若き才能が光る11のクリエイション。第28回「カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー」賞の授賞式が開催

2026.07.05

次世代のウォッチメイキングを担う人材育成を目指して、1995年に創設された「カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー」賞。その第28回の受賞者が発表された。2026年6月24日にはカルティエによって授賞式が行われ、フランス、スイス、ベルギーの11人の見習い時計職人および技術者が表彰された。

カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー

© CARTIER ©VICTOR PICON


若き時計職人、そして技術者の育成のために。「カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー」賞

 カルティエは1993年、未来の時計職人の育成支援を目的に、スイスに「カルティエ ウォッチメイキング インスティテュート(IHC)」を創設した。IHCはカルティエ マニュファクチュールの実習生と職人に対して、時計製造、研磨、マイクロ技術、機械技術などの職人技術の研修を提供するものだ。この育成期間の設立2年後にあたる1995年、カルティエはさらに「カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー」賞を設立。この賞にエントリーした時計製造に取り組む若手人材らは、例年、与えられるテーマに基づくムーブメントの再構築案を提出し、技術および創造性を兼ね備える独創性を研鑽するのだ。以前は初等職業訓練課程における時計製造専攻の3・4年生が対象であったが、2024年よりフランス、ドイツ、スイス、ベルギーの高等職業訓練課程のES(高等専門学校)認定マイクロテクノロジー技術者という新たな部門の候補者にも対象が拡大されている。

カルティエ タイムクロック

© CARTIER
今年で第28回を迎えた「カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー」賞。与えられるテーマに沿ってエントリーした若手の時計職人、技術者らが、そのアイデアを競うことで互いに切磋琢磨する絶好の機会となっている。

 カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー賞の開催も、今年で第28回目に。審査員によって見習い時計職人および技術者11人が選ばれ、さらに上位入賞者として見習い時計職人3人、そして技術者3人の合計6人が選考された。2026年6月24日には、スイスのラ ショー ド フォンに位置する、カルティエのメゾン デ メティエダールにて、授賞式が開催された。

カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー

© CARTIER © PIERRE MOUTON
今回表彰されたのは、見習い時計職人および技術者11人。これからカルティエの、そして時計業界の未来を担っていく人材だ。

カルティエ マニュファクチュール

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2014年に設立され、稀少な時計のサヴォアフェールが連綿と受け継がれてきたカルティエのメゾン デ メティエダールにて、授賞式のセレモニーが執り行われた。なお、この場所で授賞式が開催されたのは、今回が初だという。

 本賞の授賞式の開催にあたり、カルティエ チーフ オペレーティング オフィサーのカリム・ドリシは、次のようにコメントしている。

「1847年の創業以来、カルティエは、サヴォアフェールを継承・推進しつつ、卓越性の伝統にのっとって新たな技能を開発することにも絶えず取り組んできました。1995年に創設された本賞は、そのビジョンと情熱を体現し、時計製造の未来を担う若き才能の育成を目的としています。本賞が時計職人の新たな才能を世に送り出す一助となっていることをうれしく思うとともに、彼らを支援できることを誇りに思います」

テーマは「時刻を新たな視点で読み解き、均衡を変える」

 第28回カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー賞のテーマは、「時刻を新たな視点で読み解き、均衡を変える(Shifting the balance: Reading and understanding time differently)」だ。従来の時刻の読み取り方を超えることを目指して、応募者らは置き時計用のムーブメントの制作に取り掛かった。このテーマ、そしてビジョンは、カルティエの時計製造の核心を成すものと言える。ミステリー クロックから始まり、「レヴェラシオン ドゥヌ パンテール」ウォッチ、「サントス デュモン リワインド」「タンク ア ギシェ」といった作品が、そう言える証しであり、ビジョンを象徴してきた。

カルティエ プリヴェ

© Cartier
カルティエが2025年、「カルティエ プリヴェ」としてリリースした「タンク ア ギシェ」。ジャンピングアワーウォッチとなっており、ケースに設けられたふたつの小窓で時・分を表示させる。

 賞はまず、スケッチ、文章、動画のプレゼンテーションに基づく一次審査が行われた。選ばれた12人のファイナリストは、専門家の指導の下、3カ月にわたって約80時間をかけて、各人のビジョンを具現化していった。

 そんな本賞の授賞式の司会は、本賞のプレゼンターも務めた時計製造のエキスパート、エレオノール・ピチョット(Eléonor Picciotto)。また、今回の審査員はウォッチスペシャリスト兼共同創業者であるロイ・ダビドフ(Roy Davidoff)、「カルティエ コレクション」ディレクターのパスカル・ルプウ(Pascale Lepeu)、国際時計博物館副館長のナタリー・マリエロニ(Nathalie Marielloni)、高級時計財団副会長、時計専門家兼コレクターのパスカル・ラベスー(Pascal Ravessoud)、そして独立時計師であるカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)が名を連ねた。

若き才能が光るクリエイションの数々

 前述の通り、第28回カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー賞は11人が表彰され、そのうち見習い時計職人3人、技術者3人の合計6人が上位入賞者となった。各入賞者は、カルティエでの研修の機会とカルティエ ウォッチが贈られ、各部門のグランプリに選ばれたふたりには、カルティエでのインターンシップの機会が設けられる。

「見習い時計職人」部門でグランプリに輝いたのは「Silence Choisi(Chosen Silence=選ばれし沈黙)」を制作した、ベルギーのナミュールにある専門学校 IATAのエメリック・ペーテルス(Aymeric Peters)だ。

エメリック・ペーテルスによる「Silence Choisi」

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エメリック・ペーテルスによる「Silence Choisi」。

「『Silence Choisi』は、時を計るよりむしろ止める時計です。19世紀末から20世紀初頭の時計に着想を得て、素材の優雅さとプロポーションの精緻さを表現しています。その構造は、古典的で、なじみ深いとさえ思えるオプジェを想起させる一方で、根本的に異なる方法で時刻を伝えます。時針と分針は、無言の期待に包まれて凍りついたかのように、6時位置で止まったまま、微動だにしません。時間は、呼び出されるまで顕在化しません。キーの操作によって機構が作動する仕組みで、システムがピンを解除すると、時針と分針はそれぞれの正確な位置へと戻ります。スプリットセコンド クロノグラフと同様、時は押しとどめられてから、正確かつ詩的な機械式の相互作用により、瞬時に解放されます」(エメリック・ペーテルス)

 同率第2位を獲得したのは、「Nymphéa(Nymphaea=睡蓮)」を制作した、同じくIATA 在籍のレイラ・ スライスマンス(Layla Sluysmans)である。

レイラ・ スライスマンスによる「Nymphéa」

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レイラ・ スライスマンスによる「Nymphéa」。

「『nymphaea』という単語は、開花期間が数日間しか続かない睡蓮の学名です。しかし、今回の作品『Nymphéa』は、人間が望む限り咲き続けます。『Nymphéa』は、2時間周期で開閉を繰り返す機械 仕掛けの睡蓮です。花びらは樹脂、台座はメキシコ産の黒檀(こくたん)で制作されています。エナメルダイアルは、花びらが開いて初めて姿を現します。花びらが開くと、洗練された控えめなダイアルが現れ、そのさりげないディテールの中に12時のマーカーを確認できます。これらのマーカーは実は、機構そのものの可視部分です。こうしたディテールを通じ、この作品は見る者に、あまりにも急速に変動 する世界の中で心のゆとりを持つことを促します。時は、ゆっくりと時間をかけて観察する人にだけ姿を現すのです」(レイラ・ スライスマンス)

 同じく同率第2位は、フランス・モルトーにあるエドガール・フォール高校に在校する、エドゥアール・ニコ(Edouard Nicod)による「La Dualité Des Opposés(The Duality of Opposites=対極の二元性)」と題された作品だ。

エドゥアール・ニコによる「La Dualité Des Opposés」

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エドゥアール・ニコによる「La Dualité Des Opposés」。

「『La Dualité Des Opposés』は、均衡の概念を探求する置時計であり、時計製造の規範を再解釈して、時間に関する新たな視点を提供するものです。ダイアルが骨格を成し、針は静止し、ムーブメントは 可視的かつ可動的という、それぞれの伝統的な役割が逆転しています。主役は宙吊りにされた機械式の心臓部。それは、運動と静止の間の緊張から生まれる均衡を具現化しています。エネルギーと静寂が、繊細な調和を成して互いに呼応し、この二元性は、カウンターウェイトとして配置された眠るパンテールによって表現されています。穏やかで不動のパンテールは、絶えず動き続ける機構とバランスを保っています。作品全体は、繊細でありながら不可欠な均衡に支えられ、ほんのわずかな乱れがあっても、調和が崩れるおそれがあります。このタイムピースは、優美さと静けさの源である均衡感の探求へと誘います」(エドゥアール・ニコ)

 一方の技術者部門では、フランス・レンヌに位置するジャン・ジョレス高校のアルテュール・ショケ(Arthur Choquet)が「Un Instant(A Moment=一瞬)」によってグランプリに輝いた。

アルテュール・ショケによる「Un Instant」

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アルテュール・ショケによる「Un Instant」。

「『Un Instant』は、停止した瞬間に時間を計ることを提案します。光の都パリに見られるオスマン様式建築に着想を得てデザインされたこのタイムピースは、カルティエのクラフツマンシップの発祥の地としてのパリの役割を想起させます。その要素は、建物のファサードや伝統的なパリの街灯といった形で背景にあしらわれています。こうした新しい時のとらえ方は、動きの不均衡と時の経過の間の対話を生み出し、そこから生まれる緊張は、歴史の想起と相まって、未来への移行を表現しています」(アルテュール・ショケ)

 第2位は、「Médusée(Transfixed=メドゥーサに魅入られて)」を制作した、パリのディドロ高校に在籍するアダム・ドロッシュ(Adam Deroche)である。

アダム・ドロッシュによる「Médusée」

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アダム・ドロッシュによる「Médusée」。

「もし時間が止まってしまったら? この一瞬が一息のうちに停止して、そのまま永遠に続いたら? 『Médusée』は、過去と未来の間で往々見過ごされがちな現在に改めて注目するよう促すことを意図した置時計です。将校用の懐中時計と溶けゆく氷を組み合わせた型破りなフォルムは、すべてがフリーズして見えるものの、動きを暗示しています。10時10分の位置で静止した時針と分針は時計が動いていないような印象を与えますが、実のところ、動くのは数字のほうであり、止まった針に揃った数字で時刻を読み 取る仕組みになっています。セラミックス、エナメル、樹脂、時計装飾などの技法を組み合わせたこの作品は、伝統的なクラフツマンシップと革新性を融合させています。見つめた相手を石に変えてしまうという神話上の存在であるメドゥーサと、ほぼ不老不死のクラゲ(フランス語で méduse(メデューズ))に着想を得た題名は、静止状態と永久運動の間のパラドックスを象徴しています」(アダム・ドロッシュ)

 第3位は、「Echo」(エコー)を制作した、レンヌにあるジャン・ジョレス高校のアドリアン・ステフェネリ(Adrien Stefenelli)へと贈られた。

アドリアン・ステフェネリによる「Echo」

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アドリアン・ステフェネリによる「Echo」。

「『Echo』は、均衡、時間、音と呼応する力強い作品です。このタイムピースは、新たな時のとらえ方を提案します。単なるタイマーとは一線を画し、針もダイアルもなく、代わりに、定間隔で鳴るチャイムを備えています。チャイムは、台座に落ちる水滴のかすかな音を想わせます。その音を聞くだけで、ユーザーは先のことなど気にせずにその瞬間を楽しむことができます。もはや将来の予測に囚われることはありません。レイアウトは、不均衡感と浮遊感を生み出します。上部のブロックは、素材の堅牢さにもかかわらず、ほとんど液体のように映り、ひとしずくの水滴が本来はきわめて堅固 な構造を変化させかねないという緊張感を醸し出します」(アドリアン・ステフェネリ)

 なお、第29回カルティエ ウォッチメイカーズ オブ トゥモロー賞への応募受付は、今秋に開始される予定だ。日本はまだ対象となっていないものの、未来の時計づくりを担っていくであろう人材の育成には注視していきたい。



Contact info:カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
HP:https://www.cartier.com/ja-jp
特設サイト:http://prixcartiertalentshorlogersdedemain.com/


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