W杯2026で覚醒した鎌田大地。世界を驚かせる司令塔が選んだ静かな腕時計

FEATURE WatchTime
2026.06.28

オランダ戦での“1ミリゴール”、チュニジア戦でのW杯日本史上最速・開始4分の先制弾と連続ゴールで今大会の台風の目となった鎌田大地。スウェーデン戦こそ1-1のドローとなり3試合連続弾はならなかったが、次なるブラジル戦へ向けて視線はすでに定まっている。愛されキャラの内側に秘めた鋼のメンタルと、彼が愛用するパルミジャーニ・フルリエの時計がまとうクワイエットラグジュアリーな雰囲気……ふたつの静かなる強さが共鳴する男の素顔を追う。

鎌田選手

写真提供:東京スポーツ新聞社
2025年11月18日、国立競技場で開催されたキリンチャレンジカップ(日本×ボリビア戦)。前半4分に先制ゴールを決めた鎌田大地は、久保建英からの右クロスを胸でトラップし、左足でゴールポスト左に蹴り込んだ。
文:沼本有佳子
Text by Yukaco Numamoto
編集:土田貴史
Edited by Takashi Tsuchida
[2026年6月28日掲載記事]

W杯2026の舞台で証明した“持っている男”の真価

 6月15日のグループリーグ・オランダ戦。貴重な勝ち点1をもたらしたこの試合で、日本の2点目はSNSをはじめ国内外で大きな話題を呼んだ。ゴール前の混戦の中、鎌田のブロックがわずか1ミリの軌道を変えてネットを揺らした。本人は「チーム内でもすごいいじられている」と笑いながらも、「あのブロックは計算されたものだった」と明かしている。偶然に見えて必然、そんな読み切れない深さが、鎌田大地というプレーヤーの本質だ。

 続く6月21日のチュニジア戦では、さらに鮮烈な一撃を見せた。中村が左サイドを切り込んで中央へ送ったクロスパスを、ゴール前の絶妙なポジションで待ち構えていた鎌田が左足のバックヒールで合わせ、W杯の日本代表史上最速となる開始4分での先制ゴールを刻んだ。スローVTRが繰り返しオンエアされる中、あの混沌としたゴール前でただ一人冷静に“決める場所”を選び取っていた鎌田の姿に、頼もしさを感じた人も多かっただろう。

 ゴール直後に披露した“電話パフォーマンス”も話題を呼んだ。それはクリスタル・パレスのチームメートFW、エディ・エンケティアへのオマージュだ。「今季、怪我が続いて苦しんでいる彼が、プレミアでゴールを決めたらやってくれと言われていた。プレミアでは決められなかったけど、W杯で決めたらやると約束していた」と明かし、試合後のSNSには「約束は守ったよ、ブラザー(I kept my promise, bro)」と投稿した。怪我に苦しむ仲間を思う、鎌田の温かな人柄が滲み出るエピソードだ。

 注目を集める日本代表に、スペインのスポーツ紙『マルカ』もチュニジア戦のレポートに「日本の“Kamada”がチュニジアを圧倒し、W杯通算1000試合目を盛大に祝う」と見出しを付けた。ここでの“Kamada”はスペイン語で「エリートの集団」「タレントそろいの世代」を意味する“Camada”との洒落であり、鎌田個人だけでなく日本代表チーム全体への賛辞が込められている。

 こうした活躍の源泉は、しなやかなボールトラップ、精度の高いワンタッチパス、そして背後にも目があるかのような卓越した空間認識力にある。どれほど白熱した展開でも感情に流されず、冷静に最善の選択肢を選び続ける——それが鎌田大地のプレースタイルだ。


3歳でボールを蹴り始めた少年が、世界へ

 鎌田大地の父は大阪体育大学サッカー部の出身。父の手ほどきで、鎌田は3歳からボールを蹴り始めた。「テレビを見るぐらいならリフティングしなさい」という家庭の方針のもと、小学校入学前にはリフティング1000回、ヘディング100回超をこなす少年に育つ。所属したキッズFCでは5年時にナショナルトレセンU-12四国(1学年上)に選出され、6年時にはキャプテンとして愛媛県少年サッカー選手権を制した。

 しかし順風満帆ではなかった。中学でガンバ大阪ジュニアユースに進むと、トップ下には多くのライバルが存在し、身体の成長に筋肉がついていかない「クラムジー」の時期に苦しんだ。ユースへの昇格は叶わず、高校は東山高校へ進学した。しかしここで才能が一気に花開く。2年時のプリンスリーグ関西1部では18試合22得点18アシストという圧倒的な数字で得点王とアシスト王をダブルで達成。チームを3位に導きながら、大学進学よりプロの道を選んでサガン鳥栖に加入した。2015年にJ1リーグデビューを果たし、プロ初ゴールはダイレクトボレーによる同点弾だった。

 2017年からはブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルトへ4年契約で移籍したが、当初は3試合の出場にとどまった。2018年からベルギー1部リーグ・シント=トロイデンVVへのレンタルを経て復帰後は安定感を増し、ヨーロッパリーグではスキル・オブ・ザ・デイやMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に幾度も選出され、その存在感を際立たせた。結果、ヨーロッパリーグ通算11得点(アジア人最多)、チャンピオンズリーグ8試合3得点という実績を残し、2023年にフランクフルトを退団。セリエA・SSラツィオへ移籍するも契約延長の条件が折り合わず1年で退団し、2024年からはプレミアリーグのクリスタル・パレスFCで活躍中だ。

 回り道も挫折も、すべてを糧にしてきた。その歩みの蓄積が、今大会での鎌田大地を形づくっている。


Instagramで見つけた、もうひとつの鎌田大地

 そんな鎌田大地がABEMA配信の特別番組「THE VOICE」に出演した際の一幕に、目を引く時計が写り込んでいた。テレビ朝日アナウンサーの三谷紬が自身のInstagramに2022年8月3日に投稿した写真の中に、鎌田がパルミジャーニ・フルリエを着用している姿が確認できたのだ。

 2022年に配信されたこの番組で、三谷アナは当時フランクフルトに所属していた鎌田を単独取材。「対談前は少し怖そうというイメージがあったが、実際には気さくで、しっかりとした芯を持つ姿に新しい発見が多かった」と振り返っている。ピッチ上のクールなイメージとは裏腹に、人懐っこい笑顔を見せる鎌田。その左手首には、過剰な主張はしないが、本物を知る人間だけが気づく存在感を放つ時計がある。

 画像の解像度からカラーやモデルを断定するのは難しいが、ミラノブルーのダイアルを持つ18Kローズゴールドモデルの「トンダ PF クロノグラフ」と推測される。複雑機構を内側から設計し直すというパルミジャーニ・フルリエの哲学から生まれたこのモデルは、バーリーコーンのハンドギヨシェが施されたダイアルが印象的だ。

 ケースバックからはCOSC認定クロノメーターCal.PF070の独創的な構造を堪能できる。地板をスケルトナイズして内部の階層を覗かせるスタイルは、コラムホイール搭載の垂直クラッチ式クロノグラフとしては異色の意匠だ。18KRGケース(直径42mm、厚さ12.4mm)、パワーリザーブ約65時間、3万6000振動/時、100m防水というスペックが、驚くほど繊細な外観のなかに凝縮されている。

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF クロノグラフ」
自動巻き(Cal.PF070)。42石。3万6000振動/時。COSC認定クロノメーター。パワーリザーブ約65時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ12.4mm)。100m防水。7万3000スイスフラン。


静かな強さが、共鳴する

 クワイエットラグジュアリーという言葉が、これほど自然に重なるケースも珍しい。「トンダ PF クロノグラフ」は、派手なインデックスも過剰な装飾も持たない。しかしその内部には、コラムホイールと3万6000振動/時の高振動が生む確かな強さと精度が宿っている。表に出さない実力が本物の価値を生む、そんな哲学を体現した一本だ。

 鎌田大地のプレーも、また然り。華やかなドリブル突破で歓声を集めるタイプではない。しかし、混戦の中で1ミリ単位のコースを読み切り、開始4分でバックヒールを決めるのは、ピッチを俯瞰し続ける静かな知性と、揺るぎない技術の積み上げがあってこそだ。柔らかいトラップ、精度の高いワンタッチパス、そして並外れた空間認識力。得意とするこれらの武器は、どれも“見えにくいが、決定的”という点で一致している。

 スウェーデン戦は1-1のドローに終わり、3試合連続ゴールはならなかった。それでも鎌田は試合後、落ち着いた口調でこう振り返っている。「相手は前線の3人が強烈だったので、しっかりとリスク管理をすること、ロングボールが多い中でできるだけセカンドボールを拾うことを意識してやっていた」。そしてすでに視線は6月30日のブラジル戦へと定まっている。「自分たちが積み上げてきたものがあるので変える必要はないと思う。ただ、きょうの失点はオランダ戦で似たような失点のしかたをしたので、そういうところをはっきりさせていく。それから、自分たちはもっと鋭いカウンターを仕掛けられると思う。きょうはいい状況を作れそうなところでなかなか前に出ていかず、もう少しカウンターをしないとブラジルのような相手には常に守備をするような形になると思うので、しっかりとやっていきたい」と気を引き締めた。

 群れず、乱れず、すでに次を見つめている。1次リーグを1位通過してきたブラジルという難敵を前にしても、鎌田大地がまとう“静かなる強さ”はいささかも揺らいでいない。パルミジャーニ・フルリエの時計と同じように、その本質は外からは見えにくい。しかし、決定的な場面でこそ光を放つ。



Contact info: パルミジャーニ・フルリエ https://www.parmigiani.com/


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