今回は、スピニカー「スペンス300 オートマティック」をインプレッションする。本作は、マリンスポーツを行う人々のための時計をラインナップするスピニカーが贈る、300mの高い防水性能と、ケース厚10.9mmという薄さを両立し、スポーツシーンでもデイリーユースでも活躍するダイバーズウォッチである。“手堅い時計作りをするブランド”と筆者が評価するスピニカーによる、実用的な1本の完成度について詳しく述べてゆきたい。
Photographs and Text by Shin-ichi Sato
[2026年4月22日公開記事]
マリンスポーツを行う人々のための時計をリリースするスピニカー

スペックの厚さはケース厚さであり、風防も含めた時計仕上がり厚さは筆者実測で11.8mmである。自動巻き(MIYOTA製Cal.9039)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.9mm)。7万4800円(税込み)。
今回インプレッションするスピニカーはイタリア発の時計ブランドで、2019年に日本上陸を果たしている。ブランドの基軸となるのは、ヨットやフリーダイビングなどのマリンスポーツを行う人々のためのデザインである。
主なラインナップは、1970年代のテイストを取り入れた「デュマ」、コンプレッサーケースへのオマージュである「ブランダー」、バブルレンズ風防を備えた55気圧防水モデルの「ピカール」といった、ヴィンテージテイストがありながらもひとひねりの効いたモデルのほか、モダンな「ハス」、スピニカーのハイエンドシリーズに位置付けられる「テセイ」などが並ぶ。
筆者のスピニカーに対する印象と「スペンス300 オートマティック」に対する期待
スピニカーは、一見、冗談にも思えるほどに大柄なピカールや、海の男である水兵が主人公の「ポパイ」とのコラボレーションモデル「チャレンジャー オートマティック ポパイ アンカーアームズ リミテッドエディション」などをラインナップするため、ある種の“バラエティー枠”と捉えている方もいるかもしれない。確かにそれはスピニカーの一面である。一方で、ユニークなコンセプトを時計の形にうまくまとめ、実用的な良い着地点に落ち着かせるバランス感覚に優れている点も魅力である。そして、ケースシェイプやブレスレットのデザインが巧みで、着用感が良好であり、手堅いつくりをしている点を筆者は高く評価している。
さて、今回インプレッションする「スペンス300 オートマティック」は、ハイスペックでスリムなダイバーズウォッチを掲げ、300m防水でありながらケース厚さ10.9mmというスタイリングを実現している。そして、この薄い仕立てにより、着用感や実用性の向上をコンセプトの主軸に置いている点が特徴だ。デザインはシンプルで、日付表示もなく、エッセンシャルだ。
このような前情報から、筆者は“薄い仕立てとシンプルなデザインに、スピニカーの手堅い時計作りが組み合わされば、魅力的な1本となっているだろう”と期待していた。では、実際の仕上がりはどうであったか。詳しく見てゆこう。
スペンス300 オートマティックの注目すべきポイント
スペンス300 オートマティックのコンセプトは、300mの高い防水性能と、厚さ10.9mm(時計仕上がり厚さは筆者実測で11.8mm)のスリムなケースによる良好な着用感の両立である。よって、着用感について注目するのが、本作の完成度や実力を評価するうえで重要となる。

全体のスタイリングはコンサバティブなダイバーズウォッチを引用しつつ、矢印型で大きな時針と、先端に向かって鋭く絞られた分針というオリジナリティーを加えた文字盤デザインとなる。

ケースシェイプは曲線を基調として柔らかな印象で、全体にはきめの細かなサテン仕上げを、エッジ部分にはポリッシュを施して、モダンな仕立てとしている。インプレッションしたモデルは、明度を抑えつつ彩度の高いブルー文字盤で、光の加減で明るいブルーから深いネイビーへと変化するモダンなカラーリングだ。ここに、アルミニウム製のベゼルインサートが組み合わされて、レトロなテイストが加えられている。
優れた着用感に大満足
本作を手に取った際、スリムな仕立てであると前情報を持ったうえでも、第一印象は“想像以上にスリム”というものであった。着用してみると、フィット感が良く、重量バランスに優れているのを感じる。

スリムな仕立てであることに加えて、ケースバックの飛び出しも小さくてフラットに近く、ラグ部の浮きもほとんどない。ラグの浮きの小ささは、ブレスレットの可動域が広いことも効いている。さらに、バックル部にはバネ棒の取り付け位置変更による長さ調整機構を備え、1ノッチ約2.5mmで5段階(最大約1.2cm)の調整が可能であり、攻めたタイトフィットにも調整しやすい点も高評価だ。

また、薄いケースということはヘッド重量も軽くなり、本作の薄い仕立てのブレスレットでも重量バランスが取れている。結果、全体が軽量に仕上がっており、ブレスレット調整状態で筆者実測142gとなっていた。さらに、薄くなれば重量物が手首に近づき、慣性モーメントも小さくなる。これは着用して腕を動かした時の、実際の重量感を軽減する効果につながる。
以上を総合して、本作の着用感は優れており、満足感が非常に高い。
優れた視認性と実用性の高いムーブメント
本作は矢印型で大型な時針と、先端に向かって鋭くなる分針という形状の差が大きく取られたもので、明確に測時しやすい。また、位置によってトライアングル、ドット、バーとインデックスの形状を使い分けており、時計の向きを判別しやすい。ベゼル上の0分位置のドットと5分ごとに配されたインデックスにはイエローの蓄光が施され、暗所では視認性を助ける。これらから、本作の視認性は優れていると評価できる。

ムーブメントはミヨタ製のCal.9039を搭載する。パワーリザーブは約42時間と必要十分で、デスクワークでは有利とされる片巻き上げ式を採用する。厳密なテストはできなかったが、不足を感じない十分な実用性を備えていた。
用意されるバリエーション
スペンス300 オートマティックには、本作を含む3つのバリエーションが用意される。今回インプレッションしたのが、ブルーのサンレイ仕上げ文字盤にネイビーのベゼルインサートの組み合わせで、イエローの蓄光塗料が採用されている。この他、グリーンの文字盤とベゼルインサートにイエローの蓄光塗料の組み合わせと、ブラックの文字盤とベゼルインサートに、ホワイトの蓄光塗料の組み合わせである。ブラックモデルでは、“1000ft/300m”の表記と秒針先端のドットがレッドとなり、クラシックなダイバーズウォッチを思わせるディテールが採用される。
自動巻き(MIYOTA製Cal.9039)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.9mm)。各7万4800円(税込み)。
いずれのモデルも7万4800円(税込み)となる。この価格を考慮しながら本作を振り返ると、コンセプトの“高い防水性能と優れた着用感の両立”は実現できており、全体の重量バランスが優れていて、ケースの良好な仕上げや視認性の高さなど高評価だ。ケースとブレスレットのエンドリンクは一体感があり、これも見栄えに効いている。以上を総合して、本作の完成度は高く、スピニカーの手堅い時計作りを味わうことができる1本と評価できる。
スペンス300 オートマティックは、純粋に「欲しいなぁ」と思う完成度の高さ
最後に筆者の極めて個人的な感想を述べよう。スペンス300 オートマティックは、コンパクトで着用感に優れて、しかもハイスペックであるという、筆者の好みを直撃するものであった。それもあって、今回のインプレッションは述べるべきことが多く、早々に書き上がった。
では、レンタル期間の後半は何をしていたかというと、ネットショップを開き、手元のスペンス300 オートマティックと交互に見ながら「手を出しやすい価格だし買ってしまおうか」とか「買うなら、どのカラーが良いだろうか」などと眺める時間となった。筆者の好みと通ずるところがあれば「きっと気に入る」と言えるモデルである。店頭で手に取り、試着してみて、じっくりと悩んでほしい。





