鳴り物時計第1回「アラーム機構 Part.1」

FEATURE時計機構論
2018.06.20

ヴァルカン「クリケット」
(左)実用に十分な「世界初のアラームウォッチ」をうたった当時のアメリカ向け広告。(右)1947年に発表された歴史的なオリジナルモデル。手巻きムーブメントCal.120は、時計用とアラーム用のゼンマイがあり、両ゼンマイをリュウズひとつで巻き上げることができる。2時位置のプッシュボタンは、巻き上げや時刻調整、アラーム針の設定などに際してリュウズのポジションを切り替えるためのもの(いずれもヴァルカン社資料より)。
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

「アラーム」とは、簡単に言うと事前に設定した時刻に音を発する機構だ。起源は西欧において機械式時計が発明された初期(一説では13世紀末)にまでさかのぼるというから、時計の機構としては最も古い部類に属す。一定の教会時間に従って勤行を行うキリスト教修道士にとって時刻のリマインドにアラームが役立てられたという。ちなみに、時計の世界で伝統的に使われているフランス語では、アラーム機構のことを「レヴェイユ(=目覚まし)」と呼び、製品名としてもよく使われてきた。

 本格的な実用「腕時計」が登場する20世紀初頭にこの腕時計用のアラーム機構も登場する。機構の基本原理を先に簡単に説明しておこう。まずメインの時針と対になるアラーム時刻の設定針(もしくはディスク)があり、ここへゼンマイに蓄えられた動力をハンマーへと伝えるためのカムを組み込む。カムは、いわば時限装置のような役割を果たす。そしてメインの時針が設定時刻に達すると、カムが作動してアラーム用のゼンマイの動力が一気に解放され、その力でハンマーが小刻みに振動する。ハンマーはケースの裏蓋に据え付けられたピンを叩いて、ジリジリという音を生じさせるのだ。こうしたアラームの仕組みは19世紀末にスイスで特許を取得したというが、腕時計のサイズに合わせて小型化するのが難しく、目覚ましなどの用途に役立つほどの音量が得られないといった問題があり、完全な実用化までには長い時間がかかった。

 アラームを組み込んだ腕時計用の小型ムーブメントを初めて開発して1912年に特許を取得したのはスイスのエテルナだ。同じく20世紀初頭にはムーブメントメーカーのア・シルド(AS)やアンジェラスもアラーム機構を内蔵したムーブメントを開発しており、とりわけ伝説の“ASキャリバー”は、1990年代の頃まで、いくつかの時計ブランドのアラームウォッチにも使われていた。ゼニスも20年代には、時計用とアラーム用にそれぞれ独立したゼンマイを備え、3時位置にアラーム設定用のサブダイアルを配したモデルを開発しているが、実用性の点ではいまひとつという評価が大勢を占める。