進化した“フジツボダイバー”、シチズンの「プロマスター メカニカル ダイバー 200m」をレビュー

FEATUREインプレッション
2022.11.08

今回レビューするのは、シチズンが1977年に発売した「チャレンジダイバー」のデザインを継承し、現代的なアップデートを施した2022年発表の新“フジツボダイバー”こと「プロマスター メカニカル ダイバー 200m」。ユニークなエピソードを持つオリジナルとはデザインが大きく異なるが、より快適に「使える」実用機に進化していた。

プロマスター メカニカル ダイバー 200m

白苺:文
Text by Shiroichigo
2022年11月8日掲載記事

伝説的なエピソードを持つ、シチズンの「チャレンジダイバー」

 皆さんは普段使いにダイバーズウォッチ(以下ダイバーズ)を使うことをどう思うだろうか? 私は恥ずかしながらこれまでにいくつかの時計を壊したり、喪ってしまったことがある。廊下で転んで柱にぶつけてしまった事もあるが、その大半は水が関係するものであった。

 大学時代水泳部だった私は、友人たちとよく海へ行った。ある時は見かけはダイバー風であるが、ダイバー規格を満たしていない通常の防水時計でシュノーケリングをして浸水させてしまったこともある。また緩めに着けていて激しい潮流に出くわしたときにいつの間にかなくしてしまったこともあった。その時は潜って探してみたが残念ながら見つけることはできなかった。

 また山にキャンプへ行き、濡れないように気をつけていたものの足を滑らせて渓流に浸かって時計をダメにしたこともある。そしてダイビングに行ったときに船が嵐にあってしまい、ひどく船酔いした私は時計をポケットにしまおうと外した際に落としてしまったこともあった。流石にこの時計はフィリピン海溝に沈んでいると思われるので、残念ながらよほどの高性能ダイバーズでない限り海の藻屑になってしまっているだろう。

 このような経験もあって、私は濡れる可能性があるときには防水時計、その中でもダイバーズを普段からよく使い、また人にも勧めてきたのであった。

プロマスター メカニカル ダイバー 200m

シチズン「プロマスター メカニカル ダイバー 200m」(NB6021-68L)
自動巻き(cal.9051)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。スーパーチタニウムケース(直径41mm、厚さ12.3mm)。200m防水。12万1000円(税込み)。

 シチズンは、プロフェッショナルスポーツウオッチとしての高い性能に加え、“想像力”という価値を提案する「シチズン プロマスター」から、1977年発売の「チャレンジダイバー」のデザインを継承し、現代にアップデートした強化耐磁仕様ムーブメント搭載のメカニカルダイバーズウオッチ「シチズン プロマスターメカニカル ダイバー200m」を2022年8月19日に発売した。この時計のモデルとなった1970年代のチャレンジダイバー、というのはシチズンのダイバーズの中でも伝説的な時計である。

"フジツボダイバー"と言われるエピソード

 その時計は1983年、ロングリーフビーチ(とは言っても愛知県の太平洋ロングビーチではなく、オーストラリアのシドニー近郊の風光明媚なビーチである)の海中から発見された。その姿は時計の周りにびっちりとフジツボが付着し、まるで古代遺物のような姿であった。しかし驚くべきことにその時計はそのような姿になっても海底で動作し続けていたのである。

 シチズンによれば防水性が保たれていたことに加えて波に揺られて動かされていたことで自動巻きが巻き上がって動作を続けたのではないかということらしい。もしかしたら現在の優れた太陽光発電であるエコドライブなら海底で動作を続けられたかもしれないが、当然ながら通常の電池寿命の電池式時計ならば早晩止まってしまっていただろう。この時計はその姿から“フジツボ”と言われるようになったのである。

フジツボダイバー

チャレンジダイバーの性能を物語るのが、このフジツボが付着した姿。“フジツボダイバー”たる所以である。

 この伝説の“フジツボ”は現存し、シチズンミュージアムに収められている。残念ながら発見された水深などの状況は詳しくは記されていないし、また元の持ち主に発見されたことが伝わったかどうかも定かではない。しかしもし元の持ち主が時計が見つかったことを知ったならばとても喜んだであろう。ダイバーズではこのような経緯やデザインをもとにペットネームがユーザーから付けられることが多い。シチズンならばフグが著名であるし、セイコーのモンスターやボーイもよく挙げられるのである。そしてそれはユーザーからその時計が広く愛されている証拠なのである。