誕生75周年を迎えたオリエントスターがたどり着いた造形美

2026.10.08
PR:Orient Star

2026年、75周年を迎えたオリエントスター。スケルトンとパワーリザーブ表示を打ち出してきたブランドにふさわしく、今年はまったく新規設計のスケルトンをリリース。110万円という価格を打ち出したのは、それ以上の作り込みを加えたため。もっとも見るべきは、ディテール以上に、パッケージングの巧さだ。

オリエントスタースケルトン

オリエントスタースケルトン
オリエントスター75周年記念モデル。最高の腕時計を作るため、外装を含めて部品のほとんどが新造された。中枠を廃し、ムーブメントの直径を拡大することで余白を拡大。面取りやネジなども、高級機の水準に仕立て直された。10年保証付き。手巻き(Cal.F9B82)。20石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ9.5mm)。3気圧防水。世界限定130本(国内75本)。110万円(税込み)。
奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yousuke Ohashi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2026年11月号掲載記事]


「間」が創り出す意匠の未来形

 12時位置に配されたパワーリザーブ表示と、スケルトンがアイコンとなったオリエントスター。誕生75周年を迎えた2026年は、その個性を全面的に打ち出した新作をリリースした。その名も「オリエントスタースケルトン」である。

 オリエントスターがこのモデルで目指したのは同ブランド史上最高の腕時計を作ることだった。そのため、腕時計の構成は全面的に見直されることとなった。その一例が設計だ。長年、オリエントスターはベーシックな46系のムーブメントを肉抜きしてスケルトン化していた。対して、新作が搭載するF9系は直径を極限まで拡大したムーブメントである。あえて大きくした理由は、日本的な「間」を強調するためだ。加えて、ムーブメントを留める中枠を廃し、ケースに直付けする最新の設計で、一層の余白を得た。ムーブメントとケースを一体化させるというアイデアは、日本製らしからぬ設計をもたらした。

Cal.F9B82

裏側から見たCal.F9B82。「間」を設けるためにムーブメントの直径を36mmに拡大。そのため原料となる丸棒自体も今までとは異なる。高級機にふさわしい、頭を平滑に磨いたネジや、傷のないテンプなどにも注目。また、審美性のために巻き真がカバーで覆われたほか、ハックレバーもムーブメントの中に隠された。ムーブメントの造形で強調されたサークルは、星と天体の動きをイメージしたものである。

 仕上げも野心的だ。切削で仕上げられた地板と受けは、微細なブラスト処理で仕上げられた。普通、梨地仕上げを施すとエッジはだれるが、本作には皆無だ。聞けば「文字盤の水準で仕上げた」とのこと。また、地板や受けの面取りにはダイヤモンドカッターで鏡面仕上げを与え、ムーブメントの奥行きを強調した。あえて面取りを太くしなかったのは、造形上の配慮だという。

オリエントスタースケルトン

高級機にふさわしく、調速機周りにも手が入れられた。片重りを調整するためのテンワのえぐりは目立たなくなったほか、緩急針はアオリが調整できるエタクロン型になった。当然、オリエントスターのお家芸であるシリコン製のガンギ車は本作でも強調されている。なお、公称日差は+10秒から-4秒以内。

 さらに開発チームは、本作の造形にひねりを加えた。オリエントスターに共通する意匠、「サークル」を際立たせるのは、黒い線。一見シンプルだが、色の充填にはやり直しが利かないため、担当する職人は、一発でへこんだ線に色を充填していく。またムーブメントを固定するネジも、頭を平滑に磨き上げた高級品に置き換えられた。オリエントスターは、わざわざ限定130本のモデルのためだけにネジを製作したのだ。

 ケースも凝っている。中枠を持たない設計であるにもかかわらず、ケースはギリギリまで細く薄くされた。一方で、立体感を与えるためにラグ表面の中央には彫り込みが設けられている。この彫り込みの内部が鏡面仕上げなのは、微細加工機で内側を研磨したため。機械の無駄遣いに思えるが、狙った仕上げを得るためにかつてない試みが盛り込まれた。

オリエントスタースケルトン

オリエントスターとしては初めて、中枠ではなく、ケースでムーブメントを挟み込む「オリエントスタースケルトン」。当初はケースと地板を一体化させるというアイデアだったが、修理できないため断念。ケースにムーブメントを直付けという方向に落ち着いた。なお、新しいキャリバーF9系は、4番車が6時位置にあるスモールセコンド専用機。秒カナの押さえバネがないためテンプの振り角が上がり、パワーリザーブも延長された。もちろん耐衝撃テストはクリア済みだ。

 もっとも本作で見るべきは、パッケージの良さだろう。余計な要素を隠すべく、巻き真は地板と受けでカバーされたほか、視認性を得る針は青焼きに、そして文字盤の表面には、5分おきのインデックスがカボション状に彫り込まれた。加えて茶利八方(ちゃりはっぽう)と呼ばれる技法で仕上げられたやぎ革のストラップは、優れた装着感をもたらした。

 その価格は110万円。既存のオリエントスターの他のモデルと比べると際立って高価だが、時計を見る目を持つ人にとって、かなり魅力的な腕時計であるのは間違いない。同ブランドが総力を挙げて作り上げたオリエントスタースケルトン。これは掛け値なしに、75周年目を迎えたオリエントスターの最高峰である。

オリエントスタースケルトン

渾身のディテールも本作の魅力だ。一見地味だが、凝った造形を持つラグ。へこみの内側には、なんと微細加工機(!)で鏡面仕上げが施された。良質なストラップも、タンニンなめしの革を茶利八方(ちゃりはっぽう)と呼ばれる手もみで仕上げたものだ。頭を研磨した「ラップネジ」も高級機ならではのディテールだ。


柔と剛の調和、新たなる定番への「先駆け」

 必ずと言ってよいほど、12時位置にパワーリザーブ表示を配してきたオリエントスター。しかし、誕生75周年の年にリリースされた「スリーハンド」は、そのお家芸を封印した新作だ。パワーリザーブなし、日付表示なしという構成を可能にしたのは、文字盤や針の作り込み。その出来映栄えは、好事家たちをも刺激するものだ。

コンテンポラリーコレクション スリーハンド

コンテンポラリーコレクション スリーハンド
簡潔なモデル名が示す通り、シンプルな構成を全面に打ち出したベーシックモデル。新しいデザインコードにより、ブレスレットとケースは巧妙に一体化された。文字盤や針の仕上がりはこの価格帯の水準を大きく超える。自動巻き(Cal.F7542)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径38.7mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。13万2000円(税込み)。

 ハイエンドを拡充する一方で、定番製品である「ブレッド&バター」の刷新に取り組むオリエントスター。その75周年にリリースされたのが、新しいデザインとコンセプトを打ち出した「スリーハンド」である。その特徴は、潔いほどシンプルな構成。オリエントスターのアイコンである12時位置のパワーリザーブ表示はもちろん、日付表示さえないのである。その一方で、デザインやディテールには一層の工夫が凝らされた。

 本作のデザインは、しなった弓にインスピレーションを得たもの。「ケースからラグ、バンドへと流れる一筆書きのようなライン」と説明があるように、別部品に見えるブレスレットは、実はケースと一体になっている。あえて一体型にしたのは、デザインのため。しかし弓管とケースのクリアランスがなくなることで、見た目の高級感も大きく増した。併せてブレスレットにH型コマを使うことで、時計を腕に着けた際、リンクの隙間が見えにくくなった。10万円台前半という価格もあってか、バックルにはエクステンション機能はないが、代わりに半コマを設けて装着感を改善している。また、ラグを詰めてケースの全長を47mmに収めることで、腕時計の取り回しも良好だ。

コンテンポラリーコレクション スリーハンド

「スリーハンド」の見どころは、価格帯以上の出来栄えを見せる文字盤と針だ。オリエントスターのお家芸である、分厚いラッカーの表面を研ぎ上げた、いわゆるラップ研磨文字盤と、複数の面にダイヤモンドカットを加えたインデックスが際立っている。また針も、この価格帯では望めない立体的なものだ。全体のリファインに併せて、ロゴや表記もわずかに細身にされた。

 今回、お家芸のパワーリザーブ表示を省いた理由は、見た目のためだけではない。本作のケース厚は、自動巻きを載せたオリエントスターでは最薄級の11.8mm。同価格帯にはもっと薄い腕時計もあるが、決して薄くはない46系自動巻きをこのサイズにまとめたのだから十分以上だろう。

 パワーリザーブなし、日付表示なし、という思い切った構成を支えるのは、文字盤や針の作り込みだ。本作は文字盤に、オリエントスターのお家芸である厚いラッカー塗装を採用。色は定番のシルバーに、色味を安定させにくいゴールドと、ライトブルー、そしてカッパー(限定モデル)が選ばれた。これはトレンドを意識した選択だが、大量生産の、しかもエントリーモデルに採用できたのは、ラッカー文字盤の製造にノウハウを持つエプソンだからだろう。

コンテンポラリーコレクション スリーハンド

ストラップへの付け替えを考慮せず、一筆書きのようにケースからブレスレットへとつながる造形。ラグのラインがそのままブレスレットにつながるデザインは、近年ではかなり珍しい。ブレスレットは、中コマで支える通称H型。上級機ほど凝ってはいないが、適度な遊びを持つうえ、ケースとの重量バランスは良好だ。また、ひとコマ目の曲がりが大きいため、細腕でも腕馴染みに優れる。

 驚かされたのは、文字盤の仕上がりだ。厚く吹いたラッカーの表面に歪みはなく、見返しリングとの色のそろい方もこの価格帯の水準をはるかに超えている。立体的な針やインデックスも同様だ。一部にはサテン仕上げの「虹引き」が加えられたほか、立体的な秒針(!)の中心には高級機よろしくキャップが加えられた。この文字盤と針を見て、価格が10 万円台前半の腕時計とは、誰が想像するだろうか?

 もっとも、この新作を見た目だけのドレスウォッチにまとめなかったのはエプソンらしい。本作が搭載するのは、46系の精度をさらに改善したCal.F7542。日差は+15秒から−5秒、そして約50時間というパワーリザーブは、基本設計を1971年にさかのぼるロービート機がベースとは思えない。さらにラチェット式の巻き上げ機構を持つ46系がベースのため、巻き上げ効率も十分以上だ。

Cal.F7542

搭載するのは46系の改良版であるF7系の最新機。パワーリザーブ表示と日付表示が省かれたほか、緩急針が微調整可能なものに、また香箱などを留めるネジの頭がフラットなものに改められた。一見地味だが、高級化を目指すオリエントスターらしいモディファイだ。精度は日差+15秒から-5秒とこの価格帯としては良好である。

 防水性能も、既存の自動巻きに同じ10気圧。そして風防には両面に無反射のARコーティングを施したデュアルカーブサファイアクリスタルが採用された。その内容はやはりこの価格帯の標準を超えるものだ。

「オリエントスターが描く、次代のスタンダード」としてリリースされたスリーハンド。その価格帯が示す通り、これはあくまでもエントリーモデルだ。しかしその研ぎ澄まされた構成は、時計愛好家の日常使いにも間違いなく向いている。目の肥えた読者のみなさんであれば、その完成度にはきっと驚かされるに違いない。

コンテンポラリーコレクション スリーハンド

レギュラーモデルとしてラインナップされるシルバー文字盤仕様。白みを帯びた柔らかな色調のシルバーラッカー文字盤と、鏡面に仕上げられたインデックスや針とのコントラストが際立つ。13万2000円(税込み)。

コンテンポラリーコレクション スリーハンド

文字盤にゴールドカラーをあしらったレギュラーモデル。色を得意とするエプソンだけあって、ラッカーで表現された金色はサンドカラーのような独特の色合いに仕上がっている。13万2000円(税込み)。

コンテンポラリーコレクション スリーハンド

こちらはライトブルー文字盤のモデル。文字盤と、外周の見返しリングの色がそろっているのに注目してほしい。高価格帯でもそろうのは難しいが、本作はきちんとトーンを統一してみせた。13万2000円(税込み)。

コンテンポラリーコレクション スリーハンド

「スリーハンド」の限定版モデルには、カッパー文字盤が与えられた。併せて針とインデックスは黒に変更されている。繊細な仕上げを損ねないよう、加色はメッキによる。14万3000円(税込み)。世界限定900本(国内300本)。


Contact info:オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380
「オリエントスター スケルトン」ブランド公式ページ
「コンテンポラリーコレクション スリーハンド」ブランド公式ページ


オリエントスター「Sakigake(先駆け)」第一弾は実直で良質な仕上がり! 新作「スリーハンド」を深掘り

FEATURES

オリエントスター創設75周年を祝う大作。「オリエントスタースケルトン」を深掘り

FEATURES

オリエントスターが最先端技術で描くは“雲間の月”。新作「M45 F8 メカニカルムーンフェイズ ハンドワインディング」

FEATURES