F.P.ジュルヌ/オクタ

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.06.25

OCTA LUNE 3rd Generation Model
自社製の外装をまとったサードモデル

オクタ・リュヌ
第3世代のリュヌ。見た目は第1世代にほとんど同じだが、その内容は大きく進化している。自動巻き(Cal.1300-3)。39石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約120時間。18KRG(直径38mm)。参考商品。

 キャリバー1300-3の投入で、ひと通りの完成を見たオクタコレクション。しかし近年は外装の仕上げが改善され、時計としての完成度はいっそう高まった。

 まずジュルヌが手を加えたのは文字盤である。「年間数百枚という小ロットで文字盤を作ってくれる会社がなかったから2000年にカドラニエ・ジュネーブを買収した」と語るジュルヌ。数年かけて生産体制を整えた後、彼は自らディレクターに就任した。その結果には目覚ましいものがある。プレスで施すギョーシェは角が出るようになり、以前見られたメッキのばらつき(ロットごとに色が違っていた)も、今やほとんどわからなくなった。加えて下地の荒らし方もいっそう密になり、印字も高く盛り上がるようになったのである。正直、初期のオクタには手づくりならではの面白みがあった。しかし時計としては、間違いなく現行品の方がはるかに良くできている。

 加えてF.P.ジュルヌはケースメーカーのエリノーを買収し。パリから従業員と設備をジュネーブに移転させ「ボワティエ・ジュネーブ」として整備したことで、一貫生産体制を整えつつある。もともとジュルヌのケースはクォリティが高かった。しかし移転以降ケースの磨きが改善され、以前より面が平滑に出るようになった。とはいえジュルヌの見識は、精緻な面を与えるため下地をCNCで整えきることはせず、意図的に「揺らぎ」を残した。あまりにも歪みがないと、逆に高級感が損なわれてしまうことを、彼は直感として分かっているに違いない。卓越したパッケージングに加えて、巻き上げ効率に優れた自動巻きムーブメントと、良質な外装を持つに至った現在のオクタ。時計愛好家ならば、一度は見るべき、そして手にすべき時計である。

(左上)3時位置に設けられた文字盤。第1世代に比べるとギョーシェのエッジが明確になったほか、同心円状の彫りも深くなっている。また、かつてはしばしば見られた印字の切れもない。現在F.P.ジュルヌは、高価格帯では最も優れた文字盤を持つメーカーとなった。(右上)片方向巻き上げに変更されたCal.1300-3。面取りはダイヤカットではなく、ダイヤカット+手仕上げ。また密に施されたペルラージュも現行ジュルヌの美点だろう。(中)設計も製法も第1世代から変わっていないが、磨きが改善されたのか、より平滑さが出るようになった。製造は旧エリノーこと「ボワティエ・ジュネーブ」社。金のインゴットを溶解し、鍛造加工を加えてケースを製造していく。スイスにケースメーカーは多いが、溶解や鍛造を自社で行えるサプライヤーは今や希少な存在だ。(左下)相変わらず狭い見返しを持つ。なお比較すれば分かる通り、現在のオクタの文字盤は、かつてのものに比べてわずかに印字が太い。(右下)質感の改善を物語るのが、ムーンフェイズ周辺の処理だ。以前はムーンフェイズの窓周辺にプレス後のめくれが見られたが、今や痕跡はほとんどなくなった。また印字もより立体的になっている。印字の転写を7~8回繰り返して立体感を強調する手法は、現在のカドラニエ・ジュネーブが最も得意とするものだ。



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