nib(日本橋)/この世ならぬ美味のクリエイター

2026.03.31

渋沢栄一旧邸宅跡地の日証館を舞台に、カカオの可能性を発信するラボ「nib」。体験型のカウンターで、緻密なプレゼンテーションから生まれる独創的なデセールをご堪能いただきたい。

海とカカオのマリアージュ

海とカカオのマリアージュ
器に潜むのは、昆布締めの焼きバナナとトロピカルフルーツ、ブラッドオレンジと昆布とスパイスのオイルなど4種。その上に、ミルク昆布アイス、あおさ、マカンボ豆腐、カカオパルプアイス、ライムジュレなど10種もの味わいが並ぶ。陶芸家の五嶋穂波氏による器が穏やかな雰囲気を醸し出す。「カカオの のみもの」と小菓子3種が付いたアラカルトでの提供。
外川ゆい:取材・文
Text by Yui Togawa
三田村優:写真
Photograph by Yu Mitamura
[クロノス日本版 2026年3月号掲載記事]


カカオを探究し物語ある一皿に

眞砂翔平

眞砂翔平(Shohei Manago)
1988年、和歌山県生まれ。「トップ・オブ・パティシエ・イン・アジア」のベストショコラティエ賞をはじめ、国内外にて多数の受賞歴を誇る。「パスカル・ル・ガック東京」の立ち上げ時よりシェフパティシエに就任し、約10年間勤務。2021年、大山恵介氏とともに「teal」をオープン。24年12月、「nib」を開業。

「コスタリカの海沿いにあるカカオ農園を歩いていると、さまざまなフルーツの木々が共に生い茂っていて、標高や場所によって景色が次々と変わりました。地面にはたくさんのカカオの葉が落ちていたのですが、それを踏んだ時の心地よい音が印象的で……」。そう語るのは、ChefとCacao Alchemistというふたつの肩書を持つ眞砂翔平氏。自身がカカオという素材を探求したいと決意したコスタリカへの旅。その情景からインスピレーションを受けて誕生したのが、写真のデセール「海とカカオのマリアージュ」だ。

 カカオを模した器に蓋をするかのように載せられた板状のカカオのメレンゲとカカオチュイルにスプーンを入れると、カカオの葉を踏みしめるような音となる。さらに、このデセールがユニークなのは、日本らしい海の産物を合わせている点。「昆布は加熱せずに抽出することで、ハーブのような存在になっています。奇抜でもちゃんと美味しいことが大切で、14種類すべての素材がそのために必要なものです」と丁寧に教えてくれた。

 カカオと聞くとチョコレートを連想する方が多いだろう。世界でもカカオの大半がチョコレートになっているのが実情だが「nib」ではその逆。コースの中でチョコレートはわずか1割、残り9割はカカオから生まれる素材に焦点を当てて多彩なスタイルで表現する。カカオの親戚であるマカンボのような珍しい素材に出合えるのもラボであるnibだからこそ。8席のシェフズテーブルでは、鮮やかに仕立てられる様子をじっくりと間近で見ることができるほか、ゲストが自分で焙煎したカカオニブを使ってデセールを仕上げるといった体験も。開業から1年、噂が広まり、海外からも食通たちが多く来店している。

「カカオはやはり特別な存在ですか?」と尋ねると「いえ、自然なものです。レシピを考える時にも、リンゴやイチゴといったフルーツのひとつとしてカカオを選びます」という。nibのカウンターに座れば、秀逸なデセールとともに、穏やかで自然体な眞砂氏の芯にある「チョコレートだけではないカカオの可能性」を探究する信条に触れていただけるだろう。

nib(ニブ)

nib

1928年に建築された日証館をリノベーションした店内。「カカオ豆の外皮を使った壁と100年近い時を経た柱が気に入っている」と語る眞砂氏。カカオの小菓子のテイクアウトコーナーもある。

東京都中央区日本橋兜町1-10 日証館1F
Tel.03-6206-2568
水曜定休
12:00~20:00
アラカルト4500円、コース 6800円、1万2000円


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