日本オリンピック委員会会長を務める柔道家、山下泰裕が選ぶ腕時計は?

一流のセレブたちは一体どんな腕時計を選ぶのか? 世界のセレブたちのワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は、日本オリンピック委員会(JOC)会長を務める柔道家、山下泰裕が選ぶ腕時計を紹介しよう!

山下 泰裕

山下泰裕

Photograph by AFLO

 1957年、熊本県生まれの柔道家、山下泰裕。東海大学副学長、全日本柔道連盟会長、日本オリンピック委員会常務理事・選手強化本部長などの重職を兼務する彼はどんな腕時計を愛用しているのだろうか。

 写真は2019年8月に世界柔道選手権の表彰式で撮られた1枚だ。その手元を見てみよう。

SBGA211

 白ダイアルに際やかに映えるインデックスとドーフィン針、7~8時位置のパワーリザーブ表示といった特徴が見て取れる。これはグランドセイコーの「SBGA211」だ。


グランドセイコー「SBGA211」

SBGA211

Ref.SBGA211。自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R65)。30石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径41mm、厚さ12.5mm)。日常生活用強化防水(10気圧防水)。62万円(税別)。

 世界的な知名度を誇るセイコーが培ってきた技術の粋を集めて生まれたグランドセイコー。「SBGA211」には同社を象徴する大きなふたつの特徴が備わっている。まずは、セイコー独自の駆動機構「スプリングドライブ」の搭載だ。平均月差±15秒、日差にして±1秒に相当する高精度は、セイコーテクノロジーの集大成である。スプリングドライブは1998年に発表され、グランドセイコーには2004年より採用されている。
 続いて、グランドセイコーにスプリングドライブが搭載された翌年に完成した「雪白」文字盤だ。スプリングドライブの故郷、信州の雪山に見られる風紋の刻まれた雪を再現した文字盤は、グランドセイコーが試行錯誤の末に到達した美意識の結晶である。これはプレスして繊細な凹凸を打ち出した真鍮プレートに、ミクロン単位で銀メッキをかけて作られたものだ。銀の採用によって文字盤上に立体的に表現された稜線を維持し、かつ可視光の反射率が金属中最大である性質を用いて「白」の色味が生み出されている。文字盤の純白と、なめらかにスイープ運針するブルースティール秒針の織りなすコントラストは、美を追究するグランドセイコーの研鑽のたまものだ。 

 ケースとブレスレットの素材は、ステンレススティールに比べて約30%軽量で耐傷性、耐食性に優れるブライトチタンだ。これだけの要素を盛り込んで60万円台という価格には思わず頭が下がる。

 山下のハイセンスな時計選びに、筆者は彼の良好な夫婦関係を感じている。妻はかつて銀座・和光の販売員だった女性だ。彼女の指南の下、山下の審美眼は鍛えられたのかもしれない。


高井智世


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