【インタビュー】パルミジャーニ・フルリエCEO「グイド・テレーニ」

FEATURE本誌記事
2022.09.23

海外からの渡航が緩和された6月以降、時計メーカーの要人たちが次々と来日を果たした。そのひとりが、パルミジャーニ・フルリエCEOのグイド・テレーニだ。

三田村優:写真 Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年9月号掲載記事]


ブランドを打ち立てるには一貫性を持ち、無駄を削ぎ落とすこと

グイド・テレーニ

グイド・テレーニ
パルミジャーニ・フルリエCEO。1969年、イタリア生まれ。ルイジ・ボッコーニ大学卒業。2000年、スイスに移住し、ブルガリグループのウォッチメイキングディビジョンへ入社。メンズウォッチのプロダクトマネージャー、ウォッチプロダクト全般の責任者を務めた後、マーケティングディレクターを経て、時計部門の責任者に就任。2021年1月より現職。「トンダ PF」のヒットでパルミジャーニ・フルリエのパブリックイメージを大きく変えつつある。

「来日の理由はマーケットを見て、顧客を見るため。彼らが期待しているのが分かる。パルミジャーニ・フルリエにとってほぼ初めての市場だし、需要も伸びている。日本の顧客の仕上げに対する目や、控えめなデザイン、職人技に対する受け止め方は素晴らしい」

 トンダ PFで大きくブランドを変えたグイド・テレーニ。何がミスリーディングだったのか率直に聞いてみた。

「スタイルだと思う。今まではブランドとしてのスタイルがクリアではなかった。ミシェルのことは20年来知っている。時計師として素晴らしいし、歴史をつくり上げてきた。不足していたのは、カスタマーのテイストを知ることだったと思っている。顧客は進化しているし、それを再解釈する必要がある。トンダ PFを作るにあたって、25年前の顧客はどんなライフスタイルを送っているのか、どんなものを欲しているのかを考えた」。その帰結が、トンダ PFのシンプルなデザインということか?

「もちろんだよ。ブランドを感じないと仕事はうまくいかない。トンダ PFには私の感性が入っているだろう。ブルガリでもデザインを鋭く考えたし、今回もそうだ。文字盤のグレーにはわずかにブラウンを加えて温かみを出し、ケースもラグを別部品にして、面取りがはっきり出るようにした」

 そんなテレーニは、ブルガリ在籍中に同グループ自社一貫生産の基礎を作り上げた。一方のパルミジャーニ・フルリエは最初からすべてがある。もっとも、それ故に方針が確かでなかったように思うのだが?

「創作することとブランドをつくることは違うと思っている。ジェラルド・ジェンタのデザインは傑作だったが、自身のブランドでは成功しなかった。ブランドを打ち立てるには一貫性が必要になるし、無駄を削ぎ落とす必要がある。ブルガリでは、一からリポジションを考え、時間をかけて時計作りのプロセスを打ち立てた。パルミジャーニ・フルリエはブルガリとは逆で、すべてがあった。だから再活性化すればいいだけ、方向性を明確にするだけだった」

「将来的な可能性を言うと、私たちは他社と違ったことができるし、その際には『世界初』という称号に意味があると思っている。時計業界ではさまざまなことがやり尽くされたが、高度な技術、デザイン、テクニックをシンプルにまとめていくことはできるだろう」

 なるほど「トンダ PF GMT ラトラパンテ」は、そんなテレーニらしさに満ちた新作だ。

トンダ PF GMT ラトラパンテ

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF GMT ラトラパンテ」
グイド・テレーニが言う「世界初」を体現した新作。8時位置のプッシュボタンで時針のみの早送りが可能。加えてリュウズと同軸にあるプッシュボタンで、GMT針をリセットできる。トンダ GTとデザインは似ているが、ケースもブレスレットも別物だ。自動巻き(Cal.PF051)。31石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SS×Pt(直径40mm、厚さ10.7mm)。60m防水。350万9000円(税込み)。



Contact info: パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com


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