フランス・パリで創業したトリローブ。同ブランドが2018年にリリースした最初の製品は、針を持たない独創的な表示機構を備えた「Les Matinaux(レ・マティノー)」であった。以来、その独創性をコンセプトにコレクションを拡充してきたトリローブは、ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2026で、新作「トランテ・ドゥ」を発表する。従来モデルのカラーバリエーションとなる本作の特徴とは? 実機の撮り下ろし写真とともに解説する。

自動巻き(Cal.X-Nihilo)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ10.15mm)。5気圧防水。2万1000ユーロ(税込み)。
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
細田雄人(クロノス日本版):写真
Photographs & by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)
[2026年9月XX日公開記事]
日本での取り扱いもスタートしたトリローブの新作
フランス・パリ発の時計ブランド、トリローブをご存じだろうか? 2018年にリリースした同社初の腕時計「Les Matinaux(レ・マティノー)」以来、独創的な時間の表示機構を採用し続けてきたブランドである。通常の時計が針を使って時・分・秒を示すのに対して、トリローブの時計は文字盤の外周ディスクで時を、文字盤にオフセットされたディスクで分と秒を表示させるというスタイルであるのだ。この表示を採用するのは、「世界に絶対はない!」とし、何世紀にもわたって「針を使って時刻表示を行う」という時計の常識に対して問いを投げ掛け、その新たなる答えを製品として回答することで、「違いを愛する」というコンセプトを貫いているためだ。なお、初作品のLes Matinauxは、同年のジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(GPHG)の「Petite Aiguille(小さな針賞)」にノミネートされた。

現在はメタル製ブレスレットまたはラバーストラップを備えて2019年に登場した「Trente-Deux(以下トランテ・ドゥ)」が、現行コレクションとして展開されている。また、2026年に入って日本でノーブルスタイリングが正規取り扱いを開始。実機を見る機会を得る読者もいるだろう。
そんなトリローブは、スイス・ジュネーブで行われるふたつの新作時計見本市に参加している。ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブとジュネーブ・ウォッチ・デイズ(以下GWD)だ。このうち、9月2〜6日まで開催されたGWDでトリローブはバーガンディーカラーの文字盤を備えた新作を発表。本作の特徴を紹介していく。
他社と明確に差別化された意匠

トリローブ自身も「違いを愛する」を標榜するように、本作の、そしてトリローブの最大の特徴は、他社と明確に差別化された意匠である。その独創性は、もちろん表示形式に依るところが大きい。針を持たないというキャラクターは強烈で、文字盤だけ見たらすぐに時計とは気付かないのではないだろうか。
加えて、ディテールにも独創性が宿っている。初代モデルから受け継がれる外周のアワーディスクにブランドロゴによるポインターアワー、そしてオフセットされたふたつの小窓のほかは、文字盤の大きい部分に機能が何もない。その余白に「物足りなさ」は感じられず、むしろこの余白がトリローブウォッチをアイコニックに仕立てることに寄与していると言える。
また、トリローブロゴや小窓には、機械加工によるポリッシュと細かなヘアライン仕上げが与えられている。外周および分ディスクには梨地仕上げが、秒ディスクには中央にギヨシェ風パターンが、外周部分にアジュラージュ仕上げが施されている。余白が大きいながら文字盤に奥行き感を覚えるのは、この小窓や仕上げ分けの存在が大きいだろう。パッド印刷によるホワイトのアラビア数字はエレガント。なお、分ディスクのアラビア数字は5分ごとの表示となっており、針がないというスタイルと相まって、判読に慣れが必要で、細かな時刻はやや分かりにくい。
サンレイ仕上げが施されたマットな文字盤は、新色となるボルドーが採用された。これまでもグリーンやブルーといった、多彩なカラー展開がなされていたが、新色の追加でさらに独創性に磨きがかかっていると感じられた。
安定した品質が最大の美点

本作、そしてトリローブの実機を見ていつも思うのが、クォリティの高い外装品質だ。前述した文字盤のパーツの仕上げ分けはもちろん、ケースやブレスレットも細かい部分まで仕上げ分けがされており、近年のトレンドのひとつとはいえ、高級腕時計のセオリーが踏襲されている。ブレスレットの裏側も滑らかに仕上げられており、肌触りは良好だ。美観としての仕上げ、機能としての仕上げ、どちらも両立されており、メガブランドではないにもかかわらずこのように品質が安定して高いことも特筆すべき点だ。
本コレクションに名付けられた「トランテ・ドゥ(32を意味する仏語)」は、トリローブのクリエイティブスタジオ兼時計工房がパリ・オペラ32番地に位置することに由来する。その工房で、初めて構想、設計、開発、試作、加工、装飾、組み立てを行って出来た自動巻きムーブメントCal.X-Nihiloが搭載されており、このムーブメントもまた他社とは違った、どこか往年のブレゲの懐中時計を思わせるような有機仕上げや建築を思わせるブリッジが配されており、クォリティへの矜持を感じられる要素のひとつとなっている。

コレクションの拡充にも期待
トリローブがGWDで発表した、バーガンディーカラーの文字盤を備えたトランテ・ドゥを取材のうえ、そのディテールを報告した。
日本への入荷についてはまだ発表されていないが、価格は従来からあるSSモデル(国内の税込み価格は396万円)と同様であったことも追記しておく。
近年、新興の独立系ブランドが増えている中、独創的な意匠と高いクォリティを有した本作は、時計愛好家に良い選択肢を与えてくれる存在となるに違いない。一方、現在はこのトランテ・ドゥを中心にラインナップが構築されており、以前にあった革ベルトモデル等は生産していないのだという。この革ベルトモデルも、トリローブのドレッシーなスタイルにマッチするので、今後のブランドの成長に伴い、バリエーションやコレクションのさらなる拡充にも期待したい。



