【82点】オメガ/シーマスター アクアテラ

FEATUREスペックテスト
2011.03.03

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キャリバー8500は、最適化されたコーアクシャル脱進機、
軸方向への遊びを調整できるバランスブリッジ、
そして、摩擦を抑えた輪列を備えている。

シーマスター アクアテラが搭載するCal.8500のコーアクシャル脱進機は、ガンギ車の脱進と動力伝達の役割を分担するために、ドライビングピニオンが追加され、3層構造に改良されている。その結果、精度とトルクの伝達効率が高められた。

魅力的な駆動

2007年初頭、新作のデ・ビル アワービジョンでデビューして以来、オメガの自社製ベースキャリバー8500は、数多くのオメガ・ウォッチでその“職務"を果たしている。それを示す良い例が、この新しい自動巻きキャリバーを搭載し、デザインもシンプルになって08年にリニューアルされたシーマスター アクアテラである。先代モデルでは模様のなかった文字盤には縦のストライプ模様が刻まれ、日付窓のフレームは大きく隆起している。ファセットが施された日付窓のデザインは、極めて立体的なアワーインデックスと良く似合う。旧アクアテラでは、文字盤の外周に発光するポイントが配されていたが、新型ではこの場所に分を示す数字が5分ごとにプリントされ、夜光塗料はアワーインデックスに塗布されている。針も、センターにシンプルな折り目を入れただけの旧作とは異なり、ふたつのファセットを持ち、インデックスとの相性が完璧である。

文字盤と同様に高級感あふれる仕上がりを見せているのが、先代モデルのフォルムを受け継いだ直径41・50mmのケースだ。有機的なカーブを持つラグと、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げを明確に使い分けたケースサイドは、特に好ましいデザインである。唯一、ケースサイドからラグへの移行部で、加工時に求められる緻密さにやや難が感じられた。角度が狭く、この部分にはポリッシュに使うバフが届かなかったのだろう。この点を除けば、加工においても、設計の上でも、ケースは十分な説得力を備えている。設計上の特徴を挙げれば、両面無反射コーティングを施した風防、ねじ込み式トランスパレントバック、ねじ込み式リュウズがあり、これらの組み合わせによって150mの防水性が確保されている。
文字盤やケースに比べるとディテールの豊かさにやや欠ける感があるとは言え、高い加工品質はブレスレットにも観察することができる。重量感がありながら、それほど厚すぎないスティールブレスレットは、ビスで留められた堅牢なコマで構成されている。上面には隅々までサテン仕上げが施され、側面にはポリッシュ仕上げが掛けられている。

一長一短があるのは、ダブルフォールディングバックルである。ふたつのセーフティーボタンに至るまで、すべての部品がスティール無垢材から削り出し加工されており、フリップロックを廃したことから、バックルは手首の上で極めてエレガントに映る。しかし、ブレスレットの長さの微調整をバネ棒で合わせるタイプではないため、マイナスドライバーを使用してコマを取り外さないとサイズの微調整ができない。装着感は基本的に良好なのだが、マイナスドライバーがないと手首のサイズの微妙な変化に対応できないので、場合によっては不便さを感じるかもしれない。その上、ダブルフォールディングバックルは、セーフティーボタンで片側しか開かないので、ユーザーはもう一方を引っ張って自分で開かなければならない。

簡単な操作

操作は非常に快適である。リュウズは構造上の理由から、かなり固くねじ込まれているものの、扱いやすい大きさで、各引き出しポジションにもクリーンに噛み合う。ねじ込みを解除すれば、あとの操作は快適だ。この時計は、手で巻き上げる時の抵抗感が少なく、巻き上げ音もほとんどしない。ただし、約60時間という長いパワーリザーブを備えた自動巻きキャリバーが搭載されていることから、手で巻き上げなければならない状況はあまり生じないだろう。新たに時刻を合わせ、巻き上げる必要があるのは、週末にまったく動かさずに長時間放置した場合ぐらいである。

リュウズを一段引いたポジションでは、時計の動きを止めずに時針を1時間刻みで進めたり、戻したりすることができる。時針を動かすと、日付も同時にジャンプして前後に切り替わる。そのため、この時計は旅行する機会の多いユーザーにとても便利で、どのタイムゾーンに移動しても正確な時刻を常に把握することができる。さらに、こうして日付を合わせれば、時刻を合わせる際に正午と午前零時を間違え、その結果、日付が24時ではなく、12時に切り替わってしまうのを防ぐこともできる。この長所を考慮すれば、日付早送り調整機能が搭載されていなくても、それほど不便さは感じないだろう。しかも、日付早送り調整機能では普通、日付を進めることしかできないことを考えれば、なおさらである。唯一、通常使用時に日付がかなりゆっくりと切り替わるのが残念な点である。テストウォッチでは、日付が切り替わるのに22時45分から23時57分までかかった。

ストップセコンド機能を使用した通常の時刻合わせは、リュウズをさらにもう一段引いたポジションで行うことができる。
操作のように快適とは言い難いのが、視認性である。時針と分針は完璧に区別することができるものの、分針は短く、先端の軌道がミニッツインデックスからやや離れている。その上、日付窓のフレームが高いため、日付に影が掛かってしまっている。とは言え、日付ディスクにプリントされた数字が太いので、影に隠れていたとしても数字は比較的認識しやすい。青い夜光塗料は夜間の発光力があまり強くなく、時計に十分光を当てておかないと、蓄光塗料を塗布した分針の先端を暗所で見付けるのは難しい。