【87点】ロレックス/オイスター パーペチュアル スカイドゥエラー

FEATUREスペックテスト
2013.08.03

約5㎜のエクステンションリンクを備えたフリップ式のオイスターロッククラスプは、ロレックスの他のモデルでもすでに採用されている。良いものを守り続けるのもロレックスの哲学である。

加工品質の高さはムーブメントにも当てはまる。ロレックスでは常のことだが、ムーブメントが堅牢な裏蓋の内側に隠されているのは残念である。トランスパレントバックであったなら、内部で時を刻む新開発のキャリバー9001を堪能できたことだろう。

キャリバー9001は、追加された新機能によってのみ、ロレックスの標準キャリバー3135やその派生ムーブメントから傑出しているわけではない。特に目立つのは、ボールベアリング式のローターである。これまで、クロノグラフのデイトナ以外のロレックス製ムーブメントにはスライドベアリング式のローターが装備されており、クロノグラフムーブメント以外でボールベアリング式が採用されるのはスカイドゥエラーが初めてである。ロレックスのスライドベアリングに問題があるわけではないが、ボールベアリングのほうが摩耗に対する耐性がより高いとされている。72時間のロングパワーリザーブも、これまではクロノグラフムーブメントに限られていたが、新開発のキャリバー9001では供給可能となった。3100系のムーブメントはパワーリザーブが1日分少なく、フルに巻き上げてから48時間後には時計が停止する。キャリバー9001ではさらに、自動巻き機構もモディファイされており、赤いアルマイト処理が施されたリバーサーのひとつからラチェットがのぞいているのが分かる。これにより、時計師はムーブメントを分解する前に、摩耗の程度やパーツ交換が必要かどうかを判断することができる。ゼニスのエル・プリメロを改良し、2000年までデイトナに搭載されていたキャリバー4030も同じような外観を備えていた。

バランスブリッジに調整用のネジが追加されていることにもすぐに気づくだろう。他のロレックス製ムーブメントとは異なり、キャリバー9001では、天真の軸方向のアガキを2本ではなく、4本のローレットネジで微調整することで、姿勢が変わった時のテンプの誤差を最低限に抑えることができる。
さらに、キャリバー9001では、ロレックス自社製耐震軸受け、パラフレックス ショック・アブソーバがテンプだけではなくガンギ車の軸にも取り付けられている。パラフレックス ショック・アブソーバの採用により、衝撃を吸収する能力が格段に向上し、天真の復元性もより強化される。その上、パラフレックス ショック・アブソーバは点対称な構造になっているので、メンテナンス時に交換が必要な場合でも、取り付けを間違えることはない。

ロレックスが独自に開発したブルーのパラクロム・ヘアスプリングも、キャリバー9001にはもちろん搭載されている。パラクロム・ヘアスプリングは、ロレックスが自社製造するニオブとジルコニウムの合金を原料とする。

ニオブとジルコニウムは真空溶解炉に投入後、2000℃を超える温度で溶解混合され、ここに定量の酸素が加えられる。パラクロム・ヘアスプリングは、優れた耐磁性を持つだけでなく、衝撃に対する耐性も通常のヒゲゼンマイに比べ、格段に高い。パラクロム・ヘアスプリングも、ロレックスではおなじみのブレゲ式エンドカーブを備えており、ヘアスプリングが規則正しく伸縮するのに貢献している。テンワの内側にマイクロステラナットを取り付けたフリースプラング方式の緩急調整も良好な解決策で、専用ツールを使用すれば、テンプを取り外さずに微調整することが可能である。

キャリバー9001では、いくつかの部品がLIGAプロセス(リソグラフィー、電鋳、モールディングを組み合わせた工程)によって製造されている。LIGAプロセスとは、リソグラフィー(露光装置)を利用して製作した金型を使って金属を成形し、マイクロマシン製品を製造する超精密加工技術である。

クローズドバックであるにもかかわらず、装飾についてもいくつか注目すべき点がある。スケルトナイズされたローターには、ローターブリッジと同様にサンブラッシュ模様が施されており、エッジは面取りとポリッシュで丁寧に仕上げられている。ネジ頭のポリッシュ仕上げも美しく、受け石のためにブリッジに開けられた穴にも面取りとポリッシュ仕上げが施され、地板はペルラージュ模様で飾られている。

このムーブメントは、歩度測定機の上ではどのような精度を発揮してくれるだろうか。最大姿勢差は5秒、平均日差はプラス3秒/日と、精度は全体的に良好だった。だが、過去に行ったロレックスのテストでは、我々はもっと良い結果を経験している。また、水平姿勢(文字盤上および文字盤下)と垂直姿勢の間の振り落ちも42度とかなり大きく、完璧とは言い難かった。微々たることかもしれないが、我々の厳しいテスト基準に照らし合わせると、この時計は精度安定性の項目では最大10ポイント中、8ポイントしか獲得することができなかった。
コストパフォーマンスの点でも、満点を獲得することはかなわなかった。ロレックスの場合は、全般的に購入価格に近い好条件で買い取ってもらえるが、これは主にステンレススティールモデルに該当する傾向で、ゴールドモデルにはステンレススティールモデルと同等の査定は期待できないのだ。スカイドゥエラーはレガッタ・カウントダウンを搭載したヨットマスターⅡよりも高額で、ロレックスの中では最も高額なホワイトゴールドモデルである。

とはいうものの、経済的に許されるのなら、スカイドゥエラーを購入すれば、実用的な付加機能を備え、作り込みの抜群な時計を手に入れることができる。スカイドゥエラーの魅力はシンプルな操作性だが、シンプルさを実現するために費やされた労力は並大抵ではなく、そこには最先端の技術が投入されているのだから。