日本発のファンクラブながら世界で初めてモーリス・ラクロアの公認を受けた団体が「モーリス・ラクロア クラブ ジャパン」だ。そして両者の絆の深さを象徴するように、これまで2本のコラボレーションモデルを送り出し、6月にその第3弾が発売される。その3本に共通しているのが「色」にかける想いだ。

手巻き(Cal.ML145)。18石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径39mm 、厚さ10mm)。10気圧防水。世界限定500本。43万6700円(税込み)。発売予定日2026年6月1日。
Photographs & Text by Mutsuyo Ito
[2026年1月19日公開記事]
ラクロア公式クラブとコラボレーションした「アイコン」
日本にはモーリス・ラクロアの公式ファンクラブが存在する。それが「モーリス・ラクロア クラブ ジャパン(ML CLUB JAPAN)」だ。同ファンクラブはこれまで「アイコン」をテーマにしたコラボレーションモデル「アイコン マニュアル クラブジャパンエディション」を送り出したことでも知られる。
今からさかのぼること約5年、まだクラブが今ほどの知名度を持っていなかった頃に実現した1stコラボレーションモデルから現在までの道のりを振り返ると、時代の流れと不思議に噛み合う色選定の共通項が見えてくる。今回は、モーリス・ラクロア世界初公認の公式クラブであるML CLUB JAPANの創設者である、中澤浩司氏に話を聞きながら、「色」という軸でアイコンを深堀していく。

京都府京都市生まれ。芸術高校、大学にて住環境デザイン、インテリア学科卒業後、広告営業、WEBディレクション業務を経て、2021年「CELIEU (セリュー)」腕時計ケースブランドを立ち上げ活動を開始。さまざまなブランドや時計店とダブルネームでコラボレーションを発表。19年にMAURICE LACROIX世界初公認のウォッチクラブ「ML CLUB JAPAN」創設。21年、24年、25年にコラボレーションモデルを発表。腕時計を通じてひとりでもウォッチライフを充実してもらいたいと活動を行う。
3rdコラボレーションモデルの色を解説
12月20日、あるトークショーで発表されるモデルをこの目で見るために、筆者は名古屋にいた。現場には、画像では伝わってこない「色」や物語がある。そんな思いで見たのが、モーリス・ラクロアとML CLUB JAPANのコラボレーションモデルである「AIKON MANUAL CLUB JAPAN EDITION」3rdモデルだ。

白Tシャツとビンテージデニムに合いそうだな……というのが筆者のファーストインプレッションである。ダイアル色は「サンド・シャンパンカラー」と名付けられている。ダイアルのベージュはクル・ド・パリによってツヤが強調されないため、より砂漠の砂色を彷彿とさせる。そして針とインデックスのスーパールミノバが、ダイアル色となじみ、主張しすぎていない所もポイントだ。

今年(2025年)の色との関係性⁉︎
このモデルの全体の印象色は、今年のパントン・カラー・オブ・ザ・イヤーである「Mocha Mousse(モカ・ムース)」と同じ優しいブラウンだ。パントン・カラー・オブ・ザ・イヤーの色選定や時計の商品企画は、数年前には決定しているため、時計に関しては色を合わせることは難しい。つまり偶然の産物だ。
しかし、中澤氏の考えたラグジュアリースポーツウォッチとビンテージウォッチの「間をつなぎたい」という想いと、パントン社の「調和=人間関係や社会的なつながりをもたらしたい」という願いが若干ではあるが、リンクしているようにも感じた。

このブラウンは、温かみを感じる色である。土や樹木、紅茶の色を見てホッとすることはないだろうか。また、インテリアに取り入れると、落ち着いた癒しの空間になるため、リラクゼーション系の店舗でよく使用される色でもある。

パントン・カラー・オブ・ザ・イヤーとは?
今更ながらではあるが「パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー」をご存じだろうか?「パントン(PANTONE)」というカラーチャートで有名な会社が毎年選定している、「その年を表す色」であり、その年の社会情勢や人々の感情を映し出す鏡のようなものとも言われている。アパレル業界のように、ここで発表された色に売上を左右される業界も多い。

さて、お気付きだろうか? コラボレーションモデルの色と一致している年がある事に。そのあたりも含めて過去のコラボレーションモデルを振り返っていこう。
1stコラボレーションモデル(2021年発売)の色とは?

2021年に発表された、1stコラボレーションモデル。ダイアルのブルー色は、平和と安定の象徴色だ。そして注目したいのはこのモデルに採用されたラバーベルトの色だ。この色を正確に本国に伝えるために、パントン社のカラーチャートNo.で指定したという程、中澤氏の想いが詰まった色だという。

ラバーベルトは「クールグレー」の愛称で現在も人気を博している。この色は、不安定な世の中でも受け入れられやすく、日本人になじみの深い色であるという理由で選んだそうだ。
2021年のパントン・カラー・オブ・ザ・イヤー
1stコラボレーションモデルが発売された年のパントン・カラー・オブ・ザ・イヤーは「アルティメットグレー(グレー)とイルミネイティング(イエロー)」だ。この年は流行り病によるパンデミックで世の中がかなり不安定になっていた。今思い出しても、異様な年であった事は記憶に新しいだろう。

パントン・カラー・オブ・ザ・イヤーは通常1色のみであり、この年は2色が選定された稀な年だった。アルティメットグレーには、永続的で強固な基盤をもたらす信頼の象徴、イルミネイティングには、快活で明るく輝く、という意味が込められている。そしてこの2色には「重視すべきは1色、あるいはひとりではなく、それより大きいもの」というメッセージがあるそうだ。人々の助け合いを願って選出されたのかもしれない。

奇しくも1stコラボレーションモデルのラバー色の選定理由となった「不安定な世の中でも受け入れられやすいように」という中澤氏の思いと、パントン社の思いが偶然リンクしていたのを知ったのは、発売から数年先であった。
2ndコラボレーションモデル(2024年発売)の色を見る
1stコラボレーションモデルの発売から3年、手巻き+小径ケースで発表された2ndコラボレーションモデル。ダイアル、ストラップ共に、シックなネイビーだ。ブルーからネイビーへ、同じ青系統の色ではあるが、色としての意味合いは変わる。

ネイビーは内なる思考に導く色。また、義務や規律の象徴とも言われ、制服やコーポレートカラーに採用されることも多い。モーリス・ラクロアがブランドとしてどう進んでいくかを表すきっかけとなった色選定だと推測できる。伝統を重んじた上で、期待されることを実現するための一歩を、このモデルで表したのかもしれない。

2026年のパントン・カラー・オブ・ザ・イヤーは?
余談ではあるが、来年2026年のパントン・カラー・オブ・ザ・イヤーは「Cloud Dancer(クラウド ダンサー)」だ。パントン社がこの色を選んだ背景には、情報や物があふれかえっていない、穏やかな未来を期待してとのこと。

偶然か必然か。時代背景と共に歩んだアイコンと色の物語
1stコラボレーションモデル発売から約5年。今年の色、「Mocha Mousse(モカ・ムース)」が表すように、落ち着いた日常がある。あの頃の「アルティメットグレーとイルミネイティング」という色に託された未来への願いは、果たして実を結んだのだろうか。今年、モーリス・ラクロアは50周年を迎えた。今後もきっと、時代背景やブランドの想いを色に映しながら、時計業界に彩りを添え続けてくれるだろう。
筆者プロフィール
伊藤むつよ
時計メーカーの色彩監修やイメージコンサルティング、催事会場でのパーソナルカラー診断や接客講師など、販売現場の「品・場・人」にまつわる幅広いコンサルティング業務を行う。時計修理技能士2級・J-color認定講師・GIA AJP等多数の資格を保有。株式会社parakeITO代表取締役。HP:https://www.mutsuyo-ito-parakeito.com/
Contact info: DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンcg.csc1@dksh.com



