1970年代という、時計デザインの転換期を象徴する意匠をよみがえらせたエドックス。同社が送り出した新作「デルフィン オリジナル 1973 オートマティック」は、そんな時代特有の大胆さと熱気、実験精神を現代に呼び起こす1本である。

既存のラインナップから大きく印象を異にする、「デルフィン」の最新作。1973年モデルの12角形ベゼルを受け継ぎつつ、パターンダイアルや9連ブレスレットによってモダンに仕上げている。自動巻き(Cal.EDOX80)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.7mm)。20気圧防水。24万7500円(税込み)。
Photographs by Masanori Yoshie
野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
Edited by Yuto Hosoda(Chronos Japan)
クッションケースと多連ブレスレットが強調する1970sスタイル
1970年代は、腕時計にとってひとつの転換期であったと言えるだろう。時刻を確認する道具としての成熟を迎えた腕時計は、やがて新たなデザインを模索することによって、その可能性を広げようとした。この時代、ブレスレット一体型ケースを備えた、いわゆるラグジュアリースポーツウォッチやダイナミックなケース造形、スペーシーなデザインの数々が花開き、機械式からクォーツ式へと移り行く激動の時代を駆け抜けていった。

「デルフィン オリジナル 1973 オートマティック」は、そんな当時の空気感を今に伝えるエドックスの最新作だ。現行の「デルフィン」コレクションは、モダンなデザインコードで構成された、アヴァンギャルドなスポーツウォッチという印象が強い。しかし今作には、それらと一線を画すディテールが与えられている。主な着想源となったのは、1973年製のアーカイブピースだ。オリジナルが持つ12角形ベゼルに加え、1970年代のデルフィンに見られるラグレスタイプのクッションケースを継承し、懐かしくも新鮮な雰囲気をよみがえらせている。

興味深いのは、本作が単なる復刻に留まらず、現行機らしくアップデートされている点だ。直線基調のケースラインは、現代の工作精度を物語るシャープなエッジによって構成され、細かなリンクが連なる9連ブレスレットはスポーティーさの中にほのかな上品さを添えてくれる。

リニアパターンが施されたダイアルは光が差し込むことによって陰影を生み、揺らめく水面のような奥行きを創出する。日付表示はなく、バーインデックスとソード型の時分針を組み合わせた、センターセコンド式の端正なレイアウトが特徴だ。シンプルながら、立体的なインデックスやミニッツマーカーを配したフランジ、暗所での視認性を高めるスーパールミノバなど、審美性と実用性を高めるディテールが与えられた。
搭載するムーブメントは、機械式自動巻きのCal.EDOX80だ。ベースはセリタのCal.SW200。多くのブランドが信頼を寄せる業界標準機である。シースルーバックからは、ローターやテンプの動きを楽しむことが可能だ。
ベゼルとブレスレットの一部にイエローゴールドPVDを施し、シルバーダイアルと組み合わせたバリエーション。まるでドレスウォッチのような、華やかな佇まいを見せる。自動巻き(Cal.EDOX80)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS+イエローゴールドPVDケース(直径41mm、厚さ11.7mm)。20気圧防水。26万9500円(税込み)。
こちらは人気のブルーダイヤル。夏にぴったりのダイバーズウォッチらしいカラーリングだ。全面に施されたリニアパターンによって生み出される陰影が、鮮やかな発色を引き立てている。自動巻き(Cal.EDOX80)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.7mm)。20気圧防水。24万7500円(税込み)。
豊富なバリエーションも魅力のひとつ。文字盤はブラック、シルバー、ブルー、グリーンの4色展開だ。シルバーダイアルには、外装の一部にイエローゴールドPVDを施したバイカラーモデルも用意されている。
時計デザインが、最も自由で野心的であった1970年代。可能性に満ちた当時の空気感を、手元で味わってみてはいかがだろうか。



