パイロットウォッチとは一体何? 定義はあるの?/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

FEATUREぜんまい知恵袋
2020.08.23

Q:パイロットウォッチって一体何なの? 定義とは?


広田雅将

A:明確な定義はないが、共通してある機能を持っている

パイロット向けの時計が、いわゆるパイロットウォッチです。現在さまざまなメーカーがこのジャンルの時計を出していますが、明確な定義はありません。しかし、共通して次の機能が載っています。

各社のパイロットウォッチに共通する機能

・夜光塗料が施された針とインデックス
・気密性の高いケース
・無反射コーティングが施されている風防
・場合によっては、高い耐G性能

ケースの気密性を高めるのは、気圧の変動に耐えられるため。例えばIWCは、ベゼルとミドルケースを一体にして風防を外れにくくしているほか、ブライトリングのクロノマットも気密性を高めた結果、200mという防水性能を達成しています。また、風防に無反射コーティングを施すことで、強い太陽光下での風防の反射を防いでいます。加えて次のような機能が載っている場合が多いです。

ドイツにはパイロットウォッチの規格がある

ジン158

かつてのパイロットウォッチを復刻したジン「158」。蓄光塗料と太い針、太くはっきりしたフォントで描かれたインデックスによる高い視認性と、DIN8310に準拠した防水性能ならびに負圧耐性を備える。

パイロットウォッチに与えられることが多い付加機能

・クロノグラフ(場合によってはフライバック、同軸積算計付き)
・回転計算尺
・回転ベゼル
・高耐磁性能

かつてのパイロットクロノグラフは、フライバックや同軸積算計付きが多かったようですが、今は必ずしも必要条件ではないようです。もっとも、定義がないとは言え、ドイツのDINにはパイロットウォッチの規格(DIN8330)があります。これはドイツのジンが定めたTESTAFという基準をベースに作られたものです。この条件は多岐にわたっており、グローブを付けても操作できるほか、高い気密性や無反射コーティングに加えて、-15〜+55℃という温度の下でも一定の精度を保てること、などが定められています。ただ、これはあくまでドイツの工業基準であり、時計業界全体に普及しているとは言えません。



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