【76点】モーリス・ラクロア/ポントス S ダイバー

FEATUREスペックテスト
2013.12.03

“潜水現場”に選ばれたのは南ドイツのグアレン湖。水中での検証作業は50分間に及んだ。ダイバーズウォッチはウェットスーツを着た時に巻けてこそのもの。ブレスレットは通常のままではウェットスーツの上からは装着しづらいが、エクステンション部分を事前に伸ばしておけば着用しやすい。加えて、水中では地上以上に視認性がものを言う。サファイアクリスタル製風防の両面無反射コーティングが威力を発揮して、文字盤は斜めから見ても読み取ることができた。ただ残念なことに、素手ではつまみやすいリュウズも、グローブをはめると事情が異なり、水中でのリュウズ操作は想像以上に困難であった。

陸上で伝わりやすい魅力

次は編集部の我々が陸上で検証する番だ。テストウォッチには、湖水の中というハードな環境で使われた痕跡がほとんど感じられなかった。しかも、ウェットスーツの袖にはファスナーがあり、その上からテストウォッチを巻いていたので結構擦られていたはずなのだが、ケースにもブレスレットにもごくごく微細な傷しか見当たらなかった。むしろ、陸での日常的な環境のほうが、カーブを持たせたバックルなどは傷付きやすいのだろう。
多くのダイバーズウォッチと同様、このモデルもやはり水中より陸での使い勝手で魅力が伝わりやすい。地上で文字盤を見ると、時刻の確認は潜水時間を確かめる場合より視認性が高い。ダイバースーツの上からでは窮屈だったブレスレットも、普段通りに着用するときは十分なゆとりがある。加えて、インナーベゼルをちょっとした時間を計るために使う時も、手袋をはめずに操作する分にはリュウズも問題なく扱える。
ところが実際に自分で着けてみると、顔がちょっと曇ってしまった。この時計の直径は大きく43㎜、重量は191g。これは腕にずしりと重い。そして、がっしりしたバックルは、エッジにもう少し滑らかさがほしい。
しかし、こうした重厚感が気になるようであれば、長めに作られている専用のカーフストラップが取り付けられているタイプを選ぶのも手だ。ストラップのカラーはブラウンとブラックの2種類。ラグ間のバーにくぐらせてケース裏を通り、端が肌に当たらないように輪にしたかたちにして、ストラップの横からしっかり縫い留められている。そのため、腕当たりはしなやか。このフィット感は心地よい。尾錠も丁寧にフライスされ、見た目も整っているので気持ちよく使える。
レザーストラップに比べると、ステンレススティール製ブレスレットはいかにもタフな感じで、ちょっとやそっとでは壊れることはなさそうな印象だ。そこに、普段使いの時計としての頼もしさがある。
この安心感は、ダイビング時に限らず、日常生活において着用する際に、選択の指標になるのではないだろうか。生卵を扱うようにびくびくしながら使用するのは、誰しも避けたいに決まっている。プロダイバーが仕事に使うならば、改善が望ましい点はいくつか挙げられるが、日々の生活において、この信頼感は大きな魅力となるだろう。