時計ライターの佐藤しんいちが、2026年の注目作として、新しいデザインをまとった「シリーズエイト」を紹介する。グローバルトレンドを取り入れたアンダー40mmのケース径に、薄型化が図られた厚さ10.4mmのシルエットを持つ点が特徴だ。また、部品ごとに仕上げを使い分けることで、部品の切り替わりを際立たせ、エッジが効いた、立体感のある仕上がりとなっている。

自動巻き(Cal.9051)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径39.3mm、厚さ10.4mm)。10気圧防水。世界限定1200本。19万8000円(税込み)。
Text and Photographs by Shin-ichi Sato
[2026年3月06日公開記事]
人気のメカニカルコレクション「シリーズエイト」に薄型の新デザインが登場
2026年に発表された新作時計のうち、ライターの佐藤しんいちが注目しているのが、「シリーズエイト」に追加された新デザインかつ薄型の新モデルだ。グローバルトレンドを取り入れた直径39.3mmのサイズ感に、厚さ10.4mmと薄型化が図られている点がトピックスとなる。今回は、シリーズエイトについておさらいしつつ、本作の魅力について深掘りする。
「シリーズエイト」についておさらい
シリーズエイトとは、「エッジの効いたモダンデザインと高い実用性を兼ね備えた日本発の機械式時計ブランド」することをコンセプトに置くコレクションである。ここで、“機械式時計”と明言されている点がポイントである。それまでラインナップ上ではクォーツモデルに注力してきたシチズンが、2021年に「ザ・シチズン」のメカニカルモデルを発表し、その同じ年にシリーズエイトを復活させてラインナップに加えた、という背景があるのだ。時計専門誌『クロノス日本版』では、2021年をシチズンの「メカニカル回帰元年」と呼び、大きく取り扱ったことも記憶に新しい(参考:https://www.webchronos.net/features/61976/)。
スペック上の特徴としては、磁気による精度への影響を防ぐために2種耐磁の基本性能を備えた機械式ムーブメントを搭載している。この点は、コンセプトの現代のライフスタイルを反映したものだ。デザインはエッジの効いた立体感があるもので、ビジネスからカジュアルまで幅広いシーンで活躍するスタイリングとなっている。詳しいデザインについては、紹介する新作について解説しながら見てゆこう。
新作モデルはケースデザインに注目
新作には3つのバリエーションが用意される。シルバーカラーケースのRef.NB6080-51W、ゴールドカラーのRef.NB6085-57W、グレーカラーで文字盤にフォージドカーボンを用いた限定モデルのRef.NB6086-54Eである。従来ラインナップは直径40mmを超えていたのに対し、本コレクションはグローバルトレンドを取り入れた直径39.3mmに仕立てられている。さらに、ケース構造の最適化によって、厚さ10.4mmと薄型化を達成している。
最初に注目したいのは、ケース造形のメリハリだ。シリーズエイトは、複数の部品を組み合わせた別体構造により、立体的でシャープなデザインが特徴である。新作でもこの構造とデザインコードは継承されている。

また、部品ごとに仕上げを使い分けることで、部品の切り替わりが映える仕上がりだ。ヘアライン仕上げに注目すると、あえて粗めに施すことで重厚感やメタリックな質感を表現している。これが筆者の感じたメリハリにつながって、さらなる立体感を生み出している。

フォージドカーボンを文字盤に用いた限定モデルRef.6086-54E
限定モデルでグレーカラーのRef.6086-54Eは、文字盤にフォージドカーボンを用い、カーボン特有のテクスチャーをデザインに取り入れている点が最大の特徴だ。この文字盤は、薄く仕上げたフォージドカーボンのプレートをベースとなるプレートに貼り、仕立てているとのこと。
全体はグレーのメッキ仕上げのステンレススティール製で、部分的にメッキ仕上げによるゴールドカラーのパーツを組み合わせている。ゴールドカラーの使用を一部に留め、シックにまとめていることが印象的であった。
グリーン文字盤のRef.NB6080-51WとゴールドカラーのRef.NB6085-57W
レギュラーモデルとなるRef.NB6080-51WとRef.NB6085-57Wでは、シリーズエイト独自の凹凸パターンを文字盤に施している。このパターンは、日本特有の市松模様と都会のビル群から着想を得たデザインを融合したもので、ランダムな凹凸が光を受けて陰影を生み出すことが特徴である。
自動巻き(Cal.9051)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径39.3mm、厚さ10.4mm)。10気圧防水。15万9500円(税込み)。
自動巻き(Cal.9051)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径39.3mm、厚さ10.4mm)。10気圧防水。17万6000円(税込み)。
このパターンは、シリーズエイトのオリジナルデザインとして採用されてきたものだが、従来は文字盤全面に施されてきたのに対し、新作の新たな試みとして外周をフラットに、中央部にのみパターンが施されている点に注目だ。シンプルなアプローチであるが効果は大きく、文字盤外周と中央部で表情にメリハリが生まれ、コンパクトな本作をさらに引き締めている。

ゴージャスな印象のゴールドカラーモデルであるRef.NB6085-57Wは、めっきによるイエローゴールドカラーを主としている。ここに、ウォームゴールドカラーと名付けられたピンクゴールド系の色調に仕上げられたリュウズガードやインデックス、ベゼルの一部、ブレスレットのセンターリンクなどが組み合わされている。これによりデザインが単調とならず、表情を生み出しつつ、シリーズエイト特有の立体感を際立たせている。

2種耐磁や良好な着用感による高い実用性
ムーブメントは自動巻きで2種耐磁の性能を有するCal.9051が搭載されている。2種耐磁とは、スマートフォンやタブレットといった磁気を発生するデバイスに1cmまで近づけても、ほとんどの場合で性能を維持することのできる耐磁性能を意味する。スマートフォンやタブレットを文字通り手放せない現代社会では、その手の近傍にある腕時計が2種耐磁の性能を持っていることは、実用性が高く、心強い。
Cal.9051は、従来モデルにも採用されてきたムーブメントであるが、本作はシルエットの変更とケース構造の最適化によって、直径39.3mm、厚さ10.4mmと小型・薄型化が図られていることは先に述べた通りだ。従来モデルのRef.NB6050-51Eは直径40.0mm、厚さ10.6mmであり、これも比較的薄い仕立てであったのだが、ここからさらに0.2mm薄くしている。各所の少しずつの最適化の積み重ねの結果だろう。世を忍ぶ仮の姿で技術者として働く筆者には、設計者が3D CAD画面を前に試行錯誤する姿が見える……。
その効果もあってかフィット感が良く、着用感は良好である。ブレスレットがケースに対して斜めに伸びるシルエットのため、ラグ部と手首との間の隙間が小さいことがポイントで、これがフィット感向上に寄与している。この部分で隙間が大きいとケースが薄くても収まりが悪くなってしまうが、本作では手首への収まりが良く、薄さを実感しやすい。これが全体のエレガントさにつながっている。
エッジの効いたデザインが好みなら大注目の「シリーズエイト」新作
繰り返し述べているように、シリーズエイトはエッジの効いたデザインが特徴である。本作ではその魅力を訴求すべく、部品ごとに仕上げを使い分けて、部品の切り替わりを際立たせてメリハリをつけている。その結果、小径・薄型化が図られているにもかかわらず、立体感や存在感のある仕上がりであった。エッジの効いたデザインが好みなら、シリーズエイトの新作に注目である。そして店頭で手に取り、試着してみてほしい。その魅力が分かるはずだ。



