ダイバーズウォッチ第1回「 防水時計の歴史」

FEATURE時計機構論
2017.07.14

腕時計用の防水ケースを開発した先駆者はロレックス。1926年から現在に至るまで90年以上も受け継がれるオイスターケースは、裏蓋とリュウズをねじ込み式によってケース本体と隙間なく一体化し、高い防水性と堅牢性を実現。現在の一般的なスポーツウォッチにも広く用いられている方式だ。
菅原 茂:文
Text by Shigeru Sugawara

 現在のような腕時計の原型は、一般的に20世紀初頭に誕生し、その進化の過程で備わった重要な機能の一つに「防水」がある。本連載は、時計の仕組みを知るために「機構論」と題しているが、動的な機構についてはひとまず置いておいて、夏のテーマとしてこの腕時計の防水の始まりから、高機能なダイバーズウォッチに焦点を当ててみる。

 腕時計は文字通り「腕に着ける時計」であり、英語でもまったく同様に「リストウォッチ」という。この種の時計は、衣服のポケットに収めて使う懐中時計とは違い、つねに外的な環境のもとで使うので、水分、空気中の湿気、ほこり、あるいは肌に生じる汗などが時計のケース内部に入り込むリスクが高い。それらが精密な機械機構であるムーブメントに多少なりともダメージを与えるのは、容易に想像がつくだろう。そこで、外部からの影響を遮断する気密性の高い腕時計用のケースは、早くから時計メーカーの課題になっていた。

 防水ケースの先駆者として、歴史に名を刻むのはロレックスである。同社の説明には「ロレックスが1926年に発明したオイスターは、ベゼルと裏蓋、リュウズがミドルケースにねじ込まれた特許取得のシステムを備えた世界初の腕時計用の防水ケース」とある。特許のポイントは、ねじ込み式である。つまり、ねじ切りを施した各部を締め付けて隙間なく一体化することによって防水性と同時に堅牢性を実現する非常にクレバーな仕方である。とくに画期的なのはねじ込み式のリュウズだった。

 このオイスターケースをめぐっては、金属ブロックをくり抜いてつなぎ目のないケースを開発したのはもともとイギリスのオイスター社であり、同社を買収して傘下に収めたロレックスが“オイスター”の名で防水ケースの特許を取得したことなど、興味深い逸話に事欠かないが、ここでは現ロレックスの公式見解を簡単に紹介するにとどめておこう。