セイコー/セイコーダイバー

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.11.25

Marinemaster Professional Mechanical 1000m [2015]
初代600mダイバーの外装設計を受け継ぐ最新作

プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル メカニカル 1000m 飽和潜水用防水モデル Ref.SBDX013
2015年初出。2009年発表のSBDX011を全面改良したモデル。セラミックス製の外胴や、より明るいルミブライト(蓄光塗料)が塗布された針やインデックス、強化シリコン製バンドなど改良点多数。自動巻き(Cal.8L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ti×セラミックス(縦53.5×横52.4mm)。1000m防水。35万円。

 1975年以降、セイコーの飽和潜水用ダイバーズウォッチは、ムーブメントの種類にかかわらず、その多くがワンピースケースを採用している。コストはかかるが、機密性に優れるワンピースケース。後にセイコーダイバーの設計を模倣した他社も(IWCとポルシェデザインのダイバーズウォッチは、明らかにその強い影響を受けている)、ワンピースケースだけは採用できなかった。切削に高度なノウハウが必要だったためである。

 09年に発表された「マリーンマスター プロフェッショナル メカニカル」(SBDX011)は、セイコーインスツル製ダイバーの頂点であり、セイコーにとっても、原点回帰というべきモデルになった。というのもチタン製のワンピースケースに機械式ムーブメントの組み合わせは、初代〝600mダイバー〟と同じだったのである。このモデルは15年に全面改良を受け、SBDX013/014に進化した。新旧モデルはほぼ同じに見えるが、ケースサイズと重さ、そして素材が異なる。最も重要な改良点は外胴の材質で、硬化処理した純チタンから、セイコーエプソン製の〝1000mダイバー〟に同じく、ジルコニアセラミックスに改められた。つまりメカニカルを搭載したダイバーズウォッチも、クォーツ搭載機と同じスペックを持つに至ったのである。

 初代600mダイバーに倣った外装を持つとはいえ、SBDX013/014の仕上がりは別物だ。かつて職人が手作業で削っていたチタンケースは、最新の工作機械により歪みなく切削されるようになった。ヘアライン仕上げの針も、かつてよりはるかに肉厚だ。

 世界最高のダイバーズウォッチを目指した1975年の600mダイバー。40年の歳月は、形状はほぼそのままに、しかし内実を大きく進化させたのである。

(左上)SBDX011のインデックスは、初代600mダイバーに同じく、12時以外はすべて丸だった。しかし最新作のSBDX013/014では、3、6、9時がバーになり、デイトリングも黒に改められた。分針と秒針も、外胴モデル共通のデザインに変更されている。(右上)初代から受け継いだリュウズ機構。防水性能は公式には1000m。しかし前モデルのSBDX011は、4299mという防水性能を記録している。しかもこれは、製品の中から無作為に抽出した個体であった。(中)外胴は硬化処理を施した純チタン製からジルコニアセラミックス製に変更された。なおSBDX011以降、外胴の固定ネジはプラスから六角に変更された。(左下)チタン製のワンピースケースは林精機製。精密な加工は、1000mダイバーの防水性を一層高めた。(右下)前作とほぼ同じケース構成。ただしストラップはポリウレタンからシリコンに変更された。ポリウレタンに比べて強度が低いとされるシリコンだが、セイコーはポリウレタンに遜色ない引っ張り強度と耐久性を与えている。