ドイツの時計メーカー、チュチマについて押さえておきたい5つのポイント

FEATUREWatchTime
2022.12.14

典型的なドイツ時計のDNAを持ち、堅牢かつスポーティーなデザインに定評があるチュチマ。ドイツ軍やNATO軍に納入されたパイロットウォッチをはじめ、ダイバーなど専門分野のために作られる時計は、力強くもエレガントな佇まいである。ブランドの歴史を追いながら、チュチマについて押さえておきたい5つのポイントを紹介しよう。

Originally published on watchtime.com
Text by Rüdiger Bucher
2022年12月14日掲載記事


1. グラスヒュッテの救済から始まるブランドストーリー

UROFA

グラスヒュッテにあったUROFA社の建物。

 チュチマの前身は、1845年にドイツ・グラスヒュッテに創設された時計工房である。しかし、第1次世界大戦、そして世界恐慌の後、グラスヒュッテの時計作りは壊滅状態であった。なぜなら、懐中時計の製造に重点を置き、戦争を経て普及した腕時計の製造には注力していなかったからだ。

 この状況を打破すべく、法律家のエルンスト・クルツが先頭に立ち、1926年にグラスヒュッテの時計工場は再編・合併する。こうして設立されたUROFA社(Uhren-Rohwerk-Fabrik Glashütte AG)とUFAG社(Uhrenfabrik Glashütte AG)に対して、ザクセン中央銀行が資金を提供した。

 クンツのマネージングのもと、UROFAとUFAGで高品質な時計の生産が始まった。製作された最高精度の時計には、ラテン語で「安全な」という意味の形容詞「tutus」に由来する「TUTIMA」の名前が付けられた。腕時計の工業生産は、グラスヒュッテの時計工房を救済するために必要不可欠だったのだ。


2. 鮮やかなカラー展開

セブンシーズ

セブンシーズ
Ref.6151-07。自動巻き(Cal.330)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。Tiケース(直径44mm)。50気圧防水。26万4000円(税込み)。

 近年、チュチマのコレクションはカラーバリエーションが充実している。「フリーガー」や「フリーガー スカイ」コレクションには、以前からレッドやブルー、グリーンのダイアルを備えたモデルがあったが、「セブンシーズ」や「パトリア」といったコレクションにも、ブルーダイアルやグレーダイアルのモデルが登場した。

 2021年の春には、セブンシーズのチタン製モデルにイエローとオレンジのダイアルを採用し、その数カ月後には「セブンシーズ エス」のステンレススティール製モデルに多彩なグラデーションダイアルを展開している。また22年は、セブンシーズ エスのカラーモデルが多数登場した。

コーストライン

コーストライン
Ref.6150-08。自動巻き(Cal.Cal.330)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。Tiケース(直径43mm)。30気圧防水。26万4000円(税込み)。
セブンシーズ エス

セブンシーズ エス
Ref.6156-08。自動巻き(Cal.330)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径40mm)。50気圧防水。30万8000円(税込み)。

フリーガー

フリーガー Ref.6105-31
自動巻き(Cal.330)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm)。10気圧防水。21万4500円(税込み)。


3. 1941年から続くクロノグラフ搭載パイロットウォッチ

チュチマ

1941年製のクロノグラフ搭載パイロットウォッチ。

 1940年代、エルンスト・クルツ博士の指揮のもと、チュチマはドイツ空軍のためにクロノグラフを搭載したパイロットウォッチを開発した。この時計に搭載されたキャリバー59は、当時は「テンポストップ」と呼ばれた、いわゆる「フライバック」機能により、クロノグラフを停止させることなく、すぐにリセットすることが可能だった。

 89年の広告パンフレットに、チュチマは41年製のクロノグラフ搭載パイロットウォッチを掲載している。広告には「ドイツにおける初めてのクロノグラフウォッチはチュチマ製であり、このチュチマのパイロット・クロノグラフはグラスヒュッテにおいて1940年代初めに開発され、当時のドイツ国防軍空軍の標準装備であった」と書かれている。

 この腕時計は、ドイツにおけるパイロットウォッチの歴史とともにチュチマのシンボルとなり、アメリカやヨーロッパをはじめ国際的な名声を確立していったのである。現在のチュチマの「グランド フリーガー」コレクションは、この歴史的なクロノグラフ搭載パイロットウォッチの系統に連なるものだ。


4. 自社製ムーブメントを生み出す工房

チュチマ

グラスヒュッテにあるチュチマの工房。

 現在のチュチマの工房は、かつてグラスヒュッテの駅職員が使用していた建物を改築したものである。この建物を購入したのは、エルンスト・クルツ博士に代わって、1960年代から同社を率いたディーター・デレケイトだ。この場所で、チュチマの自社製ムーブメントが生み出されている。

 2011年に発表されたミニッツリピーター搭載の「オマージュ」に続き、第2時間帯やパワーリザーブ表示を備えた「パトリア」や、フライバッククロノグラフ搭載の「テンポストップ」などが、ここで製造されている。

キャリバー618

第2時間帯やパワーリザーブ表示を備えた「パトリア」に搭載された、手巻きキャリバー618。

キャリバーT659

「テンポストップ」に搭載された、フライバッククロノグラフ機能を備えるキャリバーT659。


5. ドイツ空軍とNATO軍に採用されたクロノグラフウォッチ

チュチマ

1980年代にチュチマで作られたクロノグラフウォッチ。

 1985年、ドイツ連邦軍はドイツ空軍のための公式クロノグラフウォッチの入札を行った。大規模なテストの結果、手袋をしたままでも操作できる、ケースと一体化した大型のプッシュボタンが高く評価され、チュチマが契約を獲得した。

 87年には、NATO軍にもチュチマのクロノグラフウォッチが正式採用されている。現在でもドイツ北部には、これらの時計を専門に扱う修理工房が設けられている。



Contact info: トラストゲインジャパン Tel.03-6810-9305


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