1997年の第1作から、控えめなラグジュアリーを追求してきたショパールのL.U.Cコレクション。一時期アグレッシブなデザイン性を模索したが、近年は再び、控えめな打ち出し方に回帰した。ではなぜショパールは、抑制を利かせた時計を改めて指向するようになったのか? その問いに答えてくれたのは、共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏だ。
[クロノス日本版 2024年11月号掲載記事]
ショパールにとって静かなラグジュアリーは新しい概念ではない

1958年、ドイツ生まれ。15歳でスイスに移住し、HECローザンヌ校に入学。卒業後、ショパールに入社。1988年にミッレ ミリア コレクションをスタートさせたほか、96年にはフルリエに工房を設立し、翌年からは自社製ムーブメントを搭載したL.U.C コレクションの製造も開始した。スポーティーなアルパイン イーグルの大ヒットに続き、オーソドックスを打ち出した最新のL.U.Cコレクションが、改めて注目を集めている。
「私たちが市場で経験している顧客の嗜好の変化と、私たちのそもそもの在り方が一致しているからです。今や人々は再び、より小さく洗練された、エレガントな時計に目を向けるようになりました。こういった傾向は2年ほど前からですね。とりわけ、クラシックな時計に対する、若い顧客からの反応は、私がやりたかったことを始めるためには強いシグナルでした。私個人は洗練されたプロダクトが好きなので、こういう市場の傾向を歓迎しますよ」。では、ショイフレ氏にとって、クワイエットラグジュアリーとは一体何なのか?
「私たちにとって、クワイエットラグジュアリーとは、とりたてて目新しい概念ではないのです。というのも、L.U.Cコレクションがそうだから。つまり、必ずしも皆さんが知らない時計、少なくとも多くの人が、それがいくらなのか分からない時計ということですね。そして今や、人々はよりクワイエットラグジュアリーに目を向けるようになりました。L.U.Cにとっては完璧なタイミングでしょう」。ではそもそも、クワイエットとは何を指すのだろうか?
「私はこう思うのです。ラベルは間違いなく内側にある。そして見た目は間違いなく仮の姿ということですね。つまりその物の真価は持ち主にしか分からないのです。時計で言うと、良いムーブメントを載せているけど、外側はどちらかというとシンプルなものになるでしょう。そして洗練された仕上げを持っていること、ですね。そういった時計を見たとき、多くの人はすぐにいいねとは思わないでしょう。しかし控えめなラグジュアリーを感じるようになる」。では重さなどといった感覚性能は、ラグジュアリーな経験に影響を及ぼすのだろうか?
「感覚とは個人的な経験ですね。見た目は誰でも知覚できます。でも重さや感触とは着けた人だけが分かるロジックですね。例えば、とても繊細な色合いのカシミアウェアを羽織ったとしましょう。誰もそれがカシミアとは分からない。触らない限りは、ですね」。そんなラグジュアリーを、ショイフレ氏はどう定義しているのか?
「そうですね、自分が楽しめることに時間を使えること、楽しめることに没頭することですね。とてもシンプルなことでいいのです。必ずしも贅沢である必要はないですね。またラグジュアリーとは、品質と同等ですね。上質なものは時に人の考えを変えます。現在ラグジュアリーとは、支払った対価のように思われています。しかし、私にとってはですが、ラグジュアリーは必ずしも金額で推し量れるものではないのです」






