スウォッチは、AIを活用して「唯一無二」のスウォッチを生み出す「AI-DADA」を開始する。ユーザーは、ウェブサイト上でプロンプト(テキストによる指示)を打ち込んで生成した基本デザインを元に、インデックスの形状やムーブメントカラーを設定し、注文するだけだ。このサービスは、先行して2025年11月21日よりスイスでスタートし、2026年以降、展開国を順次拡大する予定だ。

AIデザインツール「AI-DADA」による「唯一無二」のスウォッチを生み出す新サービス
スウォッチは、AIを活用した新しいデザインツール「AI-DADA(アイ・ダダ)」により、オリジナルウォッチを提供するサービスを開始する。このサービスは、先行して2025年11月21日よりスイスのswatch.comでスタートし、2026年以降、展開国を順次拡大する予定だ。AIによるデザイン生成から製品製造を繋げるサービスの例は存在するが、スウォッチほどの生産規模を持つブランドでは先駆的な取り組みである。
最新の「芸術的知能」と、スウォッチのインスピレーション源に根差したAI-DADA
AI-DADAは、スウォッチが「AI=アーティスティック インテリジェンス(芸術的知能)」と位置付ける独自のAIツールである。ChatGPTに対して「芸術的知能とは何か」と問い、その回答を出発点としつつ、創造性や直感的な表現を知能の一形態として捉える姿勢を、スウォッチ流に具体化したものだ。
名称の「DADA」は、1916年にスイスのチューリッヒで始まったダダ運動に由来する。遊び心あふれる実験性と慣習への拒絶を特徴とするこの芸術運動は、長年スウォッチにとってのインスピレーション源だ。スウォッチは、この文脈をAI-DADAという新世代のツールおよび、それを用いたサービスに取り込んだのだ。
AI-DADA には40年以上にわたるスウォッチの時計、コラボレーションモデル、アートプロジェクトなどのデータを学習させている。よって、AI-DADAが生成するデザインは、スウォッチらしい色彩感覚とポップな世界観から外れない点が特徴だ。そのため、ユーザーに高度なデザインスキルが無くても、自身のアイデアを起点に「スウォッチらしい1本」かつ「唯一無二」の腕時計をデザイン可能である。
3ステップで作る、唯一無二の腕時計
AI-DADAによって腕時計を生成する操作は、たった3ステップで完了する。最初のステップは、準備とデザインのテイストを設定する操作だ。スウォッチアカウントでログインし、専用の画面から自分のイメージをプロンプト(テキストでの指示)によって入力する。ミニマルなデザインでも、あえて混沌としたイメージでもよく、数分以内にAI-DADAが1本のウォッチデザインとして可視化してくれる。
第2のステップでは、細部の仕上がりを自分好みに整える。ベースは直径41mmの「ニュー ジェント」である。ここに、ユーザーがAI-DADAで生成した基本デザインが当てはめられ、インデックスの有無やスタイル、ムーブメントカラーを選んでゆく。
最後のステップは、オンライン上での注文だ。デザインは自動的には保存されないため、AI-DADAの画面を閉じるとデザインは失われてしまう。さらに、同じプロンプトを再利用しても、全く同じデザインにはならないよう設計されているため、気に入ったデザインが生成出来たら、迷わず注文する必要がある。

思い通りのデザインを生み出すための“クリエイティブ・チャレンジ”
通常のAIツールでは、気に入った生成データを得るために生成を繰り返すか、試行錯誤により想像しているイメージに“寄せてゆく”ことが通例だ。しかし、AI-DADAでは、ユーザーが1日にチャレンジ可能なプロンプトは3つまでだ。
この限られた試行回数の中でアイデアを練ることが求められる点を、スウォッチは“クリエイティブ・チャレンジ”と位置付けている。毎回の入力がひとつのチャレンジとなり、その結果として生まれるウォッチは、特別なものとしての意味合いを帯びる。しかも、先にも述べた通り同じプロンプトであっても完全に同一のデザインとならないため、“誰かと同じものを生成する”こともできない。
この特別さを示すように、AI-DADAで生成され、製作されたウォッチのケースバックには、「1/1」という刻印が施される。この、さりげなくも印象的なディテールは、「ひとつひとつのウォッチが本当に唯一無二である」ことを伝えるものとなっている。
アートをより身近にするAI-DADAの存在
スウォッチは創業当初から、自己表現を尊重し、アートを身近なものとして広く開いていく姿勢を打ち出してきた。アクションスポーツや音楽シーンとの連携、アーティストとのコラボレーション、名画を再解釈した特別コレクションなどが代表例だ。
AI-DADAは、その姿勢を最新のテクノロジーによって次のレベルに引き上げる試みだ。特別なスキルが無くとも、誰もが自分のアイデアを形にし、完成品として着用できるようになる点は、従来とは異なる体験をもたらす。これによって、購入者は製品の共同制作者であるとの考え方を具現化している。



