Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)
2018年8月27日、IWCの新工場である「マヌファクトゥールツェントルム」が完成し、国内外の関係者にお披露目された。場所は、シャフハウゼン郊外のメリシャウゼン。IWCはシャフハウゼンとノイハウゼンに製造拠点を設けていたが、生産効率の改善を図るべく、メリシャウゼンの新工房に自社製ムーブメントとケース製造部門を集約した。工場の延べ床面積は1万3500㎡。地階にはケースの製造部門が、1階には自社製ムーブメントのパーツの製造と組み立て部門が、2階にはカフェテリアが設けられている。8月29日現在の従業員数は250名だが、400名まで収容できる。
最新の工作機械を揃えた本工場には、いくつかの特徴がある。ひとつは、間仕切りの位置を変えることで、スペースをフレキシブルに使える点。これはリシュモン グループの新しい工場に共通する特徴だが、マヌファクトゥールツェントルムでは、いっそう推し進められた。
もうひとつの特徴は、極めて短い動線である。生産時間を短縮するため、ケース製造、ムーブメント製造の部門ともに、移動距離を短くしている。また、管理部門も同じ工場内に設けられたため、問題の解決も容易になるとのこと。
ただ、他にない最大の特徴は、見せることを前提としたという点だ。COOのアンドレアス・ヴォル氏曰く「新工場には年1万人は呼びたい。そのため、生産体制を見直すだけでなく、見せることも考慮した」という。ちなみに顧客が訪問できる工場は、スイスや日本にも少なくない。しかし、IWCのマヌファクトゥールツェントルムは、ガラス越しに生産ラインを見るのではなく、生産ラインの中を歩くことができる。ヴォル氏が「隠すことは何もない。私たちは顧客にすべてを見せたかった」と語ったとおり、実際に作っている現場を、ダイレクトに見られるわけだ。IWCのオーナーにとっては、またとないサービスだろう。また、工場内にはケースの磨きや、時計師の体験コーナーも設ける予定とのこと。
顧客に見せる工場にすべく、ほとんどの工作機械はグレーまたは白色に塗り直された。また、溶剤や油などの臭いをシャットアウトするため、工場全体に、ISOでいうところのクラス7相当の空気循環システムが入れられた。
現在、IWCでは顧客向けのツアーを検討中である。参加費用などはまだ未定。詳細は、10月3日発売のクロノス日本版で明らかにする予定だ。
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