【Apple Watch 5詳報】“深化”のジェネレーション。業界を超えて周囲を巻き込み始めたApple Watch

FEATUREウェアラブルデバイスを語る
2019.09.18

高級ライン「EDITION」の復活

 さらに、series 4でいったんは廃止となった高級ライン「EDITION」を復活させた。

 EDITIONは、初代モデルでは18Kゴールドケースが採用されて話題となったが、series 2からはセラミックケースを採用。series 3ではカラーバリエーションとしてホワイトセラミックスに加えてスペースグレーセラミックスが追加されていたが、今回採用されたのはセラミックスとチタンである。カラーリングは前者がホワイトのみ、後者はノーコーティングのカラーとスペースブラックの2バリエーションである。チタンケースはブラシ処理によるヘアラアイン仕上げがされており、スペースブラックには経年変化に強いDLCコーティングが施されている。なお、DLCコーティング自体は、これまでSSケースのスペースブラックで用いられていたものと同じだ。

Apple Watch series 5 チタン

チタンケースモデルは写真のブラッシュ仕上げのほかに、DLCコーティングがされたスペースブラックモデルが用意される。掲載モデルの構成であれば40mmケースで8万2800円(税別)、44mmケースで8万7800円(税別)だ。

 スポーツやフィットネスなどアクティブなシーンで使われることも多いApple Watchだが、軽量なアルミケースモデル(40mm/44mmモデルがそれぞれ30.8g/36.5g)はディスプレイにイオン加工で強化したIon-Xガラスを採用。ステンレススティールモデル以上にはサファイアクリスタルが奢られるが、重さはSSモデルで40.6g/47.8gと10g前後増量してしまう。

 対するチタンケースモデルは、サファイアクリスタルを採用した上で35.1g/41.7gと、アルミケースモデル比で約5gの重量増に収まる。価格面でもSSモデルに対して40mmモデルで1万円のプラスと、差は最小限に収めた。

 ちなみにセラミックケースモデルはそれぞれ39.7g/46.7gで、ほとんどSSモデルと変わらない。

 なお、セラミックケースモデルは以前から、ガラス面とケースのチリが合っていないことが気になっていたのだが、今回もそれは同じ。若干の段差がありセラミックスの表面がほんの少し高い。アップルは“加工上の制約”としているが、あるいは強度を確保した上でApple Watchのシステムを収めるには、外形を大きくする必要があるのかもしれない。

 これらに加え、アルミケースに専用カラーのバンドとウォッチフェイスを組み合わせたナイキモデル、ステンレススティールケースに専用バンドとウォッチフェイスを組み合わせたエルメスモデルが用意されるのも従来と同じだが、エルメスモデルは伝統のテキスタイル模様をプリントした新しいレザーバンドが加えられた上、本体のカラーリングにスペースブラックが追加された。

 エルメスのヴォー・スイフトを用いた上質なレザーバンドは、これまでの単色系だけではなくシンボルでもある馬具のテクスチャをあしらったバリエーションも加えられ、黒いケースの導入とともにエルメスとのコラボレーションが、以前よりも深いものになっていることが伺える。

 このほか、アップル純正バンドにもステンレススティールケースの色に合わせたジョイント部のバリエーションが用意されるようになり、Apple Watch全体のSKU(商品出荷単位)は激増した。グローバルで最も多くの人が購入する腕時計となったApple Watchとはいえ、これにはアップルもさすがに苦労しているのではないだろうか。

Apple Watch Studio

なお、ネット販売およびApple Store店頭で本体とバンドを自由に組み合わせ、パッケージした上で販売するApple Watch Studioが日本でも9月20日(金)から始まる。

Apple Watch Studio

ケースサイズにはじまり、ケース素材とカラー、そして豊富なストラップ/ブレスレットを組み合わせ(上写真)、完了ボタンを押すと確認ページ(下写真)に飛ぶ。確認ページでは選んだ構成の最終確認とともに、GPSモデルかGPS+セルラーモデルかの選択ができ、問題がなければそのまま購入手続きへと進められる。なお、所有するApple Watchの下取りやAppleCare+の加入もこの際に選ぶことができる。

Apple Watch Studio

旅行先での緊急通報に対応

 だから……というわけではないだろうが、ステンレス以上のバリエーションは、すべてセルラー内蔵。携帯電話ネットワークに接続する「セルラー機能」を内蔵しないGPSモデルは、アルミケースのみにしか用意されなくなった。

 こうした措置の背景には、EDITIONに3つのバリエーションが追加されたことがあるのかもしれない。しかし、アルミモデル以外のモデルが全てセルラー内蔵となったのは、単にSKUを減らすことだけが目的ではない。

 series 5になってApple Watchはセルラー契約がなくとも、緊急時の連絡が可能になったのだ。あらかじめ設定したメディカルIDにGPS情報を加えて発信するとともに、緊急連絡先に音声コールもできる。例えばトレッキング時に道に迷ったとする。そんな場合にも、回線契約なしにサイドボタンを押し続けるだけで、自分がいる位置や個人を特定する情報とともに緊急回線に連絡ができる。

Apple Watch Series 5

 また同時に、海外での緊急通報も可能となった。こちらは単純に電話のみでの連絡となるが、回線契約がなくとも世界150カ国で利用することが可能だ。

 携帯電話ネットワークに繋がるスマートウォッチはほとんどないが、アップルはおそらく、今後全てのApple Watchをセルラーモデルにしたいと考えているのだろう。そうすることでセルラーモデルのコストを下げ、また非常時の連絡手段を利用者に対して常に提供できるようになるからだ。

 昨年は転倒や落下を検出し、非常時通報を行う機能が追加されたが、当然ながら転倒検出時にも、この緊急通報機能は機能する。契約なしでの緊急連絡が可能となったことで、Apple Watchの転倒検出機能は以前にも増して大きな意味を持つこととなった。