今回は、“ジュエリーのように華やかなレディース向け高級腕時計”を特集する。金属加工、細かな細工など、ジュエリー製作と時計製作には共通点があり、双方を得意とするブランドは多い。そこで、各ブランドあるいは各モデルの歴史や特徴を説明しつつ、宝石をふんだんに用いたジュエリーのような高級腕時計を紹介してゆこう。

Text by Shin-ichi Sato
[2026年3月3日公開記事]
宝石をふんだんに用いたジュエリーのように華やかな高級時計に注目
今回は、腕時計の“装飾品”としての魅力を深掘りし、貴金属や宝石をふんだんに用いた“ジュエリーのように華やかなレディース向け高級腕時計”に注目しよう。装飾品としての時計の歴史を振り返ると、装飾に趣向を凝らせたジュエリーに近い時計の系譜と、永久カレンダーやオートマタのように機械に技術が注がれた複雑時計の系譜があり、それぞれ、あるいは両方の要素を持った傑作が生みだされながら発展してきたと言えよう。
金属加工、細かな細工など、ジュエリー製作と時計製作には共通点があり、ジュエリーと腕時計の両方を製作するブランドや、宝石をちりばめた時計を得意とするブランドが多く存在する。そこで今回は、これらのブランドが提供するジュエリーのように華やかなレディース向け高級時計を紹介してゆこう。
ブレゲ「レーヌ・ドゥ・ナープル 9935」Ref.9935BH/4Y/964 D0

自動巻き(Cal.537L2)。28石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約45時間。18Kブレゲゴールドケース(縦36.5×横28.45mm)。3気圧防水。942万7000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
魅力的なレディース向け高級時計を長きにわたって製造してきた時計ブランドの代表格のひとつがブレゲだ。その中で、「レーヌ・ドゥ・ナープル 9935」Ref.9935BH/4Y/964 D0を取り上げる。
レーヌ・ドゥ・ナープルは、以前は「クイーン・オブ・ネイプルズ」と呼ばれたコレクションで、2025年のブレゲ250周年を機に改名された経緯がある。1810年から1812年にかけてナポリ王妃カロリーヌ・ミュラのために作られた、ブレゲの歴史上初の腕時計から着想を得ており、卵型の柔らかな曲線で構成されたケースシェイプが特徴である。また、オフセットされた文字盤もデザインコードだ。
取り上げるRef.9935BH/4Y/964 D0の文字盤は、タヒチ産マザー・オブ・パールの上にアヴェンチュリンガラスを重ねる2層構造を採用しており、オーロラのような神秘的な色彩を見せる点が、他のアヴェンチュリン文字盤モデルと大きく異なる点だ。オフセット文字盤の7時位置にはスモールセコンド、12時位置にムーンフェイズ表示が配される。このムーンフェイズの窓は三日月を思わせる傾けたデザインで、アヴェンチュリン文字盤の煌めきや表情と相まって、星空に月が浮かぶかのようだ。
ケースは、250周年を記念して開発された18Kブレゲゴールド製。このゴールドは、イエローゴールドとローズゴールドの間の色味を持ち、華やかさと温かみが感じられるカラーとなっている。また、ブルーの文字盤とアリゲーターストラップとの組み合わせにより、シックな印象である。ダイヤモンドのスノーセッティングが施された6時側の丸型のラグや、12時位置のペアシェイプダイヤモンドも従来モデルになかった特徴で、今後、コレクションのアイコンとなるだろう。
ブルガリ「セルペンティ トゥボガス」Ref.103905

自動巻き(Cal.BVS100 レディ ソロテンポ)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KPGケース(直径35mm、厚さ10.8mm)。30m防水。832万7000円(税込み)。(問)ブルガリ・ジャパン Tel.0120-030-142
続いて、ブルガリを取り上げよう。ご存じの通り、ブルガリはマニュファクチュールとしてハイレベルな時計技術を有しており、そこにジュエラーとしての技術力と独創的なデザインセンスを組み合わせることで、魅力的なレディース向け高級時計を多く生み出している。
ピックアップするのが、「セルペンティ トゥボガス」Ref.103905である。「セルペンティ」は、古代から神秘性や知性の象徴とされてきた“蛇”をモチーフとしたコレクションであり、ブルガリのアイコンのひとつとなっている。セルペンティにはブレスレットやリング、ネックレスといったさまざまなジュエリーがラインナップされており、それらとのコーディネートを図りながら腕時計を選ぶことができる点は、ブルガリの魅力のひとつである。
セルペンティ トゥボガス Ref.103905は、蛇の頭部をモチーフとした時計のヘッドから「ダブルスパイラルブレスレット」が伸び、手首に巻きつくデザインが特徴だ。ケースは18Kピンクゴールド製で、金属素材であるゴールドの輝きと、柔らかな曲線による蛇の有機的なシルエットを両立させている点は、ジュエラーとしての技術が光る。
従来はクォーツムーブメントの採用が多かったコレクションであるが、2025年発表の本作では、ムーブメント直径19mm、厚さ3.90mmという小型の自動巻きムーブメント「BVS100 レディ ソロテンポ」が採用された。テンプをツインブリッジによって支えることで耐久性を高めており、パワーリザーブは約50時間と実用性も高い。
ブルガリはセルペンティ以外にも、ブランド名が刻まれたベゼルがアイコニックな「ブルガリ・ブルガリ」や、モダンな「ルチェア」、ハイジュエリーウォッチの「ディーヴァ ドリーム」などを擁しており、レディース向け高級時計を検討するなら外せないブランドだ。
ロレックス「レディ デイトジャスト」Ref.279135RBR

自動巻き(Cal.2236)。31石。2万8800振動/時。18Kエバーローズゴールドケース(直径28mm)。100m防水。
ここまではレディースモデル専用のデザインの例であった。それと対照的であるのはロレックスだ。ロレックスは、「オイスター パーペチュアル」や「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」コレクションで、統一された基本デザインに基づき、メンズ向けサイズからレディース向けのコンパクトなサイズまでラインナップしている点が特徴だ。
今般取り上げる「レディ デイトジャスト」は、女性の手首にフィットするケース径28mmのコンパクトなサイズ感に、ロレックスのデザインコードであるケースシェイプ、ブレスレット、12時位置の“クラウン”などを盛り込んだモデルだ。また、ピンクゴールドの色調が長く維持できるロレックス独自の18Kエバーローズゴールドをケースとブレスレットに採用し、ダイヤモンドを配したベゼルを組み合わせることで華やかに仕立てている。文字盤はサンレイ仕上げのチョコレートカラーによるシックなコーディネートで、星形のインデックスと、“IX”のローマンインデックスにもダイヤモンドが配される。
レディ デイトジャストのもうひとつの注目点は、18Kゴールドかプラチナ製のみが用意される「プレジデントブレスレット」が装備されている点だ。これは、伝統的に「デイデイト」に用いられてきた特別なデザインであり、半円形のリンクを連ねたような形状が立体的で、貴金属の煌びやかさが引き立つ仕上がりである。また、クラスプが目立たない「コンシールド クラウンクラスプ」が採用され、立体的なリンクの連なりが手首を包み、ハイジュエリーのようなエレガントさを生み出している。
オメガ「コンステレーション」Ref.131.25.25.60.60.002

クォーツ(Cal.4061)。SS×18Kセドナ™ゴールドケース(直径25mm、厚さ8.1mm)。30m防水。157万3000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
続いてはオメガの「コンステレーション」を紹介しよう。オメガのコンステレーションの歴史は古く、1952年に高精度な上位モデルとして誕生している。現在のモデルにも継承される8つの星や天文台のモチーフは初代モデルですでに登場しており、かつてキューテディントンおよびジュネーブの天文台で行われたコンテストでオメガが8つの記録を打ち立てたことを象徴している。
現在の、ケースからブレスレットにつながるラインを持つシルエットと、3時、9時の爪状のモチーフ、フラットなブレスレットといったデザインコードが形作られたのは1982年のことである。その後、少しずつデザインの見直しを受けながらバリエーションが増やされ、現在では直径41mmのメンズ向けモデルからレディース向けの25mmモデルなど、多彩なサイズ展開のドレスウォッチコレクションとなっている。
取り上げるのはパープルの文字盤が印象的なRef.131.25.25.60.60.002である。6時位置にシンボリックな星のモチーフが配され、そこを起点として光が放たれているかのようなパターンが用いられている。ベゼルはオメガ独自の18Kムーンシャインゴールド製で、夜空に輝く月からインスピレーションを得た、従来の18Kイエローゴールドよりも淡い色調が特徴である。文字盤のパープルの色調とともに、鮮やかでありながら落ち着きのある印象で、さまざまなシーンにマッチしそうな仕上がりとなっている。
筆者の個人的な感想となるが、今回のピックアップモデルの中で、スーツスタイルに最もマッチするのは、このコンステレーションのモダンなデザインではないだろうか。
グラスヒュッテ・オリジナル「セレナーデ・ルナ」Ref.1-35-14-10-12-04

自動巻き(Cal.35-14)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径32.5mm、厚さ8.9mm)。204万6000円(税込み)。(問)グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 Tel.03-6254-7266
最後にピックアップするのは、グラスヒュッテ・オリジナル「セレナーデ・ルナ」の最新作である「パープルベルベット」カラーモデルだ。ここまでで取り上げた、ブレゲ、ロレックス、オメガはスイスを拠点とし、ブルガリは本拠地がイタリアであるが時計部門はスイスに位置する。対してグラスヒュッテ・オリジナルは、ドイツ東部のグラスヒュッテに居を構える。グラスヒュッテは古くから時計産業が根付く地であり、現在でも複数の名門ブランドが軒を連ねている。
セレナーデ・ルナは、6時位置に月の表情が変わってゆくムーンフェイズを備えたモデルである。ホワイトのマザー・オブ・パールと、ダークカラーのタヒチ産マザー・オブ・パールを組み合わせたディスクを回転させる構造で、本作のデザイン上のアクセントにもなっている。この表示を実現するのが、自動巻きムーブメントのCal.35-14である。Cal.35-14はセレナーデ・ルナのために開発されたグラスヒュッテ・オリジナルの自社開発ムーブメントであり、ムーブメント直径26mm、厚さ3.8mmとコンパクトな仕立てでありながら、パワーリザーブは約60時間と実用性が高い。さらに、グラスヒュッテのブランドが好んで用いる大型のプレートが採用されており、ここに高品質な仕上げが施される。
パープルベルベットの文字盤は、深みのあるバイオレットカラーで、そこに繊細なサンレイ仕上げが施され、シルクやベルベットを思わせる質感である。また、インデックスとベゼルにはダイヤモンドを配し、煌びやかな仕立てとなっている。
文字盤やベゼルのダイヤモンドが生み出す華やかさに加えて、Cal.35-14に施された各種仕上げや青焼きネジなどの見ごたえのあるディティールが本作の魅力であり、「高級時計の購入を考えるなら魅力的なムーブメントを堪能したい」という方は、グラスヒュッテ・オリジナルをぜひ、候補に加えていただきたい。



