稀代の時計師 フィリップ・デュフォーの作品4点をフィリップスのジュネーブオークションに出品

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2021.10.19

イギリスのオークションハウス・フィリップスが、2021年11月5日(金)と7日(日)開催予定のジュネーブオークションで、フィリップ・デュフォーの作品4点を出品することを発表。個人コレクターから提供された、現代における最も優れた時計師のひとりが製作した時計が4本そろう、非常に貴重な出来事となるだろう。

フィリップ・デュフォー


2度と訪れないであろう貴重な機会

 フィリップスは、2021年11月5日(金)と7日(日)に開催予定の「ジュネーブ 時計オークション XIV」にて、フィリップ・デュフォーが製作した4本の時計を同時に出品することを発表した。これらの作品はすべてオークション市場に登場したばかりで、長年にわたって彼の作品を収集してきた個人のコレクターから提供されたものだ。

 フィリップ・デュフォーは、現代を生きる最も優れた時計師のひとり、と称される人物だ。独立時計師という言葉を広め、彼が手掛けた数多くの作品は、世界中のコレクターから極めて高い評価を得ている。

 1970年代後半に時計師として独立した彼は、古い時計を修復することから始め、その約10年後には懐中時計や腕時計を製作した。グラン・ソヌリを搭載した懐中時計と腕時計、世界初のダブル脱進機を組み込んだ「デュアリティ」、そして古典的な美しい装飾を施した「シンプリシティ」を発表。彼が自身の名を冠した作品は、これら4本のみが存在する。

フィリップ・デュフォー

今回のオークションに出品されるのは、イエローゴールド製のグラン プチ ソヌリ 懐中時計 ナンバー1や、グラン プチ ソヌリ 腕時計 ナンバー1、ピンクゴールド製のデュアリティ、プラチナ製のシンプリシティの4本。フィリップ・デュフォーが独立時計師として歩んできた、歴史そのものを体現した4本の傑作が、ワンシーズンの間にひとつのオークションハウスから出品されることは、史上初のことである。

 バックス&ルッソのシニアコンサルタントを務めるオーレル・バックスと、フィリップスのヨーロッパと中東地域のウォッチ部門責任者を務めるアレクサンドル・ゴトゥビは、共同で次のようにコメントを残した。

「私たちや世界中の多くの⼈々にとって、フィリップ・デュフォーはミケランジェロに相当する時計職人であり、彼の作品がもたらす意味は計り知れません。このフィリップ・デュフォーによる4種の“セット”を出品することは、私たちにとって大変画期的な出来事でした。グラン プチ ソヌリ 懐中時計、グラン プチ ソヌリ 腕時計、デュアリティ、シンプリシティの4作品を出品させていただけるこの機会は、気が遠くなるようなものです。 デュフォーは時計界における生きたアイコンであり、彼の作品は現代の偉大な芸術家の作品と同様に切望されています。初めてのグラン プチ ソヌリ腕時計を提供できることは、大変素晴らしいことだと思っています。 私たちは、ビジョンと情熱を持ち、比類のないコレクションを根気よく作り上げたオーナー様から、このコレクションを託していただいたことを光栄に思います。 デュフォーの半生において創り上げた時計の数は、モディリアーニやマンネなどの巨匠の絵画よりも少なく、デュフォーの愛好家にとって、このコレクションはデュフォー作品のグランドスラムと⾔えるでしょう」

グラン プチ ソヌリ 懐中時計 ナンバー1

フィリップ・デュフォー

フィリップ・デュフォー「グラン プチ ソヌリ 懐中時計 ナンバー1」
18Kイエローゴールド製。ユニークピース。エスティメイト:40万〜80万スイスフラン。約4943万〜9886万円(1スイスフラン=123.58円、2021年10月18日現在、以下同)。

 フィリップ・デュフォーがグラン ソヌリの製作に挑戦するきっかけとなったのは、1980年代初頭、大手ブランドにために製作した5本の懐中時計だった。80年代後半には、彼独自のグラン プチ ソヌリ懐中時計を製作した。このユニークピースはその1本目の作品であり、ダイアルにフィリップ・デュフォーの名前が記された、唯一の懐中時計である。

フィリップ・デュフォー

 グラン ソヌリは、毎正時と15分ごとにチャイムを自動的に鳴らす機構で、プチ ソヌリ モードにすると15分刻みのチャイムだけが鳴るように切り替わる。また、ケースバックのカバーを開けると、彼の名前と“No.1”という刻まれた文字を見ることができる。

グラン プチ ソヌリ 腕時計 ナンバー1

フィリップ・デュフォー

フィリップ・デュフォー「グラン プチ ソヌリ 腕時計 ナンバー1」
18Kイエローゴールド製ケース。エスティメイト:100〜200万スイスフラン。約1億2357万〜2億2715万円。

 1989年から92年の間にかけ、グラン ソヌリを搭載した懐中時計のムーブメントを、腕時計用のサイズに小型化させるという難題に取り組み、その結果「グラン プチ ソヌリ ナンバー1」という形で成し遂げた。

フィリップ・デュフォー

 これは世界初の試みであり、今回のオークションに出品された本作は、正真正銘、世界初のグラン プチ ソヌリである。ホワイトゴールドのモデルを2本、イエローゴールド、ピンクゴールド、プラチナのモデルがそれぞれ1本ずつ、計5本のみが製作された。懐中時計と比較して随分と小さいが、搭載する機能はまったく同様だ。

デュアリティ ナンバー8

フィリップ・デュフォー

フィリップ・デュフォー「デュアリティ ナンバー8」
ピンクゴールド製ケース。エスティメイト:80万〜160万スイスフラン。約9886万〜1億9772万円。

 ふたつの並んだテンプが特徴的な「デュアリティ」の着想を得たのは、彼が卒業した時計学校にあった数本のスクールウォッチからだったという。ひとつの輪列がディファレンシャルギアを介して、ふたつの脱進機に動力を伝達するというダブル脱進機を、グラン ソヌリ同様、腕時計のサイズに縮小することに取り組んだ。

フィリップ・デュフォー

 その構想は1996年に実現した。当初は25本の生産を予定していたが、ムーブメント番号「00」の個体を含む9本のみが生産された。そのうちの1本が2017年にフィリップス オークションに出品され、100万ドル近くで落札されたのだ。今回出品された個体はナンバー8、すなわち最後の1本である。

シンプリシティ 37mm ナンバー57

フィリップ・デュフォー

フィリップ・デュフォー「シンプリシティ ナンバー57」
プラチナ製ケース(直径37mm)。エスティメイト:25万〜50万スイスフラン。約3089万〜6178万円。

 グラン ソヌリに続いてダブル脱進機と、複雑なものを手掛けていたデュフォーだが、2000年には手巻きで3針のシンプルな時計「シンプリシティ」の製作に着手した。歯車を支えるブリッジの緩やかなカーブや、大胆な内向きと外向きのアングル、赤いルビー、表面に施された仕上げが、魅惑的な調和をもたらしている。

フィリップ・デュフォー

 部品の製作から仕上げ、組み立てまでを手作業で行うため、ジュウ渓谷にある彼の工房から生み出されるシンプリシティの年間生産本数は10本ほど。今回出品された、57番のムーブメントを搭載した本作は、シンプリシティの中でも初期のモデルのひとつだ。

 希少性を極めたフィリップ・デュフォーの作品につけられたエスティメイトは、低くとも3000万円以上、最高額で2億円近くまでにも昇ると予想されている。果たして、11月開催予定のオークションではいくらの値で誰の手に渡るのか。その結果が待ち遠しい。

フィリップスについて

 フィリップスは、200年以上の歴史を持つ、イギリス発祥のオークションハウスだ。20世紀および21世紀の美術・デザイン分野に特化し、全世界における美術品売買のプラットフォームを提供。モダンアートや写真、書物、時計、ジュエリーなどの分野に特化した専門家を擁している。ニューヨーク、ロンドン、ジュネーブ、香港のサロンでオークションや展示会を開催している。世界各地にオフィスを構え、東京など上記の都市以外でもサポートを行う。

 また、世界のどこからでもアクセス可能なオンライン オークションのプラットフォームを用意。オークションを通した売買の機会を提供するだけでなく、個人売買の仲介や、出品物の鑑定、評価などのサービスを提供している。


Contact info: フィリップス https://www.phillips.com/


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