カルティエ/サントス

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.09.10

SANTOS 100
ケースサイズを大型化したスポーティアレンジ

サントス 100 LM

サントス 100 LM
サントス100周年記念モデル。ドレッシーに振ったサントス-デュモンに対して、こちらはスポーティさを強調した試みである。自動巻き(Cal.049MC)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS×18KYG(縦51.1×横41.3mm)。100m防水。110万円。

 サントスをドレスウォッチに振ったサントス-デュモン。対してスポーティな性格を強調してみせたのが、サントス100周年記念モデルの「サントス 100」であった。初出は2004年。以降毎年のようにコレクションを増やし、今やカルティエを代表するコレクションとなった。

 既存のサントスとの大きな違いは、ケースの大きさと厚み。サイズが拡大された結果、防水性能は30mから100mに改善された。スポーツウォッチとして使うには正直もの足りないが、バックケースがネジ留めであることを考えれば、100m防水は立派だろう。

 前ページを見れば分かるように、サントス-デュモンとは、サントスにドレスウォッチのお約束を盛り込んだ時計であった。一方、サントス 100を見ると、これはスポーツウォッチのデザインコードを接ぎ木した時計であると理解できる。一例がスポーツウォッチらしい太いベゼルであり、もうひとつが側面の絞り込みを抑えたラグである。広いベゼルは防水性能を高めるためには欠かせないし、太いラグも、大きく重くなった時計を支えるには必要不可欠なものだ。

 もっとも現在となっては、これらはスポーツウォッチに不可欠な条件とはいえなくなった。しかしスポーティさを強調するため、カルティエはこうした要素をあえて採用したのだろう。細部に手を加えて、時計の性格を変えるのは時計業界の定石だ。しかしサントスほど、それが上手くいった例は希だろう。もちろん現在のカルティエの手腕があってこその成功であることは間違いない。しかし1世紀以上前の時計が、どのようにも解釈できる幅を持っていたという事実もまた、忘れてはならないだろう。サントスとは、〝読み手と時代によって答えが変わるテクスト〟であり、なればこそ永遠の定番なのである。

サントス 100 LM

(左上)ネジ留めされたベゼル。風防が飛び出しているのは、厚みが増したため。もっともその結果として、100m防水が可能となった。なおベゼル表面の仕上げは、2004年モデルより、最新版のほうが当然良い。鏡面の歪みは小さくなり、時計の見た目はかなりクリアになった。(右上)表面をわずかに荒らした、オパーリン仕上げの文字盤。スポーティさを強調するため、針は太くされ、また蓄光塗料が盛られるようになった。とはいえ、酸化処理した黒い針や、わずかに細く仕立てられたインデックスは、ドレスウォッチに固有のものだ。カルティエの微妙なさじ加減を感じさせるディテールである。(中)厚みを増したケースサイド。とはいえ実際のケース厚はわずか10.34mmしかない。加えてケース全体を湾曲させることで、腕馴染みはいっそう快適だ。サントスの美点である優れた装着感は、マッシブに振ったこのモデルでも不変である。(左下)現行サントスの特徴であるリュウズガード。これもベゼル同様、最新版のほうが仕上げは良い。よりエッジが立つようになり、筋目処理にもムラがない。(右下)ケースサイドとラグ。スポーツウォッチらしく、ラグは短く太め。また重くなった時計を支えるためか、ストラップはピンではなく太いマイナスネジでケースに固定される。



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