【速報】IWC、メリシャウゼンに新工場「マヌファクトゥールツェントルム」を落成

2018.08.31

工場は、シャフハウゼン近郊のメリシャウゼンにある。投資額は約4200万スイスフラン。CEOのクリストフ・グランジェ・ヘア氏曰く「この150年で最大の投資」とのこと。最新鋭の工作機械に加え、年間27万5000キロワットを発電する太陽光発電システムや、地下水を利用した冷暖房設備を備える。
広田雅将(クロノス日本版) 取材・文
Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)

 2018年8月27日、IWCの新工場である「マヌファクトゥールツェントルム」が完成し、国内外の関係者にお披露目された。場所は、シャフハウゼン郊外のメリシャウゼン。IWCはシャフハウゼンとノイハウゼンに製造拠点を設けていたが、生産効率の改善を図るべく、メリシャウゼンの新工房に自社製ムーブメントとケース製造部門を集約した。工場の延べ床面積は1万3500㎡。地階にはケースの製造部門が、1階には自社製ムーブメントのパーツの製造と組み立て部門が、2階にはカフェテリアが設けられている。8月29日現在の従業員数は250名だが、400名まで収容できる。

1階にあるマヌファクトゥールツェントルムのレセプション。一般客の訪問を考慮して、ブティックのような作りになっている。天井高は9メートル。訪問客は、左側のドアから工場内に入れる。

 最新の工作機械を揃えた本工場には、いくつかの特徴がある。ひとつは、間仕切りの位置を変えることで、スペースをフレキシブルに使える点。これはリシュモン グループの新しい工場に共通する特徴だが、マヌファクトゥールツェントルムでは、いっそう推し進められた。

 もうひとつの特徴は、極めて短い動線である。生産時間を短縮するため、ケース製造、ムーブメント製造の部門ともに、移動距離を短くしている。また、管理部門も同じ工場内に設けられたため、問題の解決も容易になるとのこと。

 ただ、他にない最大の特徴は、見せることを前提としたという点だ。COOのアンドレアス・ヴォル氏曰く「新工場には年1万人は呼びたい。そのため、生産体制を見直すだけでなく、見せることも考慮した」という。ちなみに顧客が訪問できる工場は、スイスや日本にも少なくない。しかし、IWCのマヌファクトゥールツェントルムは、ガラス越しに生産ラインを見るのではなく、生産ラインの中を歩くことができる。ヴォル氏が「隠すことは何もない。私たちは顧客にすべてを見せたかった」と語ったとおり、実際に作っている現場を、ダイレクトに見られるわけだ。IWCのオーナーにとっては、またとないサービスだろう。また、工場内にはケースの磨きや、時計師の体験コーナーも設ける予定とのこと。

 顧客に見せる工場にすべく、ほとんどの工作機械はグレーまたは白色に塗り直された。また、溶剤や油などの臭いをシャットアウトするため、工場全体に、ISOでいうところのクラス7相当の空気循環システムが入れられた。

地階のケース製造部門。左手には素材が、右には工作機械が置かれる。訪問客は、グレーのラインを通って、工房内を回遊できる。なお、ほとんどの機械がグレーに塗られているのは、CEOのグランジェ・ヘア氏の好みによるらしい。

2階にある、ムーブメント製造部門。左の工作機械では、52系や82系といった、基幹ムーブメントの地板や受けなどを切削する。製作した部品は、隣の組み立て部門に回される。

ムーブメントの組み立て部門は完全なクリーンルームのため入室不可。代わりに、時計師の体験ができるコーナーが設けられた。白衣を着て、自社製ムーブメントを触ることができる。

 現在、IWCでは顧客向けのツアーを検討中である。参加費用などはまだ未定。詳細は、10月3日発売のクロノス日本版で明らかにする予定だ。


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