『クロノス日本版』の編集部員が話題モデルをインプレッションし、語り合う連載。今回は、編集長の広田雅将、副編集長の鈴木幸也、ほそやんこと細田雄人、そして新人の土井康希の4人で、G-SHOCK「MRG-B5000」2モデルを好き勝手に論評する。
阿形美子:文 Text by Yoshiko Agata
2022年6月5日公開記事

オリジンこと初号機「DW-5000C」をG-SHOCK最上位シリーズMR-Gでフルメタル化。ケースを構成する25個のパーツを磨き込み、質感を高めながら従来の耐衝撃性を保っている。ケース・ブレスレットともにサテン仕上げをし、チタンカーバイトによる硬化処理を施した。ベゼルトップのコバリオンの輝きとのコントラストが効いた1本。タフソーラー。Ti×コバリオン+チタンカーバイド(縦49.4×横43.2mm、厚さ12.9mm)。20気圧防水。39万6000円(税込み)。
MR-Gシリーズにスクエアモデルが登場
細田
G-SHOCKの最上位シリーズMR-Gについにチタン製のスクエアモデルが登場しました! 幸也さんと土井はブラックを、ハカセと僕はシルバーを着けました。価格も超弩級ですけど、皆さん着けてみてどうでしたか。40万円超えの価値はあると思いましたか?
広田
僕は良いと思いましたよ。
鈴木
私は正直よく分かりませんでした(笑)。ただ、普通に使えるので何の文句もないんですけど。

細田
デザインはG-SHOCK初号機を引き継ぎながら、ケースを25個のパーツで構成しています。
鈴木
それは、着けている時には意味あるの?
細田
ないです(笑)。研磨のためにパーツを分解していった、ということなので。っていうのも、従来の一体成型だとやっぱり磨けないところが出てきちゃうんですね。元々一体だったヘッドパーツを順番にバラしていって、磨けるところと組み上げられるちょうどいいところを取って、25個に落ち着いたそうです。
あとは、素材も凝っていて、ケースとベゼルには「64チタン」、ブレスレットにはチタン合金の「DAT55G」、ベゼルトップにはプラチナと同等の輝きを持つといわれるコバルトクロム合金「コバリオン」を使い分けています。

広田
シルバーの面白かった点は、筋目を強調しながらベゼルのコバリオンのポリッシュをかなり効かせているところ。その部分は一般のフルメタルと明らかに違う感じがありました。
鈴木
そこはカッコいいですよね。ブラックは全面をポリッシュしてDLC加工をしているからディテールが分かりにくくなっちゃう。磨くためにパーツを細かくしたっていう作り手の思い入れはシルバーの方が絶対に伝わるし、ディテールを見た時に満足できると思うな。シルバーの方が生っぽい感じもあるね。
土井
僕も同意見ですが、でも、ブラックも普通にカッコいいなと思いました。ブラックはネジがゴールドなので、見た目のアクセントとしても効いています。
細田
オリジンが黒なので、開発者的にはブラック推しだそうです。

今回のテストでは、ブラックDLC処理をしたMRG-B5000Bも着用した。こちらは色味も含めて、オリジンをMR-Gに落とし込んだ“究極のオリジン”だ。タフソーラー。Ti×コバリオン+DLC(縦49.4×横43.2mm、厚さ12.9mm)。20気圧防水。46万2000円(税込み)。
鈴木
ただ、さっきは分からなかったとは言ったものの、この手のものって買った後に作る工程や蘊蓄を知ると、新たな着眼点が出来て満足感が長引くと思う。だんだん知ることによっても楽しめるから、その点は価格分の価値はあるんじゃないかな。
広田
明らかに、普通のG-SHOCKよりよく出来ているのは分かります。
鈴木
桁も違うからね(笑)。
細田
正直なところ、通常のフルメタルの完成度が非常に高いので、このモデルの出来がいくら良くても、「とにかく磨くためにこれだけの手間を掛けたのでこの金額を出してください」っていうメーカーの言い分が消費者に伝わるのかなぁと懐疑的だったんです。
でも、蓋を開けてみたら意外と売れまくってる。だから、個人的にはこの時計がちゃんと支持される日本の時計市場ってかなり成熟しているんだな、と改めて感じさせられました。
傷さえも味にして使えるのが魅力

細田
僕はこのモデルへの声をネットで調べてみたんですけど、磨きの良さを評価する人がいる一方で、ここまで磨いてあるものをG-SHOCKの用途で使って傷付けてしまうことに躊躇する人がいましたね。
広田
そういう意味でコーティングをかけているんだろうね。シルバーもチタンカーバイドで硬化処理しているし。
細田
カシオは、チタンにコーティングをかけているので再研磨は無理とはっきりと言っています。そこが気になる人は結局難しいところだなとは思います。
広田
オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」をガチガチに使ったらカッコいいっていうのと同じ感じで使って欲しいかなぁ。
鈴木
ガチガチに使ってもし傷が付いても、メタルならではの味になる気がします。それはそれで、なんかカッコいい。高級だからその使い方が許されると思うんですよね。使い捨てじゃない。時計の履歴を語るという意味で、高級な時計の使い方ができると思います。
土井
磨き直しができなくても、ユーザーが傷をカッコいいと思えれば、アリですよね。
広田
それから、個人的にいいなと思ったのは、部品同士のクリアランスをそんなに厳密に詰めてないところ。もちろん詰めてはいるけど、割りかし開けるところは開けているところがG-SHOCKっぽくて良いなと。
鈴木
ギチギチだと衝撃が伝わりやすいもんね。
広田
はい、寄木細工みたいな構造なので、クリアランスを詰めすぎると衝撃でバラバラになっちゃうので。その辺はやっぱりノウハウがあるのかな。よく考えられています。
