シェルマン日本橋三越店では現在、「OPENWORK WATCH FAIR」が開催されている。ムーブメントの構造美を前面に押し出したオープンワークウォッチに焦点を当て、チャペックやアーミン・シュトローム、ペキニエなど個性豊かなブランドが集結。設計そのものがデザインとなるこのジャンルの魅力を、時計の構造から時間を捉える新たな視点とともに紹介する。
シェルマン日本橋三越店で開催される「OPENWORK WATCH FAIR」とは?
シェルマン日本橋三越店では、2025年6月4日(水)から7月1日(火)までの期間、「OPENWORK WATCH FAIR ~時を解き放つ美。個性際立つ、オープンワークウォッチの世界~」を開催する。
本フェアの主題は、機械式時計が持つ精緻なムーブメントを大胆に可視化した「オープンワークウォッチ」。各ブランドが追求する独創的なデザインと機構美に焦点を当て、その奥深い魅力を紹介するものだ。
一般的に、機械式時計のムーブメントを鑑賞する手段としては、裏蓋をサファイアクリスタル仕様とした「シースルーバック」が広く知られている。それに対し、オープンワークはダイアル側からムーブメントの構造体を大胆に露出させ、通常は文字盤や地板、ブリッジなどに隠れているムーブメントの一部を見せるものである。単に内部構造を見せるにとどまらず、パーツには繊細な装飾や仕上げが施され、設計そのものがデザインとして昇華され、見どころとなっている点も見逃せない。機構が奏でるリズムを音ではなく視覚で味わう、それがオープンワークの神髄である。
そこにあるのは「時を装う」という目的を超え、「時を感じ、考える」という知的な体験である。「時計とは何か? 時とは何か?」。そうした根源的な問いに立ち返るきっかけとなるだろう。
このフェアでは、知的好奇心と審美眼を刺激する1本に出合えるはずだ。洗練された審美眼に基づく設計で知られる「チャペック」、革新的なレゾナンス機構などで注目を集める「アーミン・シュトローム」、フランスのウォッチメイキングと現代性を融合させた「ペキニエ」など、いずれも独自の美学を体現するメゾンの稀少な作品が一堂に会する。
フェアの概要
「OPENWORK WATCH FAIR ~時を解き放つ美。個性際立つ、オープンワークウォッチの世界~」
会期:2025年6月4日(水)~7月1日(火)
会場:日本橋三越本店 本館6階 ウォッチギャラリー/cal.BAR
審美性と革新性を併せ持つオープンワークウォッチ5選
数多くのオープンワークウォッチが取り揃えられる本イベントにおいて、特に注目したいタイムピースを5本紹介する。いずれも限定生産であり、ブランドや時計師の理念が色濃く反映された珠玉の逸品である。
チャペック「プラス・ヴァンドーム コンプリシテ スターダスト・コバルト」
手巻き(Cal.SXH8)。44石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWGケース(直径41.8mm、厚さ13.3mm)。5気圧防⽔。世界限定13本。2200万円(税込み)。
チャペックと独立時計師ベルンハルト・レデラーとのコラボレーションにより生まれた、わずか13本のみの稀少モデル。ダブル・エスケープメントが搭載され、ふたつのテンプが互いの誤差を打ち消し合い、高い精度を実現する。またオープンワークデザインにより、ふたつのテンプと12時位置のディファレンシャル・ギアの特徴的な動きを文字盤側から堪能することができる。ブリッジにはサファイアクリスタルが採用され、ムーブメントの奥深くまで光が差し込むようになっている。風防にはドーム型サファイアクリスタルを採用。ホワイトゴールド製ケースとブルーPVDコーティングが施されたインデックスと針、繊細なサーキュラーグレイン仕上げの文字盤が、モダンで洗練された印象を与える。
アーミン・シュトローム「ワンウィーク ファースト・エディション」
手巻き(Cal.ARM21)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約7日間。SSケース(直径41.0mm、厚さ10.6mm)。10気圧防水。世界限定25本。627万円(税込み)。
2010年に発表された初の自社製キャリバーを再設計し、スケルトン構造を通じてその彫刻的な美をダイアル側から堪能できる限定25本モデル。約7日間のロングパワーリザーブに対応し、懐中時計の伝統を想起させるコーンシステムによるパワーリザーブ表示を備える。ムーブメントの随所に熟練工の手仕事による面取りやサテン仕上げが施され、ライトブルーのPVD加工が現代的な個性を際立たせる。フォルム、機能、美、エルゴノミクスが調和し、ダイナミックに表現されている。
ペキニエ「ロワイヤル サフィール ペルラージュ ジャパン・リミテッドエディション」
自動巻き(Cal.EPM01)。39石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約88時間。SSケース(直径42.0mm、厚さ12.3mm)。10気圧防水。日本限定17本。231万円(税込み)。
フランスのウォッチメイキングと革新を体現するマニュファクチュール、ペキニエによる日本限定特別モデル。文字盤を大胆に省略し、ムーブメントの美観を前面に押し出した意欲作である。地板には繊細なペルラージュ装飾が施され、サファイアクリスタル風防の裏面にプリントされたインデックスと相まって、透明感と奥行きが織りなす視覚的立体感を演出する。心臓部には、自社開発ムーブメント「カリブル・ロワイヤル」を搭載。効率的なセンターシャフト・ドライブ機構や、フラット3ディスク式のジャンピングデイデイト表示など、国際特許を取得した数々の革新技術を内包している。上品なライトベージュのアリゲーターストラップが、洗練された全体像に調和をもたらす。
クロノスイス「オーパス・クロノグラフ スケルトン」
自動巻き(Cal.C.741S)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ14.8mm)。10気圧防水。279万4000円(税込み)。
1995年に登場し、300点以上のパーツで構成された機構美で名を馳せた「オーパス・クロノグラフ」の現代的進化形である。スケルトナイズされたダイアルからは、地板、ブリッジ、歯車といったメカニズムの連動をつぶさに観察でき、まさに“時を刻む芸術”と呼ぶにふさわしい。クロノグラフ作動時には、各パーツが精緻に連携しながら機能する様子を視覚と触覚で楽しめる。裏蓋からのぞくムーブメントの装飾もまた、職人技の粋を極めた仕上がりで、所有者に誇りと喜びを与える。
クドケ「クドクトパス」

手巻き(ベースキャリバー、ユニタス6498)。18石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41.0mm、厚さ9.3mm)。5気圧防水。187万円(税込み)。
ドイツの独立時計師ステファン・クドケによる、芸術と機械技術の融合を体現したユニークピース。モチーフはタコ。文字盤上でうねりを上げる触手は、数mmの厚さの中に精妙な起伏をつけ、まるで今にも動き出すかのような躍動感を宿す。驚くべきはその製作工程である。デザイン、ムーブメントのスケルトン加工、各部パーツの仕上げ、メッキ、そしてすべての彫金に至るまで、すべてをクドケ自らの手で完結させている。構想から完成までをひとりで成し遂げる彼のような存在は、現代の時計界において極めて稀である。量産品にはない手作業から生まれる温かみが、本作の特別な魅力となっている。
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