ライター 柴田 充が選ぶ、2021年発表の時計 ベスト5

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2021.12.07

2020年に続き、「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2021」をはじめ、ほとんどの時計フェアや展示会がオンラインで開催された2021年。日本、そして世界を代表する著名ジャーナリストたちは、2021年に発表された時計をどう評価しているのだろうか? 彼らに2021年発表時計からそれぞれのベスト5を選んでもらった。

パテック フィリップ「カラトラバ 6119G-001」

 1970年代後半以降、手巻き式のメインエンジンだったCal.215の後継となるCal.30-255 PSを搭載する。トルク重視のふたつの香箱を備え、歩度の安定と駆動時間も約44時間から約65時間へと延長された。ブリッジ構成もブランドの伝統を感じさせる。

カラトラバ 6119G-001

パテック フィリップ「カラトラバ 6119G」
手巻き(Cal.30-255 PS)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWGケース(直径39mm、厚さ8.1mm)。3気圧防水。339万9000円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンターTel.03-3255-8109


ブルガリ「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」

 ブルガリの世界記録ラッシュは、世界最薄のパーペチュアルカレンダーでついに7度目となった。今年はこの伝統の複雑機構が豊作となり、なかでもブルガリは自慢の極薄技術で“永久”という名の持つ重たさを払拭する。

オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー

ブルガリ「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」
自動巻き(Cal.BVL305)。30石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径40mm、厚さ5.8mm)。30m防水。683万1000円(税込み)。(問)ブルガリ ジャパン Tel.03-6362-0100


グランドセイコー「ヘリテージコレクション セイコー創業140周年記念モデル SLGA007」

 1999年に登場し、グランドセイコーには2004年に搭載された9R系スプリングドライブが2020年にCal.9RA5に進化した。従来の約3日から約5日へと駆動時間を延ばし、独自技術の完成度を追求する正常進化からは真摯な姿勢が伝わる。

ヘリテージコレクション セイコー創業140周年記念モデル

グランドセイコー「ヘリテージコレクション セイコー創業140周年記念モデル」SLGA007
自動巻き(Cal.9RA2)。スプリングドライブ。38石。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。世界限定2021本。99万円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室Tel.0120-061-012


チューダー「ブラックベイ セラミック」

 METASによるマスター クロノメーター認定は、現代の実用性に則した内容にもかかわらず、これまでオメガのみの採用にとどまり、将来性が危ぶまれていた。今回のチューダーの取得が突破口となり、普及するか。その試金石ともいえる。

ブラックベイ セラミック

チューダー「ブラックベイ セラミック」
自動巻き(Cal.MT5602-1U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ブラックセラミック(直径41mm)。200m防水。53万9000円(税込み)。(問)日本ロレックス/チューダーTel.0120-929-570


オリス「ビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403」

 80年以上続くタイムレスなデザインと、ほどよい38mm径ケースに、高耐磁性と約5日巻きを備えた自社キャリバー403を搭載する。手の届く価格帯でデイリーユースの実用的な機械式時計が少なくなる中、称賛したい。

ビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403

オリス「ビッグクラウン ポインターデイト キャリバー403
自動巻き(Cal.Oris403)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径38mm)。50m防水。42万9000円(税込み)。(問)オリスジャパンTel.03-6260-6876


選者のコメント

 2021年の時計を巡る話題で興味深かったのが“ロレックスマラソン”だ。元をたどれば、ショック・ドクトリンの金余りがさらなる資産形成のため稀少価値の高い時計に注がれ、これに転売ヤーが目をつけたわけだが、そればかりでなく、まるで「ポケモン GO」のように店舗を巡る様子は、時計購入にフィジカルなゲーム性を添え、楽しんでいるようにも思える。

 一方で、知人は修理で販売店を訪れたところ、偶然入荷したバイカラーの新作「オイスター パーペチュアル エクスプローラー」を予期せず手に入れた。まるで落とし物を拾うかのように。かほどに時計の世界は想像もつかない展開を見せる。

 そんな1年を振り返りつつ、注目したのは以下の新作だ。スマートフォンがすっかり定着したいま、機械式時計の存在意義を問う次世代の手巻き式。近年、年次カレンダーにお株を奪われていたが、伝統的な複雑機構の復権を予感させる永久カレンダー。ガラパゴスとも揶揄される国産技術の汚名を返上し、完成度に磨きをかけたスプリングドライブ。これまでの寡占状態を打破し、その真価に注目が集まるマスター クロノメーター認定。デイリーユースに応え、ヴィンテージスタイルに現代の技術を注ぐ普遍的なリアルウォッチ。

 いずれもそれぞれのブランドの目指す時計作りが明確に表現され、独創性とともにこの先を見据えた意思が伝わる。そんな多様性こそが純粋に時計を楽しむことも難しくなった時代の活路になると思う。



選者のプロフィール

柴田充/しばたみつる

1962年生まれ。時計をはじめ、クルマやファッションなど男性の趣味の世界をテーマに、ライフスタイル誌や時計専門誌で編集執筆。


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