【88点】ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラーII

FEATUREスペックテスト
2012.03.03

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クラスプも丁寧な作りで堅牢そのもの。ロレックスクラウンが添えられた小粋なロックフラップは、とても重宝する。

中身が肝心

丹念な加工は外装だけではない。ケースの中で息づくムーブメントも最新の水準に引き上げられている。自社製キャリバー3187にはロレックスが開発した耐震軸受けのパラフレックス ショック・アブソーバーが採用されている。パラフレックス ショック・アブソーバーは天真が衝撃を受けて揺れ動いた時の安定性が高く、あるべき位置に正確に戻すことができる機構だ。さらに、新しいエクスプローラーIIには、ブルーパラクロム・ヘアスプリングが搭載されている。パラクロムはニオブとジルコニウムの合金だが、このヘアスプリングは完璧なまでの耐磁性を持つだけでなく、従来のものより形状の安定性が断然優れ、形崩れを起こしにくい。エンドカーブはロレックスではおなじみの巻き上げ式。芸術的なまでに曲げられた渦巻きが脈打つように動く。緩急針のないフリースプラング方式も見慣れた機構のひとつだ。テンワに取り付けられたマイクロステラナットは、専用の特製工具で調整される。テンプを押さえているのはがっしりした両持ちブリッジだ。片持ちのテンプ受けと比較すると、このパーツも精度の向上に貢献している。このブリッジのおかげでテンプは上部にゆとりを持って固定されているので、姿勢差誤差が極小で収まるようになっているのだ。

エクスプローラーIIに限らず、ロレックスのプロフェッショナルモデルではケースの裏蓋をトランスパレントにしないのがお決まりだが、ムーブメントは目に触れないにもかかわらず美しく仕上げられている。ローターとローターブリッジには放射状サテン、スティールパーツには筋目、地板にはペルラージュの装飾研磨が施され、ブリッジなどの縁は面取りされて磨き込まれている。さらに、ネジ穴やルビーまでエッジは丁寧に角を落とされ、磨かれているのだ。
さて、ロレックスといえば高精度が決まり文句だが、今回のモデルはどうだろうか? 着用テストではほとんどパーフェクトな結果が出た。日差はプラス1・5秒から2秒の間に収まっていたのだ。ロレックスではクロノメーター基準に則り5姿勢で調整が行われているだけに、歩度測定機にかけたデータは良好であった。だが、「3時右」のポジションでの数値だけは、ほかの姿勢とは明らかな違いが出ている。このモデルはC.O.S.C.認定クロノメーターだが、最大姿勢差は8秒であった。しかし、平均日差はプラス1・5秒となり、総合すると、とても優秀だと言っていいだろう。

ところで、今回のリニューアルに伴って、価格改定が行われた。リニューアル前は56万7000円であったが、新作では69万3000円。これは独自のパラクロム・ヘアスプリングやパラフレックス ショック・アブソーバーを搭載するなど、技術の改良が反映された結果なのだろう。ロレックスは生産体制を近代化し、研磨作業は工業用ロボットを導入している。一品一品が一点物のような職人技的ハンドエングレービングなどは望むべくもないが、逆に最新システムではケースや針、ブレスレット、そして、ムーブメントも出来にむらのないパーフェクトな仕上がりになる。こういった生産体制は年産数が多いからこそ可能なのだが、他人と同じ時計はしたくないというユーザーには、いかに魅力的な時計を作っていてもロレックスはスルーの対象となるかもしれない。

しかし、新型エクスプローラーIIは、ホワイトダイアルというだけで例外的なのだ。ホワイトダイアルは“いかにもロレックスです"という雰囲気を感じさせない。同社のほかのモデルのように、飛行機に乗ったら隣の席の人と同じだったということは、そうそうないと思われる。加えて、購入を申し出ても長く待たされ、ウェイティングリストから自分の名前がしばらく消えないということも少ないだろう。ロレックスのクラシックなモデル群の中にあって、異色な存在と言える。エクスプローラーIIが感性に合うユーザーは、気に入ったら悩むことなくさっと選ぶに違いない。セカンドタイムゾーン機能をまったく利用したことがなくてもだ。そして、日常的に使ってみて分かるだろう。北極や南極に行かなくても、普段の生活の中で思いのほか役に立ってくれることを。それに気付いた時には、今までとは違う世界に足を踏み入れているのかもしれない。

技術仕様
ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラーII

製造者: ロレックス
Ref.: 216570
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、24時間表示、セカンドタイムゾーン、日付表示
ムーブメント: 自社製キャリバー3187、自動巻き、2万8800振動/時、31石、パラフレックス ショック・アブソーバー、巻き上げ式パラクロム・ヘアスプリング、マイクロステラナット付きグリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約48時間、C.O.S.C.認定クロノメーター
ケース: 904Lスティール製、ねじ込み式裏蓋、フラットサファイアクリスタル風防(サイクロップレンズ付き)、リュウズガード、ねじ込み式トゥインロックリュウズ、100m防水
ストラップとバックル: 904Lスティール製イージーリンク付きオイスターロックブレスレット
サイズ: 直径42mm、厚さ12.3mm、重量152g
バリエーション:
価格: 69万3000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

文字盤上 +1
文字盤下 +3
3時上 +1
3時下 +2
3時左 +5
3時右 -3
最大姿勢差: 8
平均日差: +1.5
平均振り角:
水平姿勢 293°
垂直姿勢 261°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 12pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 88pt.