大塚ローテック「8号」は“温かみのある”レトログラードだ! 時計ハカセ・広田雅将がこの新作をいち早く深掘り

2026.03.11

2026年3月11日(水)にリリースされた大塚ローテックの最新作「8号」を、ハカセこと『クロノス日本版』およびwebChronos編集長の広田雅将が片山次朗へのインタビューを交えつつ、どこよりも早く深掘り。“温かみのある”レトログラードに加え、いっそう詰められた“トンマナ”やディテールを持つ本作、入手困難は必至か?

大塚ローテック 8号

Photograph by Masanori Yoshie
広田雅将:取材・文
Text by Masayuki Hirota
[2026年3月11日公開記事]


大塚ローテック「8号」発売!

 レトロフューチャーなデザインとユニークな表示機構の組み合わせで世界的な名声を得た大塚ローテック。その、唯一無二とも言える佇まいを見れば、熱狂的なファンが多いのも納得だ。そんな同社が新しく作り上げたのが、時針がゆっくり帰零する「8号」。機構もさることながら、一皮むけたデザインも魅力的だ。

大塚ローテック「8号」

大塚ローテック「8号」
自動巻き(Cal.MIYOTA90S5+自社製モジュール)。33石+3ベアリング。2万8800振動/時。パワーリザーブ約32時間。SSケース(直径31mm※ラグからラグまでの縦方向47.8mm、厚さ10.8mm)。日常生活用防水。99万円(税込み)。

「ユリス・ナルダンが製作したレトログラードみたいな時計を作りたいと思ったんですよ。糸を使って、ゆっくり針が帰零するようなレトログラードをね」。大塚ローテックを率いる片山次朗は、8号のコンセプトをこう語る。「しかし、あの時計はレトログラードの動きを安定させるために、専用の香箱と調速用のガバナーを加えている。再現は難しいと思いましたよ」。

 対して片山はヒゲゼンマイで分針(正確にはフェーダー)を帰零させ、その動きをガバナーではなく、重い弾み車でコントロールするという仕組みを考えた。「レトログラードをゆっくり戻す意味ですか? ないですね(笑)」。

 基本的な構成は一般的なレトログラードに同じ。しかし、そこに時間をかけて回転する弾み車を加えることで、フェーダーはゆっくり帰零するようになった。「本当はもっとゆっくり動かしたかったのだけど、ギア比を落として帰零の速度を遅くすると時計が動かないんですよ。それにそもそも、レトログラードの軸にルビーを使うと動かない」。結果、片山はルビーをふたつのベアリングに置き換え、さらに設計を何度もやり直すことで、このレトログラードを完成させた。

大塚ローテック「8号」

フェーダーが帰零する様子を見せるために、ケースサイドをシースルーとした。なお、文字盤12時位置からのぞく秒ディスクは、1回転90秒のスピードで動き続けている。

 その仕組みは巧妙だ。フェーダーの帰零自体はヒゲゼンマイで行うが、その動きは弾み車でサポートされる。正確に止めるのは難しそうだが、弾み車の回転は巧妙に制御されている。鍵となるのがフェーダーのラックと噛み合う中間車だ。具体的には、中間車が一定の速度で回転すると、その途中で中間車とラックとの噛み合いが外れるのである。これならば、弾み車の過剰な回転でレトログラード機構を傷める心配は少なそうだ。

「ベースになるMIYOTAのムーブメントはトルクが小さいんですよ。ですから、このモジュールを載せるのは大変でしたね」。フェーダーを制御する弾み車などを回すトルクがいるため、パワーリザーブは約32時間と長くはない。しかし、あのミヨタ90系に、62もの部品を加えて、しかも一定の速度でゆったりと動くレトログラードを完成させたのだから、この数値は十分以上ではないか。

大塚ローテック「8号」

本作もMIYOTAをベースに、自社製モジュールを組み合わせたムーブメントを搭載している。モジュールのパーツは62個となり、うち、ミネベアミツミ製の外径1.5mmのボールベアリングが1個、外径2.5mmのボールベアリングが2個使われている。

 このレトログラードにあわせて、片山は8号のデザインも大きく変えた。大塚ローテックのアイコンである、メタリックな仕上げは従来に同じ。しかしケースからはあえて角が傾かれ、風防の角にも丸いアールが設けられた。さらに言うと、ケースの筋目仕上げも、今までのものに比べるとかなりソフトだ。すぐに帰零するレトログラードにはそぐわないだろうが、ゆっくり動くレトログラードとデザインの“トンマナ”はそろっている。

大塚ローテック「8号」

エッジの立っていないケースは肌触りが良い。

「デザインの源になったのは、昔のオープンリールですね」と片山は説明する。時針が、リールを回すノブを思わせる理由だ。この針の素材はアルミ。今までの大塚ローテックなら角を立たせた仕上げにしただろうが、本作では、ケースにあわせてエッジが丁寧に落とされている。また、文字盤自体の仕上げも、なんとブラスト処理ではなく、あえて塗装でグレーが施された。理由は「オープンリールの感じを出したかった」ため。見ると、レトログラードを制御する弾み車も、オープンリールの形になっている。

大塚ローテック 8号

弾み車の形状もユニーク。なお、フェーダーが帰零する際、この弾み車が勢いよく動く様を見ることができる。

 機構を含めて、ソフトさを強く打ち出した8号。しかし、作りは全く手を抜いていない。あえて彫刻ではなく印字を選んだロゴやインデックスなどは、立体的な仕上がりを持つ。また、アルミ製のフェーダーに加えられた赤い部品は、なんとプラスティックの削り出しである。塗装ではなく、別部品を象嵌のようにはめ込むことで、赤い部分と針の上面は、完全にツライチになっている。

 本作は、ラバーストラップの仕上げも良好だ。今回、片山は小ロットで製作してくれるメーカーを見つけ、ラバーストラップの製作を依頼した。同社初の試みだが、ストラップのつなぎ目は目立たず、表面の仕上がりも、大メーカーの製品並みに良好だ。もともと大塚ローテックの時計はトンマナがそろっていたが、本作では、それがいっそう詰められた感がある。

 さて、気になる8号のお値段は99万円。今までのモデルに比べると安くはないが、唯一無二の機構と、いっそうそろったトンマナ、そしてディテールを考えれば、これは大バーゲンではないか。正直、すべての時計好きにお勧めしたいところだが、今までのモデル以上に入手困難なのは間違いない。

大塚ローテック「8号」

本作の販売は抽選式で、第1回目は2026年3月23日(月)17時〜23時30分まで、大塚ローテックの公式サイト(https://otsukalotec.base.shop/)で行われる。また、東京・原宿のWITH HARAJUKU 1F エントランスで開催される「ŌTSUKA LŌTEC Exhibition in Harajuku」にて、3月19日(木)~23日(月)の期間に実機が展示される。
WITH HARAJUKU 1F エントランス
住所:東京都渋谷区神宮前1丁目14番30号
営業時間:10時~19時50分(25日は19時閉場)
入場料:無料
URL:https://withharajuku.jp/



Contact info:大塚ローテック https://otsuka-lotec.com


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