2025年新作のクロノグラフウォッチより、5本の傑作を紹介する。今年も、各社の技術や時計製造の歴史を象徴する新作が続々と登場した。スプリットセコンドやフライバックなどの付加機構、職人の手仕上げなど、見どころの多い傑作たちを紹介する。

Text by Tsubasa Nojima
[2025年12月14日公開記事]
複雑機構の代名詞、クロノグラフ傑作選!
経過時間を測定するための機能であるクロノグラフ。サーキットでのタイム計測や生産管理、心拍の確認から、日常ではジョギングや料理など、幅広い用途で使用できる便利な機能だ。今回は2025年に発表された新作時計の中から、クロノグラフを搭載した傑作を紹介する。
クロノグラフは一般的に、スタートと同時に時刻表示用の輪列からクロノグラフ用輪列へ動力を接続し、ストップによって切り離し、リセットによってクロノグラフ用の針を帰零させる仕組みを持つ。言葉にすれば単純だが、動力の接続に関わるクラッチの種類や操作感に直結するカムまたはコラムホイール、追加機構としてはラップタイムを計測するためのスプリットセコンドや瞬時にリセットとリスタートを行うフライバックなど、その種類は多岐にわたる。ブランドの姿勢や個性が色濃く反映された、クロノグラフの世界をのぞき見てみたい。
パテック フィリップ「グランド・コンプリケーション」Ref.5308G-001

ミニッツリピーター、スプリットセコンドクロノグラフ、パーペチュアルカレンダーを搭載したグランドコンプリケーションウォッチ。上品なアイスブルーダイアルが特徴。自動巻き(Cal.R CHR 27 PS QI)。67石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWGケース(直径42mm、厚さ17.71mm)。非防水。1億9588万円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
レギュラーモデルの新作として発表されたグランドコンプリケーションウォッチ。2011年に登場したトリプルコンプリケーション、Ref.5208をベースとしている。搭載する複雑機構は、9時位置のスライドボタンによって操作するミニッツリピーター、ふたつの特許を採用したスプリットセコンドクロノグラフ、10時位置から2時位置にかけて配された小窓表示による瞬転式のパーペチュアルカレンダーだ。
スプリットセコンドクロノグラフに採用された特許のうちひとつは、LIGAプロセスと電鋳によって製造されたパーツを組み込んだ新型の水平クラッチ。もうひとつは、スプリット秒針レバー隔離機構だ。いずれもトルクロスの削減に貢献し、クロノグラフ使用時の精度への影響を最小限に抑える。
18Kホワイトゴールド製のケースは、凹面ベゼルとオープンワークのラグを備えた特徴的なデザイン。裏蓋は、サファイアクリスタルバックとソリッドバックの2種類が付属する。ソレイユ仕上げのアイスブルーダイアルが、爽やかな印象をもたらす。
ブレゲ「タイプXX クロノグラフ 2075」Ref.2075BH/99/398

コンパクトなケースを採用した手巻きクロノグラフ。18Kブレゲゴールドによって華やかな印象に仕上げられている。手巻き(Cal.7279)。28石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18Kブレゲゴールドケース(直径38.3mm、厚さ13.2mm)。5気圧防水。614万9000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
手巻きクロノグラフムーブメントを搭載した、パイロットクロノグラフ。陽極酸化処理によるブラックのアルミニウム製ダイアルには、立体的なアラビア数字インデックスとブランドロゴが並んでいる。3時位置には大型の15分積算計、9時位置にはスモールセコンドが配され、クラシカルなデザインに纏められている。
直径38.3mmのコンパクトなケースは、18Kブレゲゴールド製。双方向に回転するベゼルが搭載されている。シースルーバックからは、ムーブメントのブリッジに刻まれた職人の手作業によるエングレービングを鑑賞することが可能だ。
本作が搭載する手巻きクロノグラフムーブメントは、2023年に発表された自動巻きクロノグラフムーブメントCal.728系をベースとして、手巻き仕様に改めたものだ。フライバック機構を搭載し、計測途中に4時位置のプッシュボタンを押下することで、リセットとリスタートを瞬時に行うことができる。約60時間のパワーリザーブや、理論上外乱にも強い毎秒10振動の高振動など、優れたスペックを誇る。
ウブロ「ビッグ・バン 20th アニバーサリー キングゴールド セラミック」Ref.431.OM.1338.RX

18Kキングゴールドとブラックセラミックスを組み合わせたケースが特徴。ビッグ・バン誕生20周年を記念した意匠が、随所に盛り込まれている。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。18Kキングゴールド+ブラックセラミックケース(直径43mm)。100m防水。世界限定250本。526万9000円(税込み)。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ Tel.03-5635-7055
「ビッグ・バン」誕生20周年を記念して発表された数量限定モデル。ブラックのダイアルにはカーボンエフェクトの型打ちが施され、光の当たり具合によって様々な表情を見せる。蓄光塗料を塗布したインデックスや段差を設けたインダイアルなど、立体的な造形が魅力だ。
ケースは、18Kキングゴールドとセラミックスを組み合わせたコンビネーションタイプ。キングゴールドは、プラチナを配合したウブロのゴールド合金であり、変色や腐食への耐性が高いという特徴を持つ。セラミックス製のベゼルはサイドにチェッカーが刻まれ、スポーティーな印象だ。リュウズトップには20周年を記念した刻印が刻まれ、特別感を高めている。ベルトはブラックのラバー製。チェッカーパターンが刻まれている。
自社製自動巻きクロノグラフムーブメント、Cal.HUB1280は、シースルーバックから鑑賞することが可能だ。ブランドロゴをかたどった20周年記念仕様のオープンワークのローターや、精緻に動く歯車とレバーなど、隅々まで楽しむことができる。
ルイ モネ「1816」

時計師ルイ・モネが開発した世界初のクロノグラフに着想を得た、手巻きクロノグラフ。ユニークなレイアウトのダイアルが、オリジナルを彷彿させる。手巻き(Cal.LM1816)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Tiケース(直径40.6mm、厚さ14.7mm)。3気圧防水。693万円(税込み)。(問)ジーエムインターナショナル Tel.03-5828-9080
1816年に完成した世界初のクロノグラフ「コンター・ドゥ・ティエルス」をモチーフとした、「メカニカル ワンダーズ」コレクションの新作。グレード5チタン製のブレスレット一体型ケースを採用した、スポーティーなデザインが魅力だ。
シルバーのダイアルには、マイクロビーズブラストとサテン仕上げが施され、マットな質感を与えられている。上部にスモールセコンドと30分積算計、下部に12時間積算計を配したレイアウトは、コンター・ドゥ・ティエルスのデザインを忠実に再現したもの。インダイアルの針とクロノグラフ秒針はブルーに仕上げられ、アクセントとなっている。
本作は同社が初めて開発したブレスレットを備えたモデルである。幅広のコマが連なった、力強さと上品さを両立させたデザインだ。その形状は「プロジェクトブリッジ」と名付けられている。
搭載するムーブメントは、コンセプト社との共同開発による手巻きクロノグラフ。シースルーバックからは、ゴールドに仕上げられた受けやブリッジ、クロノグラフの操作とともに動くレバーなどを鑑賞することができる。
アンジェラス「クロノグラフ テレメーター」Ref.0CHC.SG01A.V010S

アンジェラスのクロノグラフ製造技術にオマージュを捧げる数量限定モデル。ダイアル外周のテレメーターは、音の速度を生かして距離を計測するためのものだ。手巻き(Cal.A5000)。23石。パワーリザーブ約42時間。2万1600振動/時。SSケース(直径37mm、厚さ9.25mm)。世界限定25本。352万円(税込み)。(問)アーノルド&サン相談室 Tel.0570-03-1764
クロノグラフの名門アンジェラスの時計製造技術に敬意を表した「ラ ファブリック」コレクション。本作はそのラインナップに加わったワンプッシュクロノグラフだ。特徴的なのは、モデル名にも含まれているダイアル外周に配されたテレメーター。テレメーターは、事象を目視によって確認した時点と、その音が聞こえたときを基にして距離を計測するためのものである。花火や雷までの距離を知ることができるツールだ。
グレーのダイアルには、スモールセコンドと30分積算計が配され、アプライドインデックスが立体感を作り出している。ボックス型のサファイアクリスタル風防を採用した、ヴィンテージ感も魅力だ。
直径37mmのコンパクトなケースは、ステンレススティール製。クロノグラフ用のプッシャーをリュウズと同軸に組み込んでいるため、ケースサイドがすっきりとしている。
手巻きクロノグラフムーブメントを搭載し、シースルーバックからは、ストライプ装飾を施したゴールドカラーのブリッジや優美な曲線のレバーを楽しむことができる。



