Apple Watch Series7は買いなのか? 時計専門誌編集長が絶賛する理由

FEATUREその他
2021.11.14

充電速度はかなり早くなった

 Series 7の本当の利点は、充電速度の改善である。サイズに大きな制約のあるスマートウォッチは、モデルチェンジのたびにバッテリーの容量を増やすスマートフォンの手法を採用できない。スマートフォンのような革新が起きにくい一因だ。対してAppleはバッテリーの増量ではなく、充電時間を短くすることで、バッテリー切れという弱点に対応した。バッテリーは18時間しかもたないが、最大33%速くなった充電速度がその埋め合わせとなる。具体的に言うと、45分で80%まで充電でき、8分充電すれば、8時間の睡眠ログを取れる。バッテリーの容量増加や、デバイスの大幅な省電力化が期待できないことを考えれば、高速充電は唯一の解決策だろう。正直、今までのApple Watchで睡眠ログを取れる(取りたい)とは思わないが、充電時間が短くなったSeries 7以降、この機能は普及するかもしれない。バッテリーを大きく出来ないスマートウォッチでは、充電速度の速さは非常に重要になる。使った印象を言うと、Series 7最大のセールスポイントは、文字盤よりも充電速度だ。


50m防水に加えて、防塵性能も向上

 ハードウェアとして考えると、防水・防塵性能の改善も見逃せない。50m防水という性能は今までに同じだが、防塵性が高まったため、理論上はより過酷な環境でも使えるようになった。なおApple Watchのリュウズは、ロレックスやグランドセイコーのようなねじ込み式ではない。リュウズのチューブにパッキンを噛ませただけ、というシンプルな構成だが、どう工夫したのか、防水性能は悪くない。ライフサイクルが短いため、あえてパッキンに依存した設計を採用できたのだろうが、リュウズを頻繁に回す時計で、50m防水はまずありえない。ちなみに筆者はApple Watchを巻いて、泳いだり入浴しているが、問題は一度も起きなかった。Appleの謳う防水性能は、額面通りと考えて良さそうだ。

 ケース素材は3種類。アルミニウム、チタン、そしてステンレススティールである。「エディション」からセラミックケースがなくなったのは残念だが、普通の腕時計と異なり、ケースを可能な限り肉抜きしたApple Watchでは、強い衝撃を与えた際の耐久性に難があったのかもしれない。あるいは、アルミケースの出来が良いため、強いてセラミックケースを作る必要がなくなったのかもしれない。かつて筆者はApple Watchのアルミケースにかなり疑問を持っていたが、使った限りで言うと、耐久性に問題はなかった。耐食性も想像以上に高く、裏蓋に彫られた文字の周辺にも腐食はほぼ見当たらなかった。主にスポーツシーンで使いたい人や、軽い時計を好む人に、アルミニウムモデルはありだろう。価格も戦略的だ。

Apple Watch Series 7

高級版のエディションはチタンケースのみの展開。駆動時間約18時間。45mmモデル:SS(縦45×横38mm、厚さ10.7mm)。重さ45.1g(時計部分のみ)。50m防水。GPS+セルラーモデルは9万4800円~(税込み)。41mmモデル:SS(縦41×横35mm、厚さ10.7mm)。重さ37.0g(時計部分のみ)。GPS+セルラーモデルは10万800円~(税込み)。

 ステンレスケースの仕上げはSeries 6にまったく同じ。切削の精度が高いため、ケースに顔を写しても、歪みはほぼ見当たらない。ロレックス並みとはいかないものの、鏡面の歪みの小ささは、多くの高級時計を超えている。現在AppleはApple Watchのディテールを語らなくなったが、丁寧な作り込みは今もってApple Watchの美点だ。簡単に交換できるストラップのシステムも、取り付け部の剛性が高いため、タフに使っても不安はない。また、汗や汚れが残りやすい環境でも、取り付け部は不具合を起こさなかった。

 実際触ってはいないが、3つの素材の中で、個人的にお勧めしたいのはチタンケースである。軽くて耐食性が高く、金属アレルギーを起こしにくいチタンは、使い手や環境を選ばない素材である。加工の手間がかかるため、アルミモデルに比べて価格は高いが、この素材は、多くのシチュエーションに対応するようになったSeries 7にはもっとも向いている。触っていないためあくまで印象でしかないが、チタンケースとソロループの組み合わせは、マリンスポーツにもデスクワークにも向くだろう。


改めてディテールを見る

Apple Watch ストラップ

スポーツストラップを選ぶと、S/MまたはM/Lサイズバンド2種類が同梱されている。2種類のバンドを使うことで、腕周り130mmから200mmまで対応できる。

 時計としてApple Watchを見ると、相変わらずディテールは非常に良い。その一例がラバーストラップだ。筆者は1年ほどバックルのないソロループを合わせていたが、酷使したにもかかわらず、目立つような劣化はなかった。なおAppleのラバーストラップは、どれを見ても、側面にあるはずの金型の継ぎ目、パーティングラインがほぼ目立たない。100万円クラスの時計でも、パーティングラインの目立つストラップがあると考えれば、Apple Watchの完成度は非常に高い。また、同じラバーストラップでも、ソロループは柔らかい液状シリコーンゴムで、普通のスポーツストラップは耐久性の高いフルオロエラストマーと素材そのものを変えている。フルオロエラストマーを採用したのは、柔らかいシリコンだとバックルのピンが抜けやすいから、そして汚れがつきにくいからだろう。用途に応じて素材を変えるのは、いかにもAppleらしい。


ガジェットではなく、日用品である

 わずかにサイズが拡大し、文字盤も大きくなったSeries 7。正直、視認性を重視する人でなければ、併売されているSEで十分かもしれない。しかし、常時表示のRetinaディスプレイ、ヘルスケア用の各種センサー、それ以上に速い充電速度を考えると、やはりSeries 7をお勧めしたい。ガジェットではなく、普段使いのコモディティーと考えれば、選ぶ際の第一条件はストレスの少なさ、別の言い方をすれば、消去法で残るものと思っている。正直、Apple Watchのバッテリーが、これからの数年で劇的に良くなるとは思えない。とすれば、充電時間を大幅に短くしたSeries 7は、普段使いのツールとしてありだろう。細部を丁寧に熟成させたSeries 7に、初代Apple Watchのようなガジェットらしさはあまりない。しかし、日用品として見ると、これぞまっとうな正常進化である。時間をかけて、Apple Watchはいい“時計”になった、というのが偽らざる印象だ。


洗練度を上げたApple Watch series 7が次のステップへの準備

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“嗜好品”への道を模索しはじめたApple Watch/Apple Watch Series 7レポート

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