カレンダー機構 第1回「カレンダー時計」

FEATURE時計機構論
2019.05.05

コンプリート・カレンダーを搭載したヴァシュロン・コンスタンタン「ハーモニー・コンプリートカレンダー」。月と曜日を小窓で表示。日付を針で示す。

腕時計にカレンダー表示が盛んに登場するのは1920年代の頃から。複雑時計のスペシャリストとして名高いスイスのオーデマ ピゲは、日付・曜日・月をすべて表示するフルカレンダー機構を初期の腕時計に組み入れた先駆的なメーカーだった。

 1920年代のカレンダー・ウォッチの典型例をあげると、まず著名なスイスのメーカーではオーデマ ピゲが思い浮かぶ。同社はこの時期にすでに日付・曜日・月(12か月の月名)をそれぞれ独立したサブダイヤルで針によって示す腕時計を発表している。ちなみに、このようなカレンダーの3要素を表示する機能に「トリプル・カレンンダー」や「フル・カレンダー」、「コンプリート・カレンダー」などの言葉が当てられているが、日付・曜日・月表示の3点セットが揃うことを示している点ではどれも同じである。

 また同じ1920年代のオーデマ ピゲからは、日付を針で示す「ポインター・デイト」と、曜日と月を二つ並んだ小窓で表示する「ダブル・ギシェ(ギシェはフランス語で窓の意味)」を組み合わせたタイプも登場している。この場合、曜日と月の表示は、窓の下に組み込まれた回転ディスクが担う。アナログ表示のポインタ—・デイトとデジタル表示のダブル・ギシェから成るトリプル・カレンダーは、表示をコンパクトにすることができ、個々の情報も見やすいので、戦前から現在に至るまで、さまざまなブランドに採用され、カレンダー表示の一つのクラシックになっている。