一流のセレブたちは一体どんな腕時計を選ぶのか? 世界のセレブたちのワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は日本を代表する世界的作家、村上春樹の腕時計をご紹介しよう!
村上春樹
1949年、京都市伏見区出身の村上春樹。2006年には世界文学へ貢献した作家に送られるフランツ・カフカ賞をアジア圏で初めて受賞し、またノーベル文学賞にも何度もノミネートされるなど、日本のみならず世界からも注目を集める作家だ。1979年に処女作『風の歌を聞け』で群像新人文学賞を受賞して以来、1987年の『ノルウェイの森』、1988年『ダンス・ダンス・ダンス』から、近年では2013年『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』などヒット作を送り出し続けてきた。これらの作品に共通していることとして、腕時計の描写が具体的にされている点がある。それでは実際の彼はどのような腕時計を選ぶのだろうか? 今回は村上氏の写真から、2009年にバルセロナで撮られたものを選んでその手元をクローズアップしてみた。
写っていたのはスペイン語で「レース」を意味するモデル、タグ・ホイヤーの「カレラ」だ。
タグ・ホイヤーの知名度を、現在までに押し上げた要素を語る上で欠かせないのが、1964年にリリースされた「カレラ」だ。そのヒットは同社(当時はまだ社名をホイヤーとした)の成長を象徴するように、モーターレースの世界と深く結び付きながら幅広い展開を見せた。一時は製造が途切れた時期もあるが、その存在が見直され、1996年に復活を遂げる。復活後もしばらくはクロノグラフ搭載モデルとしてオリジナルになぞらえた展開を続けたカレラだったが、ETAキャリバーを搭載した3針モデルとして発表され周囲を驚かせたのが、村上氏の着用するこのカレラ第7世代だ。2000年に発表されたモデルであり、同年はタグ・ホイヤー創業140周年という節目の年であった。つまりタグ・ホイヤーのファンにとって記念すべき年にリリースされたモデルだったのである。村上氏が自動車好きであるということを筆者はこの時計を通して初めて知った。
村上氏が自伝的エッセイ『職業としての小説家』の表紙で着用しているモデルはおそらくこれだろう。なお『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』では、主人公が着用する「父親から引き継いだ、1960年代初期に作られた美しいアンティーク」腕時計としてホイヤーのブランド名が明記されている。