オメガのダイバーズウォッチの歴史。ブランド初のダイバーズと「シーマスター」コレクション

FEATUREWatchTime
2023.04.05

1966年、デイト表示を搭載した「シーマスター 120」が登場

ジャック・マイヨール

1981年、ジャック・マイヨールは「シーマスター 120 クォーツ」を着用して、素潜りで水深101mの世界記録に臨んだ。

 オメガのダイバーズウォッチで初めて日付表示を搭載したのは、1966年に登場した「シーマスター 120」だ。この時計には、オレンジ色のダイビングベゼルを備えたモデルや日付表示なしのモデル、手巻きのモデルなど、さまざまなバリエーションが存在した。

 少しシンプルなシーマスター 120の防水性能は、後に120mから60mに引き下げられている。発表から1年後、Cal.565を搭載したシーマスター 300にもデイト表示が付与された。この時計は、英国海軍にも採用されている。軍仕様のモデルは、文字盤にプリントされた「T」マークで見分けることができる。これは夜光塗料としてトリチウムが使用されているということを示す。

 1968年から、オメガはダイビング専門会社「COMEX」と提携していた。同年、COMEXのふたりのダイバー、ラルフ・ブラウアーとルネ・ヴェイリュネスは、シーマスター 300とともに水深365mの高圧室での世界記録を樹立した。


1970年、“プロプロフ”こと「シーマスター プロフェッショナル 600」を発表

シーマスター プロフェッショナル 600

1970年に発表された“プロプロフ”こと「シーマスター プロフェッショナル 600」。回転ベゼルとケースにセーフティープッシャーを備えている。

 1969年、オメガはダイバーズウォッチコレクションに、60m防水の「シーマスター 60」と200m防水の「シーマスター 200」の2モデルを追加した。そして1970年、オメガは4年間の開発期間を経て、「プロプロフ」(Plongeur Professionnel、プロフェッショナルダイバーの意味)と呼ばれる「シーマスター プロフェッショナル 600」を発表し、ダイバーズウォッチの歴史に新たな名を刻んだ。

 シーマスター プロフェッショナル 600において特に衝撃的だったのは、塊から削り出した単一構造のケース、回転ベゼルのロック解除に用いるケースサイドの赤いセーフティープッシャー、そして左側に移設された角型リュウズの採用である。

シーマスター プロフェッショナル 600

1970年当時の「シーマスター プロフェッショナル 600」の広告。

 この時の大きなチャレンジは、600mという防水性の確保だけでなく、プロフェッショナルなダイバーが使うヘリウムの問題を解決することだった。水中深くに置かれた高圧チャンバー内の空気にはヘリウムが加えられている。ヘリウム分子は非常に小さいため、時計内部に入り込んでしまうのだ。ヘリウムがケース内に残っていると、水面に浮上した際に時計内部の気圧が下がってヘリウムが膨張、時計が破裂する危険性があるのだ。

 これを解決するため、ロレックスではヘリウムエスケープバルブという解決法を考案した。だがオメガは別の方法を模索し、そもそもヘリウムが入らない気密性の高い時計を作ることにした。時計業界で唯一の質量分析計を使ったテストが、オメガの開発研究室で行われた。ケース内部へのヘリウムの侵入を確認できるこの機械によって、防水性能は証明されたのである。完成したシーマスター プロフェッショナル 600は人気を博し、現在ではコレクターが探し求める時計となっている。

 搭載された自動巻きムーブメントCal.1002は、日付表示を備えていた。水中で最も重要な情報を与えるオレンジ色の分針は大ぶりである。文字盤はネイビーブルーまたはブラックの2色。セーフティプッシャーのスペースを確保するため、技術者たちはリュウズをケースの左側に移動させた。この時計は、数々の水中探査に使用されてきた。

シーマスター プロプロフ 1200m

2016年に発表された「シーマスター プロプロフ 1200m」。1200mの防水性能を備え、チタンケースとセラミックスベゼルの採用により軽量でキズに強い。自動巻き(Cal.8912)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(縦48x横55mm)。1200m防水。完売。

 2016年、オメガはシーマスター プロフェッショナル 600を「シーマスター プロプロフ 1200m」として復刻した。縦48×横55mmという大きなサイズにもかかわらず、チタンケースとブレスレットの採用により、非常に軽量で装着性に優れたモデルとなった。

 1200mの耐圧性を備えながらも、サファイアクリスタル製の裏蓋からは、コーアクシャル脱進機を備えた自動巻きムーブメントCal.8912を鑑賞することができる。そして回転ベゼルの安全性を保つため右側に配されたプッシャーと、ねじ込みを解くと開閉できるリュウズガードも備えている。


1971年、1000m防水の「シーマスター 1000」を発表

シーマスター オートマティック 120m クロノグラフ

1971年製の「シーマスター 1000」。モノブロック製ケースを備える。

 シーマスター プロフェッショナル 600の発表からわずか1年後の1971年、オメガは水深1000mでの着用を想定した「シーマスター 1000」を発表した。このモデルはモノブロックのワンピース構造のケースと左側に配されたリュウズを備えるが、シーマスター プロフェッショナル 600よりもなじみやすい外観となっている。厚さ5mmのミネラルクリスタル製風防を採用し、高い耐圧性を実現した。

 1972年に発表された「シーマスター オートマティック 120m クロノグラフ」は、センセーションを巻き起こしたモデルだ。水中でプッシャーを操作できる初めての時計であり、最大水深120mでもそれが可能であった。搭載されたCal.1040は、1973年に生産が中止された。

シーマスター オートマティック 120m クロノグラフ

水中でプッシャーが操作できる初めてのクロノグラフ「シーマスター オートマティック 120m クロノグラフ」。

 クォーツウォッチ全盛期でも、オメガにおけるダイバーズウォッチの進歩は止まることがなかった。例えば、1971年には120m防水の音叉時計「シーマスターf 300Hz」が発表される。

 1981年には「シーマスター 120m クォーツ」が発表された。フリーダイバーのジャック・マイヨールは、この時計を着用して水深101mまでの素潜りに挑んでいる。回転ベゼルを備えた機能的なダイバーズウォッチでありながら、クォーツムーブメントを採用することで非常に薄く、エレガントな印象だ。シーマスター 120m クォーツにはその後もさまざまな派生モデルが生まれ、ケースにブラックのクローム加工を施したものもある。

 1988年に発表された「シーマスター プロフェッショナル 200m」は、ETA2892をベースとしたクロノメーター認証の自動巻きムーブメントCal.1111、または温度補完性のあるクォーツムーブメントCal.1441が搭載されている。



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