格は、「アストロン Nexter」だ。その中でも最新世代のCal.5X83を搭載するのがRef.SBXC175である。Nexterは、「これからの未来を見据え、次世代リーダー達の活躍を後押しする」ことがコンセプトとなっている。ケースサイドからブレスレットにつながるラインがアイコンであり、エッジを効かせたモダンなスタイリングに、シックさとスポーティーさをバランスさせた文字盤デザインが特徴も目を引く。

 ブレスレットは、ダイヤシールドを施したチタン製であり、軽量で着用感が良好で、アクティブな次世代リーダーをしっかりとサポートする完成度を持つ。機能面では、ソーラー発電、GPS電波受信による自動時刻調整、タイムゾーンの切り替え、クロノグラフなど、高性能クォーツウォッチに期待される機能を網羅しており、不足はない。

 Cal.5X83の特徴は、20分の1秒を測り取るクロノグラフ機能だ。12時位置に20分の1秒のスケール、センターにクロノグラフ秒針、6時位置に通常時は第2時間帯表示であるサブダイアルが積算計として機能する。1秒以下を詳細に計測可能なクロノグラフは、セイコーの伝統のひとつであり、利便性に加えて満足度が高い。

タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ × セナ 43mm」Ref.CAZ101AX.BA0637

タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ × セナ

タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ × セナ 43mm」Ref.CAZ101AX.BA0637
クォーツ。SSケース(直径43mm)。200m防水。39万500円(税込み)。(問)LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7030

 ここまで、クロノグラフ機能を搭載したモデルを紹介してきた。次は、クロノグラフ機能が活躍するモータースポーツをテーマにしたモデルを紹介しよう。紹介するのは、「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ × セナ 43mm」だ。

 タグ・ホイヤーは、1970年代からモータースポーツ分野における正確なラップタイム計測とデータ分析に取り組み、現在ではフォーミュラ1®の公式タイムキーパーを務めるなど、モータースポーツ分野に大きな貢献を果たしてきたブランドだ。その歴史を反映し、モータースポーツ向けの魅力的なクロノグラフを多く擁している点も特徴である。

 そして、紹介する本作の“セナ”の名は、日本では“音速の貴公子”とも呼ばれて愛された、F1ドライバーのアイルトン・セナに敬意を表したものだ。タグ・ホイヤーは、アイルトン・セナと1993年よりアンバサダー契約を結んでいた歴史を持ち、彼がタグ・ホイヤーのタイムピースを着用している写真が残されている。

 本作の1時位置には“セナ”の名が記され、6時位置の12時間積算計には、ブラジル国旗をイメージしたセナのヘルメットのカラーリングが取り入れられている。ステンレススティール製の直径43mmケースは、サテン仕上げとポリッシュ仕上げを組み合わせた、エレガントさとスポーティーさを兼ね備えた仕立てだ。本作にはブレスレットが組み合わされており、そのリンクのデザインは、アイルトン・セナが愛用したモデルに装着されていたS字型である。

 タグ・ホイヤーからは、本作のような“セナ モデル”が定期的にリリースされ、いずれも人気を集めている。アイルトン・セナというドライバーが今なお多くの人に愛されていることを示すものであろう。

ブライトリング「エンデュランス プロ IRONMAN® 70.3® ワールドチャンピオンシップ 2025 エディション」Ref.X823101K1C1S1

ブライトリング エンデュランス プロ

ブライトリング「エンデュランス プロ IRONMAN® 70.3® ワールドチャンピオンシップ 2025 エディション」Ref.X823101K1C1S1
クォーツ(Cal.82)。Breitlight®ケース(直径44mm、厚さ12.5mm)。100m防水。世界限定300本。57万2000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707

 最後に紹介するのは、限界に挑戦する人々に向けた、スポーティーかつタフな、ブライトリング「エンデュランス プロ IRONMAN® 70.3® ワールドチャンピオンシップ 2025 エディション」である。エンデュランスとは持久力や耐久力を意味し、耐久レースを指すことも多い。そして、本作がチャレンジする耐久レースとは、長距離走(ラン)、水泳(スイム)、自転車(バイク)で構成されるトライアスロンだ。

 モデル名のIRONMAN® 70.3® ワールドチャンピオンシップとは、通常の半分の距離(70.3マイル)で行われるトライアスロンレースであり、プロ、アマチュア問わずに挑戦する人気イベントだ。半分と言っても、水泳1.9km、自転車90km、長距離走21.1kmと非常に過酷であり、極限への挑戦をサポートしてくれるウォッチは必須だ。

 本作は、2時位置に12時間積算計、6時位置にスモールセコンド、10時位置に30分積算計を備えるクォーツ式のクロノグラフモデルである。このムーブメントは、スーパークォーツ・ムーブメントに位置付けられており、温度補正機能が備わっている。これは、トライアスロンの長距離走、自転車走時には炎天下にさらされ、水泳では水によって温度が低下するなど、温度変化の激しい環境でも精度を維持することが目的であろう。

 過酷なレース中でも快適に着用を続けるためには、腕時計は軽量でなくてはならない。そこで本作のケースには、ポリマーとファイバーを組み合わせた、ブライトリング独自のBreitlight®製である。その重量は、チタンの約1/3、ステンレススティールの約1/6と非常に軽量だ。また、熱安定性に優れ、耐傷性が高く、非磁性であることも特長である。

 ブラックのケースとコントラストをなすのが、文字盤およびラバーストラップを彩るターコイズブルーのカラーである。6時位置には、スペインのアンダルシアで行われるIRONMAN® 70.3® ワールドチャンピオンシップ 2025のロゴが配される。そのデザインは、アンダルシア文化を象徴する、アーチ状の扉と装飾タイルが象られている点に注目だ。


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