「SUMMER GARDEN」というテーマの通り、ひと目で夏を感じさせる、ディプティックのアウトドアフレグランス。日本人にもなじみ深いデザインのスパイラルインセンスに火をつければ、虫が嫌うという爽やかな香りが立つ。そんな見た目も成分もユニークなフレグランスを敏腕編集者であり、エッセイストでもある麻生綾氏がそのエスプリとともに紹介する。
Text by Aya Aso
村山千太:写真
Photograph by Senta Murayama
[クロノス日本版 2026年7月号掲載記事]
渦巻く夏のエスプリ

(中左から)飽きのこない深い美しいグリーンの陶器。サマー スパイラル インセンスホルダー、2万3760円(税込み)。メゾン初のインセンス(お香)。上質なレモングラスのフレッシュな香り。スパイラル インセンス、7920円(税込み)。どうせならマッチもえり抜きたい。マッチボックス ピネード、3300円(税込み)。(右上)この季節のディプティックの定番。夏を実感する、草花の青くみずみずしい香り。今夏限定のグラフィックでお届け。サマーボディスプレー シトロネル&ゼラニウム 100ml、9460円(スパイラル インセンスとともに限定発売中)。
まずは今回の写真に「なんだこれは?」と思われた方も少なくないのではないか。ちなみに私の初見での感想は、「フランスにも蚊取り線香があったのか!」である。
名付けるなら「アウトドアフレグランス」。この渦巻き形のインセンスのほかに、爽快なボディースプレー、ボディーウォッシュなども揃う。真夏のアウトドアイベントにぴったりの清々しさと、虫が嫌うという特性を兼ねたユニークな香りたち。今号はあえて「指南」の体裁を傍らに置き、この遊び心そのものをご紹介したい。
レモングラスをはじめ、虫が嫌がるアロマは以前からも知られている。例えば、タイやマレーシアのリゾートホテル、デスティネーションスパに到着した途端に押し寄せる、あの独特ないい意味で青臭い、何とも心落ち着く香り。それをモダンに昇華させたのが「SUMMER GARDEN」というテーマで展開する、ディプティックの今夏限定コレクションである。
夏の庭といえば、脳裏に即浮かぶのは、繰り返しほとばしり砕け散る噴水の輝きであり、プールであり、緑を映す湖面の水鏡だ。その風景はキラキラと明るく透明感にあふれていて、どこまでもピースフル。限定のボトルやボックスには、そんな夏の水辺のきらめきが、今季のコラボレーション相手であるアーティスト、マチルド・ジョンキエールによる緻密なモザイク画で見事に表現されている。
ディプティックは1961年、フランス・パリのサンジェルマン・デ・プレで誕生した、パリのエスプリそのもののフレグランスメゾン。もともとは一部の愛好家のみぞ知るニッチなメゾンだったのが、唯一無二でありながら、やさしくエレガントな香り立ちは日本人の感性とも美しく響き合い、いまや日本国内においてもメジャーブランドの一角を担う存在となった。香りはもちろん、独特なグラフィックに象徴されるデザイン性、物語性にも定評があり、まさに“薫る”インテリア。いわゆるアール ドゥ ヴィーヴル(暮らしの芸術)を、創業時から変わることのない自由な精神で体現し続けている。
このスパイラル インセンスとホルダーは、そんなディプティックのオンリーワンの個性をそのまま形にしてしまったかのよう。ユーモアと実用性、そしてどこか懐かしい佇まい。自分用にはもちろん、例えば「何でも持っているひと」への「蚊取り線香かと思ったら、なんとディプティックのインセンスだった」的な、洒落のめした贈り物としてもお勧めである。同じく虫が嫌う香りと言われる、シトロネル&ゼラニウムの爽やかなボディースプレーと、ぜひご一緒に。



