ROGER DUBUIS 最速を象るムーブメントテクノロジー

2017.12.04
ダイヤモンド

エクスカリバー アヴェンタドールS
ランボルギーニを象徴する“ジャッロ・オリオン”(イエローカラー)をあしらった88本のリミテッドエディション。エクスカリバー独自の軽量なレイヤードカーボンは、ケース部分とベゼル部分で積層方向を変えることで、重厚さを加味している。手巻き(Cal.RD103 SQ)。カーボン(直径45mm、厚さ14.05mm)。5気圧防水。2160万円。
鈴木裕之:文 Text by Hiroyuki Suzuki

[エクスカリバー アヴェンタドールS]

 2017年9月20日。イタリア・ボローニャ近郊のサンタガタで、衝撃的なパートナーシップが発表された。
ランボルギーニのレーシング部門であるスクアドラ・コルセと、前衛的なプロダクトで知られたロジェ・デュブイが手を結んだのである。
初作となった“アヴェンタドールS”には、新規開発のデュオトールキャリバーを搭載。本気のR&Dを見せつけた。

Cal.RD103 SQ

 クルマ好きは時計好き、であるらしい。時代を問わず、自動車メーカーと時計ブランドのコラボレーションはことのほか多く、独自にリサーチしてみたところ、現状11組ものパートナーシップが結ばれているようだ。そうした中で、ランボルギーニが新たなパートナーとして手を組んだのはロジェ・デュブイであった。同社は2017年初頭にピレリ(F1への公式単独供給を行うタイヤサプライヤー)、続いてイタルデザイン(ジョルジェット・ジウジアーロが設立した自動車専門のカロッツェリア)との提携を立て続けに発表し、この分野における台風の目になりつつある。

 しかしランボルギーニ スクアドラ・コルセ(同社のモータースポーツ部門)との新たなパートナーシップが、R&Dの〝本気度〟を一段と押し上げたのは間違いない。17年9月20日、イタリア・ボローニャのランボルギーニ本社で行われたワールドプレミアでお披露目された「エクスカリバー アヴェンタドールS」には、既存のバリエーションではない新型ムーブメントが搭載されていたのだから。

  〝パワード・バイ・レーシングメカニクス〟のシグネチャーを添えた新型ムーブメント「RD103 SQ」は、通称デュオトールキャリバーと呼ばれるランボルギーニ専用機。香箱から一直線に伸びる輪列や、香箱受けの上に配されたクロスメンバーなどは、かなりの全長を持つV12エンジンを象ったものだと想像が付く。ならば同社が最も得意とする〝モダンスケルトナイズ〟をあしらった地板がシャシー、テンプ周りがホイールやサスアームといったところだろうか。

ランボルギーニ専用に開発された新型ムーブメント。クアトゥオールのコンパクト版とも言えるダブルバランスと、V12エンジンを象った造形の調和が見事だ。ジャンピングセコンド化されたセンター秒針も読みやすい。直径16リーニュ、厚さ7.80mm。48石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。

 ただしRD103 SQが、単なる〝スタイリングムーブメント〟でないことは、傾斜角が付けられたダブルバランスホイールを見れば明らかであろう。技術的な系譜で言えば、RD103 SQは「RD101」(クアトゥオール)のコンパクト版とも言える内容を誇っている。重力の影響を打ち消す方向で、対称位置に配置されたふたつのテンプはディファレンシャルギアを介して連結され、平均化された精度を供給してくれる。なお公式資料では、このテンプの振動数が5万7600振動/時(4㎐×2)とされているが、理論的にはあくまで2万8800振動/時である。テンプがふたつあろうが、4つあろうが、振動数自体が倍加することはない。デュオトールの主眼は、双方のテンプが生み出す振幅のズレ(主にヒゲゼンマイの巻き出し位置と、伸縮方向の違いに起因する重力の影響=姿勢差誤差)を平均化することにあるのだ。

 レーシングイメージを想起させるカーボンボディに、独特なジャッロ・オリオンをあしらった〝最速の造形美〟。だがその本質は、あくまで高精度の追求なのだ。

チェントロスティーレ(デザインセンター)での発表会に続き、アヴェンタドール製造ライン上でのセレブレーションディナーなど異色の展開となったワールドプレミア。テストコースも貸し切りにされた。

Contact info: ロジェ・デュブイ ☎ 03-4461-8040