貴重な宝石を用いたハイジュエリーウォッチの本質は、単なる華やかさではない。宝石をカットして光を操る技術、石を支える構造、そしてそれらを統合するデザイン、すべてが精緻に組み合わさった総合芸術と言えるだろう。歴史の中では、女性のために製造されたモデルが多かったことは事実だ。しかし近年では、男性の感性に響くハイジュエリーウォッチも着実に増えている。時代の価値観を映すその現在地を、時計有識者たちが選出した。

[クロノス日本版 2026年1月号掲載記事]


男性が着用したいハイジュエリーウォッチ

10位 ブルガリ/オクト ローマ ウォッチ全般

15point / 2persons

オクト ローマ ウォッチ

ブルガリ「オクト ローマ ウォッチ」
手巻き。Ptケース。要価格問い合わせ。(問)ブルガリ・ジャパン Tel.0120-030-142

ブルガリらしいグラマラスなムード。配色も綺麗。(篠田)

9位 ヴァシュロン・コンスタンタン/トラディショナル全般

16point / 2persons

トゥールビヨン・ハイジュエリー

ヴァシュロン・コンスタンタン「トゥールビヨン・ハイジュエリー」
自動巻き。18KWGケース。数量限定。ブティック限定。価格要問い合わせ。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755

インヴィジブルセッティングでパヴェセッティングされた158個のバゲットカットダイヤモンドが豪華の極み。(菅原)

8位 ショパール/アルパイン イーグル全般

24point / 4persons

アルパイン イーグル 41 フローズン サミット

ショパール「アルパイン イーグル 41 フローズン サミット」
自動巻き。18Kエシカルホワイトゴールドケース。世界限定8本。1億4511万2000円(参考価格)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922

「アルパイン イーグル 41」のジュエリーモデルは、メンズらしいスポーツシックのデザインをフルパヴェで贅沢に表現。ウォッチメーカーとジュエラーの両面を持つショパールらしさを発揮。(菅原)

7位 ロレックス/ 「オイスター パーペチュアル デイデイト」全般

28point / 2persons

オイスター パーペチュアル デイデイト 40

ロレックス「オイスター パーペチュアル デイデイト 40」
自動巻き。18KYGケース。

実は数多くの良質なハイジュエリーウォッチを世に送り出しているロレックス。石とダイアルの色選びのセンスは常に他のお手本にもなっている。Ref.228348RBRの場合にはグリーンのグラデーションダイアルとイエローゴールドケース、ダイヤモンドの組み合わせが秀逸。シンプルなデザインなので、さりげなく着けられるハイジュエリーウォッチとして。(安藤)

6位 ピアジェ/ピアジェ アンディ・ウォーホル全般

30point / 2persons

ピアジェ アンディ・ウォーホル

ピアジェ「ピアジェ アンディ・ウォーホル」
自動巻き。18KWGケース。6160万円(税込み)。(問)ピアジェコンタクトセンター Tel.0120-73-1874

欧州初のクォーツ式ムーブメントBeta21を搭載し、アンディ・ウォーホルが愛用した70年代の時計を原点とする“アンディウォッチ”。オニキスなど半貴石のダイアルと、段つきゴールドケースがいかにもアイコニックだが、その段に貴石を配したモデルはより華やか。Ref.PGG0A50237はオパールを採用。石選びのセンスもさすがピアジェという感じ。(安藤)

5位 グランドセイコー/マスターピースコレクション SBGD223

32point / 4persons

マスターピースコレクション SBGD223

グランドセイコー「マスターピースコレクション SBGD223」
手巻き。Ptケース。3850万円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)Tel.0120-302-617

いわゆる「獅子モデル」のハイジュエリーウォッチ。プラチナにセットされた600個を超えるラウンドやバゲットカットダイヤモンドのギラギラ感は圧倒的。(菅原)

4位 ハリー・ウィンストン/「HW オーシャン」全般

41point / 3persons

HW オーシャン・デイト ムーンフェイズ オートマティック 42mm

ハリー・ウィンストン「HW オーシャン・デイト ムーンフェイズ オートマティック 42mm」
自動巻き。18KWGケース。世界限定25本。2479万4000円(税込み)。(問)ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション Tel.0120-346-376

「HW オーシャン・デイト ムーンフェイズ」Ref.OCEAMP42WW005は、オフセンターの時刻表示に加え、ポインターデイト表示とムーンフェイズを圧巻のジェムセッティングで取り囲んだ、男のための究極ハイジュエリー・モデル。背景となる文字盤ベースはブルールテニウムクリスタルという素材で、この輝きが素晴らしい。(名畑)

3位 ルイ・ヴィトン/タンブール オトマティック コンバージェンス プラチナ ダイヤモンド

57point / 4persons

タンブール オトマティック コンバージェンス プラチナ ダイヤモンド

ルイ・ヴィトン「タンブール オトマティック コンバージェンス プラチナ ダイヤモンド」
自動巻き。Ptケース。1017万5000円(税込み)。(問)ルイ・ヴィトン クライアントサービス Tel.0120-00-1854

ケースの上面を鬼のように磨き上げた「タンブール オトマティック コンバージェンス」。そこにあえてダイヤモンドを埋め込んだのが本作である。あの磨きが見られないのはもったいないし、視認性もゼロに等しいが、ここまで振り切ってしまうと好感が持てる。時計というよりも、ジュエリーとして使い倒したい方に。筆者はとても好きだ。(広田)

2位 オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オートマティック全般

60point / 4persons

ロイヤル オーク オートマティック

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク オートマティック」
自動巻き。18KWGケース。価格要問い合わせ。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000

本作の良さはなんといっても、あのジェンタのブレスレットに配置されたダイヤモンド。これにより、よりデザインの面白さが強調されている。ドレスアップにももちろんいいが、むしろカジュアルな着こなしで楽しみたい。(安藤)

ケースからダイアル、ブレスレットまでスノウセッティングによるフルパヴェだが、ホワイトゴールドとダイヤモンドによる白いモノトーンが時計を控えめに見せている。(菅原)

1位 シャネル/J12 BLEU全般

68point / 4persons

J12 BLEU サファイア

シャネル「J12 BLEU サファイア」
自動巻き。セラミックケース。2519万円(税込み)。(問)シャネル カスタマー ケア センター Tel.0120-525-519

マットな質感と深みのあるブルーが特徴的な、ブルーセラミックケースがセンセーショナルな話題を呼んだJ12BLEU。そのベゼルに配するためにシャネルが選んだのはブルーサファイア。「J12 BLEU サファイア」という、シックでありながら主張もできるこの組み合わせは、まさに今手にしたいハイジュエリーウォッチのお手本。(安藤)

絶妙な色合わせで、新たな魅力を引き出した。(篠田)


選考委員による選定モデルの詳細

菅原 茂(71歳) 時計ジャーナリスト
「技術と装飾のハイ×ハイ」

メンズのダイヤモンドウォッチ自体は昔から多く存在しているが、コンプリケーションとジュエリーを組み合わせて「ハイ」をうたうモデルは確実に増えた。「男性が着用したい……」という趣旨はよく分からないが、自分では着けないであろう時計を選んだ。このクラスとなると順位付けも意味がないだろう。

  1. ハリー・ウィンストン/オーシャン全般
  2. シャネル/J12 BLEU ダイヤモンド トゥールビヨン
  3. H.モーザー/ストリームライナー・トゥールビヨン スケルトン レインボー
  4. ピアジェ/ピアジェ アンディ・ウォーホル Ref.PGG0A50237
  5. ヴァシュロン・コンスタンタン/トラディショナル トゥールビヨン・ハイジュエリー
  6. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オートマティック
  7. ショパール/アルパイン イーグル 41
  8. グランドセイコー/マスターピースコレクション SBGD223

篠田哲生(50歳) ウォッチディレクター
「これだけは、餅は餅屋と思いたい」

ラグジュアリーメゾン製の時計の完成度はとても高く、「時計専業ブランドでなければ」という考えはもはや時代遅れとなった昨今。だからこそハイジュエリーウォッチでは、ジェムセッティングやジュエラーならではの表現力に富んだ、非専業ブランドのものを選びたい。時計の細部にまでメゾンのらしさが表現されている。それは揺るぎない魅力だ。

  1. ルイ・ヴィトン/タンブール オトマティック コンバージェンス プラチナ ダイヤモンド
  2. シャネル/J12 BLEU サファイア
  3. ハリー・ウィンストン/エメラルド 33mm Ref.EMEQHD33WW002
  4. カルティエ/パンテール ドゥ カルティエ ウォッチ Ref.WJPN0044
  5. ピアジェ/ピアジェ ポロ デイト Ref.G0A46018
  6. ショパール/ハッピースポーツ Ref.274808-5001
  7. カルティエ/タンク フランセーズ ウォッチ Ref.W4TA0028
  8. ショパール/アルパイン イーグル 36 サミット Ref.295370-1006
  9. ブルガリ/オクト ローマ ウォッチ Ref.103828
  10. ジェイコブ/ザ ミステリー トゥールビヨン

安藤夏樹(50歳) 時計ジャーナリスト
「実用性重視から美的価値へ」

カラーストーンによるデザインが流行したが、今、男性が着けるならワントーンが気分だ。スポーツモデルはバゲットダイヤを軸にした構成が心をくすぐる。ドレスウォッチに少しの石というのも好きだが、エレガントスポーツ系やラグスポ系ハイジュエリーを、デニムでドレスダウンして装うのもいい。今回は“突き抜けた”時計を選んだ。

  1. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オートマティック
  2. シャネル/J12 BLEU サファイア
  3. ピアジェ/ピアジェ アンディ・ウォーホル Ref.PGG0A50237
  4. パテック フィリップ/ノーチラス Ref.5811/1460G-001
  5. グランドセイコー/マスターピースコレクション SBGD223
  6. カルティエ/パンテール ジュエリー ウォッチ
  7. ロレックス/オイスター パーペチュアル デイデイト 40
  8. A.ランゲ&ゾーネ/リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ Ref.182.886
  9. ショパール/アルパイン イーグル 41 フローズン サミット

髙木教雄(63歳) ライター
「機械的価値が伴う宝飾時計」

ジュエリーやアクセサリーに興味はないが、まれにうっとり見惚れてしまうジュエリーウォッチと出会うことがある。店頭に並ぶことはめったになく、展示会で腕に載せられるのは仕事の特権だ。キラキラ感控えめなバゲットカットダイヤモンドが好み。セッティングや色石の使い方にセンスがあり、時計ゆえ機械的な魅力も含めてセレクトした。

  1. パテック フィリップ/永久カレンダー クロノグラフ Ref.5271P
  2. ルイ・ヴィトン/タンブール オトマティック コンバージェンス プラチナ ダイヤモンド
  3. ヴァン クリーフ&アーペル/レディ アーペル バル デ ザムルー オートマタ ウォッチ
  4. シャネル/J12 BLEU X-RAY
  5. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オートマティック Ref.15551BC.ZZ.1356BC.01
  6. ハリー・ウィンストン/HW オーシャン・ウォーターフォール オートマティック 42mm
  7. グッチ/GUCCI 25H アンフィシアター
  8. ティファニー/「ジャン・シュランバージェ バイ ティファニー」バード オン ア ロック ツァボライト ウォッチ
  9. ブルガリ/オクト トゥールビヨン サファイア
  10. グランドセイコー/マスターピースコレクション SBGD223

名畑政治(66歳) 時計ライター
「メンズウォッチにピーコック革命を!」

1960年代、孔雀はオスのほうが派手ということから提唱された「ピーコック革命」。実は男だってジュエリーウォッチを身に着けたいという欲求は昔からある。ただし、あまり派手だと敬遠されるから、男性向けにさり気ない宝飾モデルがもっともっとあって良い、とリクエストしておきたい。例によってすべて同列、順位なし。

  • ルイ・ヴィトン/タンブール オトマティック コンバージェンス プラチナ ダイヤモンド
  • ウブロ/クラシック・フュージョン チタニウム ダイヤモンド
  • ブルガリ/オクト ローマ ウォッチ Ref.102956
  • ハリー・ウィンストン/HW オーシャン・デイト ムーンフェイズ オートマティック 42mm Ref.OCEAMP42WW005
  • ボヴェ/ミス・オドレー Ref.AS36011-SD12
  • ピアジェ/アルティプラノ オリジン Ref.G0A45416
  • ヴァシュロン・コンスタンタン/パトリモニー オートマティック Ref.4110U/000G-B906
  • フランク ミュラー/グランド カーベックス ピアノ クロノグラフ Ref.CX40CCATFOPIANOD ACAC
  • パテック フィリップ/カラトラバ Ref.4997/200G
  • クレドール/ゴールドフェザー Ref.GBCF999

広田雅将(51歳)『クロノス日本版』編集長兼アートソルジャー
「増えてほしい、バゲット入りのドレスウォッチ」

私見を言うと、男性用のハイジュエリーウォッチにはバゲットカットのダイヤモンドがマストだ。かつてはニッチだったが、ベゼルの広い“ラグスポ”と相性が良いためか、近年は多く見かけるようになった。この勢いで、薄いドレスウォッチのジャンルに、ブリンブリンでないハイジュエリーウォッチが増えるといいなあ。

  1. ロレックス/オイスター パーペチュアル デイデイト
  2. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク ダブルバランスホイール オープンワーク
  3. ウブロ/MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア レインボー
  4. F.P.ジュルヌ/トゥールビヨン・スヴラン
  5. グランドセイコー/マスターピースコレクション SBGD223
  6. シャネル/J12 エレクトロ
  7. ルイ・ヴィトン/タンブール オトマティック コンバージェンス プラチナ ダイヤモンド
  8. ショパール/アルパイン イーグル 41 フローズン サミット
  9. ヴァシュロン・コンスタンタン/トラディショナル・ムーンフェイズ
  10. ジェイコブ/ビリオネア


ランキングの集計ルール
●選考委員は、各号のテーマに沿った腕時計を10本選び、順位をつける。
●選考委員ひとりあたりの所持ポイントを110点とし、これを1位20点、2位18点…… 10位2点として選考モデルに振り分ける。
●選考された時計が順位無しの場合は、所持ポイントを10等分して、各モデルに11点を与える(選考本数が10本に満たない場合でも、1モデルあたり11点とする)。
●獲得点数が同点となった場合は、選考者数の多いモデル、その中で選考順位の高いモデルの順で優位とする。
●最低有効得票数を2票とする。


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