12人の武将の兜が、ダイアル中央の江戸城を囲む。ロジェ・デュブイの「エクスカリバー ザ・カブト・レガシー」は、日本の歴史と文化を、精緻な彫金によって腕時計の中に表現した意欲作だ。なぜスイスの時計ブランドが日本に目を向け、戦国から江戸へと移り変わる時代を題材に選んだのか。『クロノス日本版』およびwebChronos編集長の広田雅将による解説と、ブランド関係者らの言葉から、その背景とものづくりに迫る動画をお届けする。
アーサー王の伝説から、日本の武将たちの物語へ
時計全体でひとつの物語を紡ぐ、ロジェ・デュブイの「レジェンダリー ユニバース」。2013年に始まったこのシリーズを象徴するのが、ダイアル上に12人の騎士を配した、アーサー王と円卓の騎士に着想を得た作品群だ。ひとつひとつを手作業で仕上げた騎士の姿には、同ブランドが誇るメティエ・ダールの技術が凝縮されている。
その物語の舞台を日本へと移したのが、「エクスカリバー ザ・カブト・レガシー」だ。騎士に代わって文字盤に並ぶのは、徳川家康や徳川四天王をはじめとする12人の武将の兜。しかし本作が描くのは、勇猛な武将たちの戦いだけではない。戦乱の時代から泰平の世へ、そして文化が花開く江戸時代へという、歴史の転換こそがテーマとなっている。

自動巻き(Cal.RD821)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KPGケース(直径45mm、厚さ16.87mm)。3気圧防水。世界限定28本。要価格問い合わせ。
動画では、八芳園で行われたお披露目に足を運んだ広田が、本作の見どころを説明。またロジェ・デュブイ タイムピース・マーケティングマネージャーのアントワーヌ・アストイ、および国際日本文化研究センター教授にして同作の歴史考査&監修を行ったフレデリック・クレインスという、重要人物ふたりの解説によって、日本とブランドのつながりや、モチーフとなった武将たちのエピソードを交えながら、独創的な外観に込められた物語をひもといていく。
小さな兜に注ぎ込まれた、手仕事の技術
まず注目したいのは、それぞれに異なる形状を持つ兜の造形だ。広田が着目するのは、その立体感。限られた空間の中で、複雑な飾りまで再現するためには、どのような工程が必要なのだろうか。

動画では、兜本体や飾りを別々に鋳造し、接合した後に彫金を施すという製作工程がアストイによって語られる。彫金だけでも、兜ひとつにつき平均2日間。さらに陰影を与える仕上げによって、小さな造形の奥行きを際立たせていく。細長く繊細な飾りを持つ加藤嘉明の兜など、扱うだけでも細心の注意を要するパーツを、職人はどのように仕上げるのか。その説明からは、完成した時計を眺めるだけでは分からない、手仕事の積み重ねが見えてくる。

「勝色」と江戸城に込めた、日本文化への敬意
もうひとつの見どころが、時計を彩る深いブルーである。武士が勝利を願って身に着けた「勝色」と、平和の訪れとともに人々の暮らしに広がった藍色。その色にまつわる物語もまた、戦乱から泰平へという本作のテーマと結び付いている、とクレインスは語る。

広田は、甲冑の糸を思わせるストラップのクロス状のステッチや、ダイアル中央に配された江戸城にも注目する。兜という分かりやすいモチーフにとどまらず、細部にまで日本文化への理解を反映しようとする姿勢は、本作を読み解くうえで欠かせないポイントだ。
アバンギャルドな造形と、伝統に根ざした丁寧なものづくり。その両立にロジェ・デュブイの魅力を見いだす広田は、本作を「歴史に残りうる時計」と評する。そこまで言わしめた理由を、ぜひ動画で確かめてほしい。



