ハミルトン「イントラマティック クロノグラフ H」で古き良きアメ車のような不器用さを楽しむ【着用レビュー】

2026.04.20

2026年にハミルトンのラインナップに加わった、「イントラマティック クロノグラフ H」のRef.H38429541を着用レビューする。手巻きクロノグラフという玄人好みのメカニズムを備える本機は、モータースポーツの黄金時代にインスパイアされた、レトロ調のデザインも大きな特徴となる。その使用感や各種ディテールについて、実際に1週間ほど手首に巻いた所見を述べていく。

ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H

新居賢人:写真・文
Photographs & Text by Kento Nii
[2026年4月20日公開記事]


アメリカンウォッチの雄・ハミルトンと「アメリカン クラシック」コレクション

 まずは、ハミルトンというブランドについて少し触れておきたい。1892年にアメリカ・ペンシルベニア州で創業した同社は、鉄道時計や軍用時計として名を馳せる一方で、大ヒットしたハリウッド映画の劇中で着用されるなど、アメリカの歴史やカルチャーとともに歩んできたブランドである。現在はスイスに拠点を移し時計製造を続けているが、ルーツにある開拓者精神は、今なおその時計作りに色濃く表れている。

 著名なコレクションには、モダンで端正な顔立ちの「ジャズマスター」や、ミリタリーウォッチに出自を持ち、“マーフウォッチ”としても名高い「カーキ フィールド」、電池式腕時計の先駆けという系譜であり、映画『メン・イン・ブラック』でも登場した「ベンチュラ」などが挙げられる。舶来時計としては比較的手の届きやすい価格設定も魅力であり、根強いファンの多いブランドだ。

 ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H
 ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H
ハミルトン「イントラマティック クロノグラフ H」Ref.H38429541
ヌバックレザーストラップに加えて、交換用のミラネーゼブレスレットが付属する。手巻き(Cal.H-51)。25石。毎時2万8800振動。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ14.35mm)。10気圧防水。32万4500円(税込み)。

 その多彩なラインナップの中でも、ブランドのヘリテージを継承し、文字通りアメリカのかつてのトレンドを辿るコレクションが「アメリカン クラシック」である。今回はその中から、とびきりアンティーク感あふれる2026年の新作モデル、「イントラマティック クロノグラフ H」のRef.H38429541について、実機レビューをお届けする。ちなみに、本作はブルーダイアルを採用するが、外周に向かって暗くなるグラデーションで彩られた「ハンターグリーン」「ウォームブラウン」の2色も同時にリリースされている。


マットブルーが映える、手巻きの「イントラマティック クロノグラフ H」

 2021年にデビューした「イントラマティック クロノグラフ H」は、1968年発表の「クロノグラフA(もしくはB)」をリバイバルした、手巻きクロノグラフウォッチシリーズだ。ファーストリリースでは、オリジナルのそれを彷彿とさせる“パンダ”あるいは“逆パンダ“デザインのモデルが登場していたが、Ref.H38429541はそのラインナップに加わったばかりのニューフェイスである。

 デザインのテーマとなったのは、1960年代から1970年代初頭までのモータースポーツ黄金時代だ。あえて彩度を落としたマットなブルーダイアルを採用し、オレンジのアクセントを組み合わせることで、レトロスポーティーな顔立ちに仕上げている。これは、当時を代表するマッスルカーたちの外装や、ダッシュボードのタコメーターを強烈に想起させる意匠であり、同年代に誕生した「クロノグラフ A」の系譜であるイントラマティックの造形に、驚くほど良く馴染んでいる。

ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H

オレンジのアクセントは、クロノグラフに用いるセンター針と、ふたつのインダイアルの針にのみ施されている。当時のマシンのダッシュボードで存在感を放っていた、判読性抜群の針を思わせる意匠である。また、それぞれのインダイアルには、サーキュラー装飾が施され、メインダイアルとの視覚的なギャップが与えられた。

 横目ふたつのバイコンパックスレイアウトも、この時計の味わい深い印象を強める要素だ。スモールセコンドと30分積算計のみのシンプルな構成で、ノンデイトという潔い設計もたまらない。また、フランジ部にはタキメーターが記されており、その上をかつてのアクリル風防を思わせるボックス型のサファイアクリスタルが覆っている。復刻的なディテールとしてだけでなく、オリジナルから耐傷性を大きく高めた、着実なアップデートである。

ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H

直径40mmのケースは、全面がポリッシュで仕上げられており、クロームメッキが多用されたヴィンテージカーように、艶やかな輝きを放つ。

 加えて、ケースには、大ぶりのリュウズやピストン型のプッシャーが配置されたほか、パンチング加工のヌバックレザーストラップが組み合わされており、モーターレースへのオマージュが腕時計全体に見受けられる。クラシックウォッチの愛好家やレースファンであれば、引かれる箇所の多い1本と言えるだろう。


機能面はモダンにアップグレード

 近年のリバイバルモデルは、外装をオリジナルに近づけつつ、内部には最新のムーブメントや技術を投入し、現代のスペックにリファインしているものが多い。今回の新作もその例に漏れず、「カーキ」コレクションを筆頭に、タフな実用時計を手掛けてきたハミルトンのノウハウが生きている。例えば、ケースには10気圧防水が備わっており、日常使いで起こりうる水濡れなどのリスクへもしっかりと対応する。

ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H

時分針、インデックスには蓄光塗料が施されており、暗所での視認性も確保されている。

 ケース内部には、ETAのCal.A05.291をベースとしたエクスクルーシブムーブメント「Cal.H-51」を搭載。ヒゲゼンマイには、合金素材「ニヴァクロン(Nivachron)」が使用されており、優れた信頼性が確保されている。また、約60時間のパワーリザーブを有しており、手巻き式腕時計にとって、一度主ゼンマイを巻き上げれば2日ほど放置しても動き続けてくれる点はうれしい。

 なお、本機のクロノグラフは、振動ピニオンと作動カムの組み合わせを採用している。プッシャーの操作には多少力をこめる必要があったが、計測の確実なスタート&ストップが可能であった。


徹底したレトロ感の追求と、賛否が分かれる「装着感」

 ここまで、同モデルの味わい深い外観や堅実な機能性に触れてきたが、手首に着けた際のフィット感については、決して良好とは言えない。

ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H

筆者の手首回りは16.5cm。手元とのバランスには違和感はない。

 ケースのサイズは、直径40mm、厚さは14.35mmだ。数値上は至って平凡だが、過去の「アメリカン クラシック イントラマティック オート クロノ」のレビュー記事(参考リンク:https://www.webchronos.net/features/139696/)でも言及があったように、ラグの取り付け位置が手首から遠く、どうしても腕時計と肌との間に空間が生まれてしまうのだ。自身の手首が細いせいかとも思ったが、手首回り18cmの人に着用してもらった際も同じ感想が出たため、この装着感については大きく好き嫌いが分かれるポイントになるだろう。もう少しラグが手首に沿うように付いているだけで、いくらか改善しそうなものだが。

ハミルトン イントラマティック クロノグラフ H

きつくしめても、写真のように手首からケースが浮いてしまう。振られるような感覚はなかったが、身に着けていてどこか収まりが悪く、落ち着かない印象だった。

 また、付属のレザーストラップがかなり長く、一番タイトな穴で締めても腕時計が手首の上で回りそうなほどの間隔があった。本作はレザーに加えてミラネーゼブレスレットが付属する、いわゆるバンドルキットとして販売されているため、16cmほどの手首回りの人は、ぜひこちらへの付け替えも検討してもらいたい。

ストラップを最も短いところで留めても、指1本が入るくらいのスペースができてしまう。


総評:不器用さも愛おしいマッスルな1本

 さて、フィット感については少々辛口になってしまったが、よくよく考えてみれば、人間工学に基づいた柔らかな形状というのも、この時計の武骨なキャラクターには似つかわしくないように思う。というのも、本作は、アメリカのクラシックなマッスルカー、いわゆる古き良き“アメ車”のようなコンセプトを持つからだ。

 筆者はにわかではあるが、クラシックカーのカスタムショップを取り上げたアメリカのリアリティー番組が好きで、アーカイブをよく見返している。劇中には、大柄なボディにパワフルなエンジンを積んだ、お手本のようなアメ車が多く登場する。それらは広大な国土をひたすら直線に走ることを見据えて設計されているため、ステアリングの遊びが大きく、カーブを曲がるのは大の苦手だ。おまけに燃費はあまりに悪く、部品のチリ(隙間)が合っていないなど、現代の車では考えられないような、尖りすぎた結果どこか不器用な車が多い。

 それらの車に対して、カスタムショップのメンバーたちは、親しみを込めて“ワル”と呼んでいる。彼らは、不器用でありながらも最先端のEVにはない魅力を備えた車たちを愛し、当時の佇まいを色濃く残しつつ、現代のテクノロジーを用いて“日常で乗れる車”へとタフに仕立て直しているのだ。

 今回レビューしたRef.H38429541からもまた、アメリカンクラシックというテイストを徹底的に追求したことで生まれた、そういった「愛すべき不器用さ」と現代的なテクノロジーの共存が見て取れた。往年のデザインや仕様を突き詰めたその強烈な個性は、手巻きの手間や人を選ぶ装着感などを補って余りある、大きな魅力と言えるのではないだろうか。

 深いことを考えず、日々のライダースタイルやヴィンテージライクなアメカジファッションに、ラフに合わせてみたくなる。このクロノグラフウォッチは、そんな男のロマンを激しくくすぐるタイムピースであった。

Contact info: ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371/center>


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