【77点】ポルシェデザイン/ モノブロック・アクチュエーター 24H クロノタイマー

FEATUREスペックテスト
2017.12.29

伝統を引き継ぎつつ最新鋭に。911とモノブロック・アクチュエーターは、クルマと腕時計と種類は違えども、デザインコンセプトは共通している。

 朝の静けさの中、ライプチヒのサーキットに、500馬力のポルシェ 911GT3のエンジン音がうなるように響く。ステアリングを操作する腕に巻かれている時計はポルシェデザインのモノブロック・アクチュエーター 24H クロノタイマー。クロノグラフを作動後、同時にクルマを勢いよく発進させ、テストはスタートした。

 450馬力と、比較的近いスペックを持つ911GTSはPDKと呼ばれるデュアルクラッチトランスミッションのみのラインナップだが、試乗したGT3は古典的な3ペダルのマニュアル車だ。そのため、自動で変速を行ってくれるPDKと違い、走行中のシフトチェンジは欠かせない。このクルマの駆動系はリアに集まっているゆえ、動力を制御するトランスミッションとエンジンの距離が短い。また、今回のテストウォッチ同様に操作に要する力はかなり少ないタイプである。カーブの手前でタイミングよく回転数を合わせてシフトダウンする、これら一連の操作を慎重に行わなければ、クラッチをつないだ時にシフトロックを起こし、クルマはコースの外へと放り出されてしまうだろう。また、GT3はパワフルなトラクションを路面にかけるため、105/30ZR20もの太いタイヤをリアに備えている。したがって、コーナリングスピードがとてつもなく高い。コーナーぎりぎりのところをハイスピードで攻めるとなると、とてつもないGがドライバーにかかり、挙動もピーキーになるため、自ずとテクニックが必要となってくる。

 コースを2、3周もすると、緊張による汗も薄らいできた。今回のようにサーキットでのスリリングな走行に挑むと、この時計にラバーストラップを合わせているのは、良い選択だと感じる。ラバーが肌に吸い付くようにぴったりし過ぎるのは嫌なものだが、それを防ぐため、ストラップの裏側には通気を良くするために凹凸が付けられているのだ。こうした工夫により、時計本体が腕にしっかりと据わりの良い状態になる。そのフィット感の良さは、GT3の深いバケットシートの座り心地にも似ている。

 GT3はさすがに通常の911カレラ以上にサーキットに合わせたチューニングがされているだけのことはあって、走りっぷりは極めて爽快だ。カーブを抜けて、直線をフルスロットルで加速していくと、あっという間に速度は時速200㎞を超え、300㎞台へと突入する。

 クルマ同様に、今回のテストウォッチの使い心地も軽やかだ。最も特徴的なのは、ねじ込み式リュウズの扱いが容易なことだろう。ネジを緩め、リュウズを第1段階までわずかに引き出して、手前から奥に回すと日付表示が修正され、奥から手前に回すと24時間表示の時針が1時間刻みで後退していく。開閉ボタン付きのフォールディングバックルは、バタフライ式なので左右両側から折りたたむようになっている。GT3のダッシュボードにある計器は、中央にあるタコメーターも、その隣にあるスピードメーターもとても見やすいが、モノブロック・アクチュエーターも視認性が良く、時刻が素早く分かる。もっとも、クロノグラフなどの読み取りにはもう少し時間がかかるだろう。

 当然ながら、GT3はアクセルを踏むと4リッター自然吸気のフラット6エンジンが時間差なく反応して加速する。エンジン回転数は直ちに最高出力500馬力を発生させる8250回転/分まで届き、9000回転/分まで回る頃には爆音も最高潮に達する。それに比べると、当たり前ながらモノブロック・アクチュエーターの〝エンジン部〟はもう少しばかり穏やかだ。ケースを裏返すと、サファイアクリスタルの下のエンジン部に見えるのは、信頼性では定評のあるETA7754。ローターはポルシェデザインのロゴをかたどったスケルトン仕様で、その下に見えるブリッジにはペルラージュが施されている。

 2万8800振動/時は、ムーブメントとしてはハイビートにカテゴライズされる。そして、その動きはポルシェのフラット6エンジンに比類する正確さだ。歩度測定器に掛けると、平常時の平均日差はプラス4.5秒/日と堅実な数値を出した。クロノグラフを作動させた状態ではプラス3秒/日と、より良い結果になっている。