【インタビュー】ベル&ロス共同創設者兼クリエイティブ・ ディレクター 「ブルーノ・ベラミッシュ」

FEATURE本誌記事
2019.11.04
三田村優:写真 Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

気鋭のデザイナーが語るウォッチデザインと装着感のヒント

 今のデザイントレンドは、薄型、小型化、スポーティーである。ケースサイズはさておき、それを先取りしてきたのが、ベル&ロスとそのデザイナーのブルーノ・ベラミッシュである。スポーティーデザインの先駆者として、彼は今のトレンドをどう感じているのだろうか?

ブルーノ・ベラミッシュ

ブルーノ・ベラミッシュ 1965年、フランス生まれ。
ベル&ロス共同創設者兼クリエイティブ・ディレクター。友人のカルロス・A・ロシロと共に、1994年にベル&ロスを創業した。当初はドイツのジンの協力を仰いでいたが、97年にオリジナルモデルを発表。2005年の「BRシリーズ」で、一躍世界的なウォッチメーカーの仲間入りを果たした。なお、好きなデザイナーはジャスパー・モリソンとアルネ・ヤコブセンとのこと。彼らのミニマリズムは、なるほどベラミッシュに共通する。

「私たちがトレンドに先駆けて早くから仕掛けてきたのは事実だ。ベル&ロスはファントムでオールブラックを手掛けた。確かに2007年の発表時、ブラックケースは存在していたが、当時は廃れていた。原点回帰のヴィンテージも同様だね。それとトレンドを語るなら、洗練も加えたい。もっとも、こういうトレンドには周期がある。それと父の時代は選択肢が少なかったが、今は何でも選べるようになった。ミリタリー、クラシック、スポーツ、何でもある」

 果たして、ベラミッシュはどうやって、ハードなプロ用のウォッチデザインをソフトランディングさせたのだろうか?

「デザイナーとして重要なのは、自由に表現することだと思っている。それと期待を超えるものを提供していくこと。ブランドが革新的なことをやるのは怖い。だが、あえて挑戦するのがベル&ロスだと思っているし、実際、私たちには自由が多い」

 もうひとつ挙げたいのは、装着感への配慮だ。彼は話を続ける。

「他ブランドの時計を見ることも多いが、写真ではいいと思っても腕に載せるとイマイチだったりする。このX1は、大きく見えても装着感が良い。というのも、ラグを落とす形状にして、時計の重心を下げているからだ。私は腕が細いのですぐにベルトが落ちるのはいいね」。また彼は、厚みを抑えることの重要性も語った。「制約はあるものの、厚みを抑えるのは大事だ。ボックスサファイアの採用もケースを薄くできる」。

 ミリタリーとプロフェッショナルをベースに、自由に創作を続けるベラミッシュ。どうも彼のデザインスタンスは、トレンドを意識しているようで、それを超えたところにあるようだ。

「私たちベル&ロスには視認性やクォリティといった基準はある。ただひとつのカテゴリーにとどまることはやっていないし、自由にクリエイションを羽ばたかせたい。統一性と一貫した姿勢は必要だが、これらすべてをうまくまとめるのは難しい」

 今はヴィンテージよりもコンテンポラリーに興味があると語るベラミッシュ。今後、どういう時計を作るつもりだろうか?「すぐにできるとは思わないが、複雑時計は作りたいね。もちろん、ブランドが大事にしている高い視認性や大きなインデックス、表示方法などを押さえた上でね」

BR-X1 R.S.19

ベル&ロス 「BR-X1 R.S.19」
ルノーF1チームとのコラボレーションモデル。ケースにチタンとラバーインサート付きセラミックスを採用し、文字盤をオープンワークにすることでムーブメントの内部を見せる。BR-X1の人間工学に基づいたデザインに加え、ベラミッシュが語る通り、短いラグと低重心が優れた装着感をもたらす。自動巻き(BR-CAL.313、ETA2894A2ベース)。56石。2万8800振動/時。Ti×セラミックス(直径45mm)。100m防水。限定250本。予価239万円。


Contact info: ベル&ロス ジャパン Tel. 03-5977-7759